- 著者
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待鳥 聡史
- 出版者
- Japanese Association of Electoral Studies
- 雑誌
- 選挙研究 (ISSN:09123512)
- 巻号頁・発行日
- vol.16, pp.67-77,182, 2001
本稿では,1971年の参議院における重宗雄三議長の四選出馬断念と河野謙三議長選出をめぐる政治過程が,参議院自民党内の閣僚ポスト配分ルールに対して与えた影響について論じる。重宗の議事運営の手法や人事の私物化には,参議院内部に広範な批判が存在した。河野への議長交替過程は,理想主義的な一部の自民党議員による専横的な議長への挑戦が,同じく参議院改革を目指した野党との提携によって成功したとされてきた。これに対して筆者は,議長交替に至る過程において,参議院三木派が重宗四選反対に回った点に注目する。三木派の行動は,重宗の人格や参議院の理念の問題というより,選挙での脆弱性を抱えた小派閥による閣僚ポスト配分ルール形成の試みとして理解されうる。初入閣時当選回数や派閥別閣僚ポスト配分の分析からは,重宗議長の退任後,参議院自民党における制度化は大きく進展したことが分かる。