著者
伊藤 隆
出版者
一般社団法人日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.33, no.6, pp.741-750, 1979

生下時の染色体異常頻度は, 0.5&sim;1.0%とされている。この値は, 妊娠経過中における淘汰の結果を示すものでなければならない。したがって, 妊娠初期の異常頻度は, かなり大きいものと推測される。そこで人工妊娠中絶手術によってえた標本を用いて, 細胞遺伝学的分析を行った。<br>材料は, 妊娠5週から12週の間, 社会経済的理由で中絶を受けたものとし, 医学的適応によるものは除外した。胎芽と絨毛の染色体分析には, 直接法を用いた。さらに, 性判定のため, Qバンド法により Y-body の有無を調べた。<br>観察総数1,661例中, 分析に成功したものは1,250例 (75.3%) であった。平均母年令および平均胎令は, それぞれ28.0歳 (min. 17-max. 46), 8.4&plusmn;1.39週 (mean&plusmn;S.D.) であった。1,250例中, 認められた異常は80例 (6.4%) であった。すなわち異数性異常としては, トリソミーA5例, トリソミーC (含XXX, XXY異常) 15例, モザイクトリソミーC1例, C群のトリソミーとモノソミーの合併した異常2例, トリソミーD9例, モザイクトリソミーD1例, トリソミーE10例, トリソミーG8例, ダブルトリソミー2例, XYY異常1例, モノソミーC (含XO異常) 8, モザイクモノソミーC1例, 中部着糸型でF群より小型の余計な染色体をもつ異常1例などであった。倍数性異常は, 3倍体8例, 3倍体のモザイク異常1例, 4倍体1例, および4倍体のモザイク異常4例であった。また染色体構造異常は, D群のリング形成1例, およびD群G群間の転座型異常1例であった。<br>異常頻度は母年令の高くなるにつれ増加する傾向をみた。これを異常の種類別にみると, トリソミーでは母年令依存性が顕著であったが, モノソミーと倍数性異常ではその傾向がなかった。また, 胎令が進むにつれ異常頻度の減少する傾向をみた。

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