著者
石田 正幸 川崎 匡 渡辺 行雄
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科學會會報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.107, no.3, pp."107-179"-"107-187", 2004-03-20
被引用文献数
1

過去におけるネコの視運動性眼振(OKN)の報告では,水平性と垂直性OKNを定量的に同条件で記録したものは,ほとんどなかった.本研究では,ネコの水平性および垂直性OKNを直立頭位で同条件のもと記録し,定量的パラメーターを用いて解析した.<br>覚醒ネコ5匹を対象とした.直立頭位のネコにランダムドットパターンのステップ状視運動刺激を行い,サーチコイル法を用いて眼球運動を記録した.<br>ネコの水平性と垂直性OKN反応における,直接経路のパラメーターとして,急速緩徐相速度上昇,急速緩徐相速度下降を,間接経路のパラメーターとして,定常状態緩徐相速度,OKAN面積を呈示した.<br>水平性OKNの定常状態緩徐相速度(SPV)は,40~60°/sまで刺激速度の増加に伴って増大し,それ以上では,飽和した.右向きと左向きのOKNは,ほぼ対称だった.垂直性OKNについては,下向きOKNの定常状態緩徐相速度(SPV)は,20°/sまで刺激速度の増加に伴って増大し,それ以上では,飽和した.これは,水平性OKNのSPVよりも低速であった.一方,上向きOKNのSPVは,弱く不規則であった.<br>視運動性後眼振(OKAN)も,右向きと左向きで,ほぼ対称だった.下向きOKANも,認められたが,水平性OKANよりも弱かった.OKANのSPVにおける急速緩徐相速度下降は,水平性と下向きOKNにおいて観察された.一方,上向きOKANは,ほとんど観察されなかった.<br>本研究結果より,ネコの水平性OKNと垂直性OKN反応の差は,直接経路よりも間接経路の差によるところが大きいと思われた.また,ネコとサルのOKN反応を比較すると,直接経路,間接経路ともに,ネコの方が小さく,特に,中心窩視力に関わる直接経路の差が大きいと思われた.

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