- 著者
-
玉井 清
- 出版者
- Japanese Association of Electoral Studies
- 雑誌
- 選挙研究 (ISSN:09123512)
- 巻号頁・発行日
- vol.21, pp.137-157,216, 2006-02-28 (Released:2009-01-22)
- 参考文献数
- 109
本稿は,昭和3(1928)年に実施された第1回普選の投票率に注目しながら,普選導入により新たに選挙権を獲得した人々の選挙に対する基本的な意識,すなわち彼らが新たに獲得した選挙権をどのように自覚し,投票を通じた政治参加にどの程度の意義を見出していたかについて考察を加えた。その結果,新有権者の選挙に対する関心や意識が必ずしも高くなかったことを,前年に実施された普選による府県議選の低投票率や,選挙買収を当然視する考え等から明らかにした。政府は,かかる違反防止のための選挙啓蒙活動を積極的に行うが,その活動は,有権者に選挙違反への脅威を抱かせ,彼らを選挙から遠ざけ,棄権を助長する恐れを生じさせた。こうした状況を受け,選挙後半戦より政府が,違反防止から棄権防止に力点を置く選挙啓蒙活動を展開するようになったことを,実際に用いられたポスターやビラ等を紹介しながら明らかにした。第1回普選の投票率は,当初懸念されたほど下がることはなかったものの,その背景において,本稿において詳述したような選挙啓蒙活動が必要にせまられ積極的に行われていた事実を示すことにより,新有権者の選挙に対する関心や意識は必ずしも高くはなかったことを検証した。