著者
大淵 憲一
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.127-136, 1986

本稿では社会人と大学生を被験者に, Averillの質問紙「怒りの経験」を使って攻撃反応の要因を検討した. まず, 反応11項目の因子分析から, 願望・実行の両水準で同じ4因子が得られ, それらは「直接的攻撃」, 「攻撃転化」, 「非攻撃的解決」, 「怒りの抑制」と解釈された。次に, これらを基準変数とし, 一方, 個人要因 (年令, 性別), 状況要因 (加害者の性別, 被験者との関係, 地位, 被害), 認知判断 (悪意の知覚, 原因帰属), 情緒過程 (敵意的動機, 道具的動機, 怒りの強さ) を説明変数とする数量化分析I類を行った。主な結果は次の通り。(1) 直接的攻撃反応は, 心理的被害が強く, それが不合理な原因に帰属され, 敵意的動機が喚起され, 加害者が身近な人の時に生じやすく, 対象が目上の人だったり女性だったりすると抑制されやすかった。(2) 攻撃転化は, 若年者に多く, 認知的要因が弱いのに情緒的要因が強いなど衝動的性格が認められた。(3) 非攻撃的解決が試みられるのは, 加害者と被験者の間に元々良好な関係があり, 被害が悪意に帰属されず, 敵意的動機が弱く道具的動機が喚起されている時だった。(4) 怒りの抑制は, 被害が個人的な性質のもので他者の共感を得にくく, また, 加害者が明確な攻撃意図を持っていたり目上の人であるなど, 報復の危険が高い時に行われやすかった。

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「被験者は自分の受けた被害が加害者の不合理 な意図 によると判断した時には攻撃を強く願望したが,反 対に,そ れが人力を越えた事故によるとか,加 害者の行為が合理的なものであると判断した時には攻撃の実行を抑制す ることが多かった」https://t.co/3WBD5WXdTn

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