著者
堀家 静子 大熊 広一 赤星 亮一
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.1203-1210, 1984
被引用文献数
1 1

水,酢酸,酢酸水溶液および酸度16%熟成ホワイトビネガーの融解温度,融解熱をDSCを用いて測定し,凝固,融解に伴うサーモグラムを調べ,その熟成による変化をにつしいて研究を行った.<br> (1)貯蔵熟成した食酢を凍結して生じる氷および共融混合物の融解温度は,同酸度の酢酸水溶液とほぼ同一で貯蔵期間による差異は認められなかった.<br> (2) 6年間および12年間貯蔵熟成した食酢から生じた氷の融解熱は,同酸度の酢酸水溶液と比較すると,それぞれ0.3, 0.4cal/g低い.しかしながら,貯蔵期間による差異は僅少である.一方,共融混合物の融解熱は酢酸水溶液に比べ,それぞれ4.4, 5.8cal/g低い値を示し,熟成に伴う変化が顕著である.<br> (3)食酢中の主要微量成分であるエタノール,酢酸エチル,糖の酢酸水溶液の融解熱に与える影響について検討を行った. a.氷の融解熱に対してはエタノール,酢酸エチルおよび糖のいずれも,含有される濃度範囲においては,ほとんど影響が認められない. b.共融混合物の融解熱に対しても酢酸エチル,糖のいずれも影響を無視することができる. c.エタノールは共融混合物の融解熱に対して大きな影響を及ぼし,融解熱が減少するのでエタノール含有量と融解熱量の関係を実験によって求めた.<br> (4)食酢の熟成に伴う共融混合物の融解熱の減少は,エタノールによる影響よりもはるかに大きく,貯蔵年数に比例している.<br> (5)酢酸水溶液および熟成食酢の凝固融解に伴うサーモグラムから相変化に伴う水分子と酢酸分子間の水素結合の挙動について研究を行い,熱エネギーの収支を明らかにした.<br> (6)共融点の組成を持つ酢酸水溶液(酸度59%)から生じる共融混合物の融解熱は,他の組成の酢酸水溶液から生じる共融混合物の融解熱に比べて最小である.<br> (7)熟成した食酢から生ずる共触混合物の融解熱は,引卸し直後の食酢に比べてはるかに小さい.これは熟成食酢が低いエネルギー状態にある安定なクラスターを形成しているためと考えられる.

言及状況

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こんな論文どうですか? 酢酸水溶液および熟成食酢の融解潜熱について,1984 http://ci.nii.ac.jp/naid/40002999287

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