- 著者
-
吉田 俊和
- 出版者
- 日本グループ・ダイナミックス学会
- 雑誌
- 実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
- 巻号頁・発行日
- vol.31, no.2, pp.104-109, 1991
- 被引用文献数
-
1
本研究は, 観察者の有・無条件において, 公的自意識の高・低が失敗経験を与えられることによって, 先行試行の原因帰属や次試行の課題遂行にどのような影響を及ぼすかを検討した。実験デザインとして, 2 (公的自意識の高・低) ×2 (観察者の有・無) の4条件群を設定した。教養心理学受講生162名の中から公的自意識高群と低群それぞれ38名ずつを抽出し, ランダムに観察者有・無条件に割り当てた。実験者は大学4年生男子であり, 実験課題は4文字アナグラム課題である。被験者は入室後, 練習試行を3分間行って失敗経験をした後, 原因帰属 (能力, 努力, 課題の困難さ, 運) の4要因の合計が10になるように評定させられた。その後, 5分間の本試行が行われた。観察者有り条件では, 実験中常に実験者が被験者の前方に着席したが, 観察者無し条件では, 教示以外の時は被験者右前方の衝立の後ろに位置した。<BR>その結果, 公的自意識の高い群は, 失敗の原因を内的で安定した要因に帰属させる傾向がみられ, 自己客体視状態が高まることによって低められる自己評価に合致する帰属を行うという認知的斉合性理論からの予側が支持された。課題遂行の増加量に関しては, 公的自意識よりも観察者の影響が強くみられ, 観察者が存在することにより増加量の抑制がみられた。これにより, 公的自意識は原因帰属に, 観察者の存在は課題遂行に, それぞれ独立した効果を及ぼしている可能性が考察された。