著者
加茂 利男 阿部 昌樹 砂原 庸介 曽我 謙悟 玉井 亮子 徳久 恭子 待鳥 聡史 林 昌宏 矢作 弘
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究は、現代の先進諸国に共通してみられる「縮小都市」という現象に注目し、その政治的および政策的意味を解明することを目的とする。少子高齢化や経済のグローバル化により、先進国の多くの都市は縮小を余儀なくされているが、そのことが衰退を意味するとは限らない。むしろ、縮小は政治的アクターや政策提唱者にこれまでにない方法で都市を再構築する好機を提供する。そこで本研究は、日独仏米4カ国の港湾都市を対象にして、縮小に対する地方政府の政策対応に相違をもたらす要因の特定を試みた。その結果、選挙制度、執政制度、政府間関係、地理的な分節や機能的分節の程度が多様性をもたらすことを明らかにすることができた。
著者
待鳥 聡史
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.19-31, 2015 (Released:2018-04-06)
参考文献数
20

現代日本の首相は,政策過程においてどの程度まで自律的に主導的な役割を果たしているのだろうか。この点に関しては,しばしば「官邸主導」「強い首相」といった語が用いられるようになっているように,近年では役割が拡大しているという理解が広がっている。本稿では,メディアに公表された首相の面会記録をデータ化し,大平首相から現在の安倍首相までの37年間の変化を検討した。この首相動静データを分析する作業を通じて,首相が官房長官や閣僚といった執政中枢部の狭いネットワークに依拠し,他のアクターとの接触をあまり行わないという意味で,自律的に主導的役割を果たす傾向を強めていることを明らかにした。政権交代に伴う与党構成の変化や首相の交代にもかかわらず,この方性はほぼ一貫しており,背景に選挙制度改革や内閣機能強化といった制度的変化があることを示唆する。
著者
待鳥 聡史
出版者
JAPANESE POLITICAL SCIENCE ASSOCIATION
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.1_140-1_161, 2009 (Released:2013-02-07)
参考文献数
26

This article proposes a framework for the comparative study of divided government and applies it to the U.S. cases. A recent theory of comparative politics, comparative analysis of political institutions, emphasizes there are many variations of the presidential systems. They come from two institutional arrangements: electoral and executive rules. These rules lead to the variations of divided governments by making differences in party systems and organizations. In the case of American divided government, it had been a combination of two-party competition and weak intra-party unity until the 1970s. Since the 1980s, however, American two-party system has been with a strong intra-party cohesion. This transformation has also changed the policymaking process of the divided government. By some data and a case study, the author finds that confrontations between the President and Congressional majority party become sharper, although these are continued not so long.
著者
待鳥 聡史
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.67-77,182, 2001

本稿では,1971年の参議院における重宗雄三議長の四選出馬断念と河野謙三議長選出をめぐる政治過程が,参議院自民党内の閣僚ポスト配分ルールに対して与えた影響について論じる。重宗の議事運営の手法や人事の私物化には,参議院内部に広範な批判が存在した。河野への議長交替過程は,理想主義的な一部の自民党議員による専横的な議長への挑戦が,同じく参議院改革を目指した野党との提携によって成功したとされてきた。これに対して筆者は,議長交替に至る過程において,参議院三木派が重宗四選反対に回った点に注目する。三木派の行動は,重宗の人格や参議院の理念の問題というより,選挙での脆弱性を抱えた小派閥による閣僚ポスト配分ルール形成の試みとして理解されうる。初入閣時当選回数や派閥別閣僚ポスト配分の分析からは,重宗議長の退任後,参議院自民党における制度化は大きく進展したことが分かる。
著者
待鳥 聡史
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.19-31, 2015

現代日本の首相は,政策過程においてどの程度まで自律的に主導的な役割を果たしているのだろうか。この点に関しては,しばしば「官邸主導」「強い首相」といった語が用いられるようになっているように,近年では役割が拡大しているという理解が広がっている。本稿では,メディアに公表された首相の面会記録をデータ化し,大平首相から現在の安倍首相までの37年間の変化を検討した。この首相動静データを分析する作業を通じて,首相が官房長官や閣僚といった執政中枢部の狭いネットワークに依拠し,他のアクターとの接触をあまり行わないという意味で,自律的に主導的役割を果たす傾向を強めていることを明らかにした。政権交代に伴う与党構成の変化や首相の交代にもかかわらず,この方性はほぼ一貫しており,背景に選挙制度改革や内閣機能強化といった制度的変化があることを示唆する。
著者
増山 幹高 坂本 孝治郎 待鳥 聡史 奈良岡 聰智 村井 良太 飯尾 潤 竹中 治堅 川人 貞史
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

この研究では, 日本を含む議会制民主主義諸国における立法と行政のあり方を体系的に理解し, 歴史的・比較政治学的視座に基づいて日本の国会および議院内閣制を理論的・実証的に分析している. とくに, 国会に関する未公開史料の保存・整理を進めるとともに, 代議制民主主義の発展過程, 二院制と立法・行政関係の制度構造, 議会制度と選挙制度の相互連関を歴史的・比較政治学的に検証している.
著者
福元 健太郎 坂本 孝治郎 待鳥 聡史 増山 幹高
出版者
学習院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

全裁判官の経歴に関するデータ・べースを構築した。これを用いて、9月開催のアメリカ政治学会で、福元・増山は共著論文を発表した。これは、裁判官の青年法律家協会への加入の有無が部総括への昇進を遅らせるとする先行研究に対して、分割母集団生存分析とマッチングの手法を用いるとそうした効果は見られないことを示した。福元は次の研究を行った。(1)立法府から行政府への委任は、最終的な司法府の判断を考慮に入れながらなされる。立法府の議員の選好が多様であることも委任をもたらす。(2)議院が他の議院の政策選好に関する情報が不確実であったり、法案が重要であったりすると、後議院修正や両院協議会が起きる。坂本は、政治・司法関係の変遷について、1962年の臨時司法制度調査会の発足から1987年の中曾根内閣終了までに関し、衆参の法務委員会における司法行政や関連法案の審議に際し、どのような頻度で最高裁事務総局裁判官が出席を求められ、どのような質問をされたか、その頻度データや質疑内容の分析をおこなった。それに、最高裁長官がどのような行事に出席しているか、三権の長が揃って出席する催しにはどんなものがあるか、事例を収集・整理した。待鳥は、日本の地方政府を素材として、行政府と立法府の部門間関係が政策選択に与える影響について分析した共著書『日本の地方政治-二元代表制政府の政策選択-』を刊行した。また、二元代表制が地方政府の運営に与える影響を概観した小論も公表した。増山は二院制の論点整理を試み、第二院と行政権の問に「信任関係」を制度化する方策を検討し、「二院制と行政権」と題する論文を日本公共政策学会で報告するとともに、戦後の日本における首相の信任、不信任に関してより多角的な検討を進めている。
著者
待鳥 聡史 砂原 庸介 竹中 治堅 浅羽 祐樹 MCELWAIN KENNETH
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

政府の運営の基本原則、すなわち統治の制度やルールがいかに定められ、変更されるかについては、今日国際的な関心が高まっている研究課題である。本研究は、このような研究動向に棹さしつつ、統治の制度やルールの変更が憲法典の改正に拠らない場合を含む多様なものであることに注目し、その帰結として変更に際する多数派形成の過程にも著しい多様性があることを、理論モデルの構築、国際比較可能なデータセットの作成、さらに計量分析と事例分析による検証から解明し、それらの作業を通じて国際的な研究発展に貢献することを目指している。
著者
曽我 謙悟 待鳥 聡史
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.5-15, 2008

本稿は都道府県レヴェルにおける知事与党構成と議会議席率の変化に主に注目しながら,中央政府レヴェルでの政党再編と二大政党化が地方政治にどのような影響を及ぼしているのか,また無党派知事の出現や議会における地方政党・会派の勢力拡大はどのような現況にあるのかを明らかにする。1990年代末頃から中央では二大政党化の流れが強まるが,データで見る限りそのことと地方政治の連動はなお明確とまではいえず,変化は緩やかであることが分かる。知事与党構成を見ると,無党派知事の増加はほぼ頭打ちとなり,民主系知事も増えてはいない。議会議席率に関しては,引き続き民主系会派とそれに近い立場の地方会派が徐々に議席を伸ばしている。これらの変化を総合すると,地方政治にも二大政党化の萌芽が見られるが,それが確立されたとまでは言うことができない。
著者
建林 正彦 村松 岐夫 森本 哲郎 品田 裕 網谷 龍介 曽我 謙悟 浅羽 祐樹 大西 裕 伊藤 武 西澤 由隆 野中 尚人 砂原 庸介 堤 英敬 森 道哉 藤村 直史 待鳥 聡史
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、現代の民主主義における政党組織の共通性と各国固有の特徴とその規定要員を明らかにするために、日本の民主党、自由民主党の政党本部、各地の地方組織(都道府県連合会)に対する聞き取り調査と、都道府県議会議員に対するアンケート調査を行い、これらの情報・データをもとに国内比較、国際比較の観点を加えつつ、研究会を積み重ねながら様々な分析を行った。
著者
川人 貞史 増山 幹高 山田 真裕 待鳥 聡史 奈良岡 聰智 村井 良太 福元 健太郎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

この研究では,政治制度と政治アクターの相互作用のダイナミックスを,民主政治の機能に焦点を当てて分析する.共通する研究課題として,(a)政治制度は民主政治の機能にとってどのような影響・効果を持つか,(b)政治制度がどのようにして形成・創設されたか.それが,政治制度の効果にどのような関連性を持つか,を設定して,明文,不文の政治制度ルールを分析する.
著者
川人 貞史 坂本 孝治郎 増山 幹高 待鳥 聡史 福元 健太郎 空井 護
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

1.国会運営ルールの形成と変化(1)予算国会の衆院予算委の審議日程等に関するデータを整理し,運営方式の変遷や争点の推移を概観できるようにした.(2)国会中心主義の国会制度と議院内閣制に関する法整備の分析を進め,国会制度の形成・変容とその政治的帰結を分析する研究を本にまとめた.(3)戦後国会における両院間調整の制度がどのように運用され,そこで参議院の意向がどの程度まで政策結果に反映されるかに関する論文を執筆し,衆議院の優越が条件付きにとどまることを示した.2.立法案件データの作成(1)法案の議事日程の資料整備を進め,会期延長と法案成立に要する日数の関係を分析し,また厚生省関連法案の動向と所管部局再編の関連を検証した.(2)両院間調整に至った議案についてのデータを,閣法,衆法,参法についても完成させた.(3)第119回〜141回国会の内閣提出法案審議状況を一覧形式で資料としてまとめた論文を公刊した.3.国会運営の制度と立法行動を説明するための理論と実証(1)国会法改正が法案の議事日程に及ぼした作用を検証した.(2)参議院議員は衆議院議員に比べてシニアとは限らないことを,全国会議員のデータ分析で明らかにした.(3)米連邦議会の予算編成改革を比較政治学的観点から分析した単著を公刊した.(4)国会における内閣提出法案を対象とした議事運営の計量分析を本にまとめた.(5)国会運営の制度分析を行う際に,諸外国や地方の議会との比較の視座を導入する意義を示した論文を執筆した.(6)内閣提出法案と議員提出法案の立法過程を法案個々の成立確率という意味において比較し,権力の集中と分散を規定する国会の憲法構造的作用を戦後の長期的な時系列変化という観点から検証する論文を執筆した.(7)日本の国会と内閣の関係を概説し,内閣が選挙や立法においてリーダーシップを発揮する状況を分析した論文を公刊した.
著者
待鳥 聡史
出版者
大阪大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

本年度は2年間にわたる科学研究費補助金の第2年度に当たる。前年度の成果を受けて、当初からの研究課題と今年度の研究計画に沿った成果を出すことが目指された。具体的には、政党再編期における参議院について、会派変動と議員行動の因果連関を解明するという観点から、計量データに依拠した実証分析を行うという試みであるこの試みは、2つの成果となってあらわれた。1つは研究論文「参議院自民党と政党再編」である。ここでは、従来ほとんど分析がなされていなかった自民党参議院議員の離党及び会派残留行動について、衆議院自民党の分裂を説明するための諸モデルよりも、参議院自民党において歴史的に形成された文脈を重視したモデルの方が、よりよく説明できることを明らかにした。すなわち、参議院自民党では長らく佐藤派-田中派-竹下派の圧倒的優位が続いていたが、それが少なくとも一時的に弱まったのが、1989年選挙による大幅な議席減から93年の分裂にかけての時期であった。他派閥の所属議員は、竹下派優位が弱まった状況の下では、以前に比べて党内昇進などで有利になっていたと考えられるが、分裂に際して、そのことが明らかに離党を抑止する要因として作用したのである。もう1つの成果としては、参議院議員の総合的データベース構築に着手できたことである。上に挙げた論文の中では1993年分のデータの一部しか利用しておらず、現時点でもデータベースとしては未完成の段階である。しかし、幸いにも衆議院に関して同様のデータベース構築を進めている研究者(建林正彦・関西大学助教授、エリス・クラウス・カリフォルニア大学サンディエゴ校教授)や国会の計量分析に実績のある研究者(川人貞史・東北大学教授、増山幹高・成蹊大学助教授、福元健太郎・学習院大学助教授)との共同研究にも見通しが立っているので、今後とも作業を継続する予定である。