著者
鹿内 京子 石川 幹子
出版者
日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.715-718, 2009
被引用文献数
3 1

近代化の過程のなかで、かつて存在した都市近郊の用水路は、都市化の進展に伴いその役割を失い、消失の一途を辿ってきた。しかしながら、21世紀を迎えた今日、用水路は親水空間を求める動きのなかで再び着目されるようになった。これらの用水路によって形成される親水空間は、その形状のネットワーク性や連続性から、防災・景観・環境面で重要な役割を担う可能性がある。東京の東端、葛飾では、江戸期に農業用水路が灌漑を目的として開鑿され、近郊農業により都市を支えてきたが、今日では周囲の土地利用も大きく変化し、灌漑用水としての意味を失い、多くの用水路は埋設されている。現在、北部地域に水元公園が、南部地域には親水緑地が所々に見られるが、用水路はこれらの場所をつなぎ、北部地域から南部地域へと水を供給していた。本稿では、現在、一部を大規模な都市計画公園とともに残しつつも、その大半は暗渠・埋没している上下之割用水区域を対象とし、残存箇所や歴史的変遷を分析することで、江戸期より270年の歴史をもつ用水路を、社会資本として維持・活用するための、新たな手立てに関する知見を得ることを目的とする。

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