著者
大桃 洋一郎 津郷 友吉
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.37, no.12, pp.725-728, 1963

Sr<sup>90</sup>およびCs<sup>137</sup>の牛乳中における分布を明らかにし,牛乳を乳製品に加工した場合に,どの部分に移行するかを知る目的で,トレーサーとして牛乳にSr<sup>89</sup>およびCs<sup>134</sup>を添加し,バターおよびチーズを製造して実験を行なった.その結果,バターに移行するSr<sup>89</sup>およびCs<sup>134</sup>は非常に少なく,またバター中に移行したSr<sup>89</sup>およびCs<sup>134</sup>はすべてバター中の水の相に存在し,脂肪球の皮膜には吸着されていないことが明らかにされた.<br> ゴーダ型チーズにおいては,全乳中のSr<sup>89</sup>の約45%が生チーズに移行し,カテージチーズにおいては脱脂乳のわずか1.9%が移行するに過ぎないことが確められた.このSr<sup>89</sup>の移行は,カード形成におけるCaの行動とよく一致することが認められ,牛乳に添加したSr<sup>89</sup>の32~39%はカゼインに結合した状態で存在することが明らかにされた.<br> 一方, Cs<sup>134</sup>は,ゴーダ型チーズにおいてもカテージチーズにおいても,全乳または脱脂乳から生チーズへ移行する量が非常に少ないことが認められた.またその移行する割合が同程度であることおよび生チーズをすりつぶして水洗することによって,生チーズ中のCs<sup>134</sup>のほとんどを除去しうることから,牛乳中のCs<sup>134</sup>のすべては,ホエー中に存在するものと考えられる.

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