著者
片岡 佳美
出版者
Japan Society of Family Sociology
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.32-44, 2007

本稿の目的は, 農村部における「家族の個人化」について, 島根県中山間地域のI・Uターン家族や家族経営協定締結家族を含む農林漁業従事者へのインタビュー調査の事例をもとに考察することである。事例では, 家族生活において個々の家族成員の自由な判断が他の家族成員によって尊重されており, 家族の個人化が起こっていることがうかがえた。一方で事例の家族は, 個人の自由と同時に集団としての家族も重視していた。家族集団が, 個人が農村で生活していくための適応手段としてとらえられ, そのために家族集団を維持する責任意識が各家族成員に生じることが示唆された。各家族成員はこの責任意識から, 家族集団を維持するための戦略として, 家族内で個人の自由を配慮しあうと考えられる。こうした考えから, 個人の自由と家族集団の維持・存続のバランスの問題を解決するうえでも, 農村家族の研究が今後ますます注目されると思われる。

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