著者
リード スティーブン•R•
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.5-11,254, 2003-02-28 (Released:2009-01-22)
参考文献数
8
被引用文献数
3

本稿は,日本の並立制のような小選挙区制と比例代表制を組み合わせた選挙制度においては,小選挙区に候補者を立てると比例代表制の票も上積みが期待できるという仮説を検証しようとするものである。そして,1996年と2000年の総選挙データを用い,この仮説には十分根拠があることを明らかにする。更に,そこから二つの新たな仮説を導き出す。第一は,ある小選挙区への新規参入による利得は,そこからの撤退による損失と同じ大きさということはなく,二つの値は非対称的だということである。特に,新党にとっては利得の方が大きく,既成政党の場合には逆となる。第二は,新党の場合,候補者を2度続けて擁立すると,2回目にもその選挙区での比例代表票の上積みを期待できるというものである。本稿では,こうしたことが起きる理由についても考察する。
著者
リード スティーブン•R
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.17-29,186, 2000-02-28 (Released:2009-01-22)
参考文献数
23
被引用文献数
2

均衡状態というのは入りやすく,出にくい状態であるから,動態的な分析が最も適切と思われる。本論では,物理学のカオス理論で使われているリターン•マップを利用して,二つの均衡状態を分析する。一つは,筆者が提示した「M+1」法則で、有力候補者数が定数より一人だけ多い状態である。M+1の均衡状態がはっきりと出ているし,3人区により強く出て,定数が多くなるにつれて,均衡状態が弱くなる傾向を発見したのである。もう一つの均衡状態は,議席で計算した有力政党数と得票率で計算した有力政党数が一致する状態である。それは,論理的に整合的であるにもかかわらず,実証的な分析からは余りはっきりとは現れない。
著者
亀ケ谷 雅彦
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.119-135,162, 1993-05-30 (Released:2009-01-22)
参考文献数
58

This paper surveys regulations over opinion polls on election results in 56 countries, on the basis of the 1985 European Council report. They are recategorized by the levels of current restrictions.First, the paper compares how electoral poll regulations are enforced in France, Belgium, Spain and other countries. From this, electoral poll regulations are characterized by the following points; (A) obligatory annexation of several standards about the poll (e. g. number of sample, survey method, margin of error etc.) with the published poll results, (B) establishment of a “Opinion Poll Committee” in order to manage and control electoral polls, (C) prohibition of publication of election poll results before voting day. Of those three points, most electoral laws place greater emphasis on point (A).Next, some countries' congressional proceedings and newspapers are summarized to show legislative discussions. In parliamentary debates, there were four features; (A) debates beginning with some political accidents (e. g. misprediction of newspapers, landslide victory of one party in the last election etc.), (B) proposition from Congressional members, and their speculation on effects of polls on election results without proof, (C) uneven periods of prohibition. And descriptions of reasons for or against publication ban were also added.
著者
川人 貞史
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.5-16,186, 2000-02-28 (Released:2009-01-22)
参考文献数
55
被引用文献数
1

本稿は,従来の中選挙区制研究と対比して,中選挙区制を単記非移譲式投票制(SNTV)と捉える最近のアプローチ(SNTV研究)を点検する。前者は,大中小の選挙区制分類を前提に,中選挙区制の特質および付随する諸制度を研究対象としており,政党を従属変数として扱い,選挙制度が政党組織の脆弱性,派閥や後援会の発達などをもたらすことなどを分析している。これに対して,SNTV研究は,選挙制度を自己利益を追求する政党や政治家たちを制約するゲームのルールとして捉える新制度論のアプローチを取る。研究者たちは,SNTVが同一定数におけるドント式比例代表制よりも複数候補を擁立する大政党にとって不利となることから,逆に,自民党の戦略的成功が不利をはねかえして長期一党支配をもたらしたと結論づける。そして,派閥や後援会,政調部会への議員の所属などが,自民党の弱さではなくて,逆に成功の鍵だと論じている。本稿は,2つのアプローチの特性を検討し,それらがどのように日本の選挙研究に貢献したかを示す。
著者
田中 宗孝
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.45-56,224, 2005-02-28 (Released:2009-01-22)
参考文献数
17

わが国の選挙における投票は、原則として自書式投票によることとされてきた。2001年に成立した電子投票特例法は、地方公共団体が条例で定めるところにより当該地方公共団体の議会の議員又は長の選挙を電子投票によって行うことを認めるものであり、わが国選挙の投票に関する制度に新たな局面を開くものである。2002年6月から2004年2月までの間に9市町村の11選挙が電子投票によって行われた。これらの選挙では、開票所要時間が大幅に短縮された。音声による候補者情報の提供が視覚障害者に好評であるなど、電子投票に対する有権者の反応は全般的に良好である。しかし、いくつかのトラブルが発生しており、選挙争訟が提起されたケースもある。国政選挙への電子投票の導入など、電子投票の一層幅広い展開を図るためには、地方選挙において着実に実績を積み重ねて国民の信頼を確立することが最も肝要である。
著者
山田 真裕
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.45-57,205, 2002-02-28 (Released:2009-01-22)
参考文献数
12
被引用文献数
2

小選挙区比例代表並立制のもとで2回目となる第42回総選挙における棄権を,明るい選挙推進協会の衆院選後調査データ(明推協データ)に基づいて第41回総選挙と対比しつつ分析した。その結果,主に以下のような知見を得た。(1)有権者全体の選挙に対する関心はやや回復したものの,棄権者については関心の低下が見られること,(2)96年選挙では行政改革問題が有権者を動員する効果を持っていたと思われるのに対して,2000年選挙では目立った争点の効果はなく,政党支持と選挙への関心が投票-棄権を決定する大きな要素であったこと,(3)棄権者の政治的信頼は投票者よりも低いこと,(4)政治満足度は前回選挙に比べて低下しており,このことは投票者にも棄権者にも該当すること。
著者
上川 龍之進
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.54-68,195, 2007

本稿は,2005年総選挙以後の小泉政権において,政策決定過程がどのように変化したのかを論じる。第1に,小泉首相が政権発足直後に打ち出したものの,与党や省庁の反対にあって頓挫していた政策が,総選挙以降,小泉のリーダーシップによって次々と決められていったことを示す。第2に,2005年末以降,「官邸主導」による政策決定を可能にしてきた経済財政諮問会議の役割が変質し,自民党•官僚主導の政策決定が復活したという見解に対し,歳出•歳入一体改革の決定過程は依然として「首相主導」であったことを明らかにする。第3に,2006年の通常国会では重要法案が軒並み成立しなかった。これも,会期延長を求める与党の声を無視した「首相主導」の結果であると論証する。総選挙での大勝によって小泉の自民党内での影響力が飛躍的に高まった結果,政策決定過程が先述したように変化したというのが本稿の主張である。
著者
谷 聖美
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.84-99,206, 2002-02-28 (Released:2009-01-22)
参考文献数
41
被引用文献数
1

社会党は,60年代に入ると停滞し,その後は長期低落の道をたどった。この停滞と衰退をめぐってはさまざまな原因が指摘されてきた。なかでも,党の非現実的イデオロギーが党の適応力を奪ったという見方はもっとも一般的なものであった。本稿は,衰退の原因をめぐる諸々の説明を逐一検討し,それらの多くが必ずしも説得力を持たないことを明らかにする。ついで,選挙におけるこの党の集票戦術を分析し,労組依存に安住して個人後援会などの集票組織の構築に努力しなかったことが衰退の一因であることを示す。さらに,片山•芦田内閣失敗の負の影響はあったものの,この党の連合戦略と政策展開は60年代中葉までは巷間いわれているよりもずっと現実的で,党が活力を失ったのは,そうした現実派が党内抗争で社会主義協会などの教条的左派に敗れたあとになってからのことであることを指摘した。
著者
岡田 信弘
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.65-72,187, 2000-02-28 (Released:2009-01-22)
参考文献数
32

本稿では,戦後憲法学における選挙研究のありようを,「原点」,「転換点」,そして「現点」を示す代表的な文献を読み解きながら検討することとしたい。その特徴を簡単にまとめるならば,次のようになろう。まず,対象とその取り上げ方について,共通の枠組みが存在していることを指摘することができる。第一に,普通選挙の原則の実現に関わるもの,第二に,選挙運動の自由の確保に関わるもの,そして第三に,選挙の方法あるいは代表方法に関わるものという柱立てである。次に,方法ないし論じ方であるが,「規範の学」としての憲法学の手法が基本的には用いられることになる。つまり,法令によって定められた具体的な選挙制度は選挙に関する憲法上の諸原則から見てどのように評価されるべきか,という問題設定の下に考察がなされているといえよう。
著者
玉井 清
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.137-157,216, 2006-02-28 (Released:2009-01-22)
参考文献数
109

本稿は,昭和3(1928)年に実施された第1回普選の投票率に注目しながら,普選導入により新たに選挙権を獲得した人々の選挙に対する基本的な意識,すなわち彼らが新たに獲得した選挙権をどのように自覚し,投票を通じた政治参加にどの程度の意義を見出していたかについて考察を加えた。その結果,新有権者の選挙に対する関心や意識が必ずしも高くなかったことを,前年に実施された普選による府県議選の低投票率や,選挙買収を当然視する考え等から明らかにした。政府は,かかる違反防止のための選挙啓蒙活動を積極的に行うが,その活動は,有権者に選挙違反への脅威を抱かせ,彼らを選挙から遠ざけ,棄権を助長する恐れを生じさせた。こうした状況を受け,選挙後半戦より政府が,違反防止から棄権防止に力点を置く選挙啓蒙活動を展開するようになったことを,実際に用いられたポスターやビラ等を紹介しながら明らかにした。第1回普選の投票率は,当初懸念されたほど下がることはなかったものの,その背景において,本稿において詳述したような選挙啓蒙活動が必要にせまられ積極的に行われていた事実を示すことにより,新有権者の選挙に対する関心や意識は必ずしも高くはなかったことを検証した。
著者
加藤 元宣
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.154-170,207, 2002-02-28 (Released:2009-01-22)
参考文献数
13

本論文の目的は,2000年衆院選の選挙結果について都市部と農村部で明確な違いが存在したこと,小選挙区当選者の属性データと地域特性の間に少なからぬ関連性が認められたことの2つの仮説を検証することである。本論文は人口,産業などを代表する26の変数を用いて主成分分析を実施し,地域特性に基づく小選挙区の分類を行った。そして,析出された都市対農村の軸を尺度として2000年衆院選を分析した。その結果判明したことは,第1に都市部における民主党の局地的大勝•自民党の局地的大敗という特徴が明確に浮かび上がったこと,第2に農村部に対する都市部の投票者比率が2000年には急激に増加しており,そのことが選挙結果に少なからぬ影響を与えたこと,第3に当選者の属性を比較したとき都市部と農村部で明確な差異が認められ,代議士の構成について微かではあるが変化の兆しが見られたことである。
著者
増田 正
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.217-225,275, 1998-02-28 (Released:2009-01-22)
参考文献数
15

We usually choose one of two kinds of data on analyzing voting behavior in a certain area. One is survey data which is collected by researchers. The other is aggregate data which is prepared by using statistics. We know quite well the advantages of each. And selecting each data naturally leads to fixing some procedures and variables in many cases.I intended to use both, and feed all 9 variables into a computer.In this paper, I have aimed to predict an election in terms of three categories, that is, characters, local political activities, and political environment of the French deputies. I judged the most effective factors of these, which had controlled each other.I calculated the following result of a logistic regression analysis: z=-1.6875+0.6308 (passed)+2.7082 (left)-0.1767 (long)+1.3034 (mayor)-0.9164 (prefect)+0.5869 (community)+0.4133 (decent.)-0.5868 (activity)-0.1108 (money) And r=0.2143 (passed), 0.1668 (mayors), 0.1370 (left), etc.From these figures, it appears that the most important factors are characters of the French deputies. Compared with other elections, the 1997 French legislative election is not special. I think that we can apply this implication to other legislative elections in France.
著者
松本 正生
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.39-50,214, 2006-02-28 (Released:2009-01-22)
参考文献数
17
被引用文献数
2

1995年統一地方選の「青島•ノック現象」を嚆矢とする無党派の時代も,ようやく終焉を迎えつつある。93年政変からはじまる連立政権期の十数年間に,有権者レベルでは,政党支持の質的変化が生じていた。旧来の政党支持の退場による,「潜在的支持」層化の進展である。すなわち,特定の支持政党を持たないという前提の上で,そのつど政党を選好する新しい政党支持の時代の到来だ。「そのつど支持」層(contingent voters)は,政党を横並びで比較し,政党本位の選択を行う。「政党」支持から政党支持への変容と表現することもできよう。いずれにせよ,無党派層と政党支持層との間の区分は,もはやあまり意味をもたない。無党派を政党支持の残余カテゴリー(残りの部分)と捉えるのは,そろそろ終わりにすべきだろう。「無党派層の反乱」に象徴される政党を否定した時代から,相対化して比較する時代へと変わった現在,無党派層という呼称もやめた方がよいかもしれない。
著者
石上 泰州
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.125-136,215, 2006-02-28 (Released:2009-01-22)
参考文献数
23
被引用文献数
1

本稿は,集計データにより1957年4月から2005年3月までに行なわれた知事選挙の投票率を分析する。着目するのは,統一地方選挙の効果と,相乗りおよび自民党分裂の影響である。分析の結果,確認されたのは以下の点である。(1) 議会選挙との同時選挙になると知事選挙の投票率は高くなる。(2) 議会選挙において無投票の選挙区が生じることがあるが,無投票の選挙区が多いほど知事選挙の投票率は低くなる。(3) 衆院選,または参院選との同日選挙になると投票率は高くなる。ただし,参院補選との同日選挙では投票率に影響がみられない。(4) 統一地方選挙において行なわれる知事選挙の投票率は高い。ただし,同じ日に行なわれる知事選挙の数が多いほど投票率が高くなるわけではない。(5) 自民党に相乗りする政党が多くなるほど投票率は低くなる。(6) 国政第二党が自民党に相乗りすると投票率は低くなる。(5)よりも(6)のほうが投票率に対する影響はやや大きい。(7) 自民党が分裂した選挙は投票率が高い。
著者
塩沢 健一
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.125-137,174, 2004-02-28 (Released:2009-01-22)
参考文献数
22

住民投票とその後の選挙で投票結果にズレが生じる「民意のねじれ」とも呼ぶべき現象がしばしば起こるのは何故か。これまで一般的には,「政策か人か」という投票対象の違いなどによるものと考えられてきた。だが,こうした解釈は「民意のねじれ」の一部分を説明しているに過ぎない。そこで本稿では,両者の年代別投票率の違いに着目した。両者を比較すると,若い層ほど住民投票での投票率が高く,また「反対」傾向も強い。徳島市の住民投票では通常の選挙の傾向とはやや異なり,40代の投票率が最も高く,20代と70代以上が最も低かった。こうしたデータを基に,住民投票と選挙では各年齢層による投票参加の傾向が異なることもまた,「民意のねじれ」に一定の影響を与えている可能性が高いことを明らかにした。以上の分析結果から,最後に,住民投票で若年層の投票参加が高まる要因などについての仮説を提出する。
著者
岡田 浩
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.60-65,269, 1998-02-28 (Released:2009-01-22)
参考文献数
7

In recent years, both national and local elections have often recorded the worst voting turnout in Japan. In news articles, they say the battenness of choice in elections, which is caused by the convergence of Japanese political parties, is one reason for this decline in voting turnout.By analysis of survey data in Sendai City in Japan, this paper attempts to examine this argument.In this paper, it is shown that the electorate's cognition of party differentials declined suddenly from 1993 and it had an independent effect on voting turnout, even controlling party identification.
著者
清原 慶子
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.75-88,178, 1999-02-28 (Released:2009-01-22)
参考文献数
46

高齢化が急速に進む日本では,高齢による中途の視聴覚障害や身体障害が増加している。そこで,高齢者•障害者の投票をめぐる条件整備は,重要な社会的課題である。身体障害者は,投票の際には,投票所にアクセスしにくいこと,点字投票や代理投票がやりにくいこと,選挙や候補者に関する情報不足等の障害があり,選挙活動にも制約が生じている。本稿では,東京都の事例を踏まえ,高齢社会の選挙をめぐる今後の整備の方向性と課題を,特に「投票」をめぐる3つのアクセシビリティに要約して分析し,提言する。すなわち,投票所のアクセシビリティ,投票方法のアクセシビリティ,情報のアクセシビリティである。米国の1984年に成立した“Voting Accessibility for the Elderly and Handicapped Act”を参照し,投票所や投票方法の再検討,選挙情報の電子化や電子投票を視野に入れた投票をめぐるアクセシビリティ実現の取り組みが,高齢者•障害者の参政権の保障につながることを提言する。
著者
木村 高宏
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.125-136,257, 2003-02-28 (Released:2009-01-22)
参考文献数
11
被引用文献数
4

本稿では不満な有権者の棄権を,ハーシュマン(Hirschman, Albert O.)の提示した「退出」であると考える。この理論枠組みを敷衍して,不満な者の投票参加がいくつかの要因によって影響を受けるという仮説を検証する。本稿の分析を通じて,不満であっても何らかの政治課題を重要だと考えれば投票し,あるいは,社会をよくするために何かができると考えれば投票する,という有権者の存在を示すことができた。このことは,有権者自身の態度形成を問題にしており,政策距離を中心に考える期待効用差からの研究に対して,有権者の政治を理解する能力が十分に成熟していない場合にも採用可能であるという利点があるだろう。また,分析において,政治的疎外感を示す質問と,「社会をよくする」というような有力感に関する質問とが,質的に異なることを示すことができた。
著者
田中 愛治
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.80-99, 1992-04-30 (Released:2009-01-22)
参考文献数
35
被引用文献数
3
著者
陳 淑玲
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.135-146,183, 2001

本稿は宇都宮市長選挙に出馬した民主党推薦候補者石海行雄の事例を実地調査し,分析したものである。<br>官僚出身の落下傘候補者の集票母体の構成や集票活動の管理は,民主党と労働組合に重点を置いていたが,新たな集票活動のユニークなパターンとして,シンポジウムを開催することおよび選挙公約の作成にあたっては,官僚のキャリアを生かしたことが注目される。<br>そして当候補者の選挙活動を選挙キャンペーンモデルに適用すれば,「準政党中心モデル」の特徴が示される。このことは当候補者の集票活動の運営は,推薦政党の民主党が主導権を握っていたが,労働組合の支援のない民主党は実力のない看板政党に過ぎないものと考えられるからである。なぜならば,民主党(栃木県連)の再結成は主に労働組合出身議員の合流から成立ったものの,労働組合はかならずしも民主党を支持するものではないのである。こうして,労働組合からの支援を有することを前提とする民主党により運営される選挙活動は「準政党中心モデル」と称する。