著者
大西 彩子 黒川 雅幸 吉田 俊和
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.324-335, 2009 (Released:2012-02-29)
参考文献数
37
被引用文献数
11 12

本研究の目的は, 児童・生徒が教師の日常的な指導態度をどのように捉えているのかということ(教師認知)が, 学級のいじめに否定的な集団規範と, いじめに対する罪悪感の予期を媒介して, 児童・生徒のいじめ加害傾向に与える影響を明らかにすることである。547名(小学生240名, 中学生307名)の児童・生徒を対象に, 教師認知, 学級のいじめに否定的な集団規範, いじめに対する罪悪感予期, いじめ加害傾向を質問紙調査で測定し, 共分散構造分析による仮説モデルの検討を行った。主な結果は以下の通りであった。(1) 学級のいじめに否定的な集団規範といじめに対する罪悪感の予期は, 制裁的いじめ加害傾向と異質性排除・享楽的いじめ加害傾向に負の影響を与えていた。(2) 受容・親近・自信・客観の教師認知は, 学級のいじめに否定的な集団規範といじめに対する罪悪感の予期に正の影響を与えていた。(3) 怖さの教師認知と学級のいじめに否定的な集団規範は, いじめに対する罪悪感に正の影響を与えていた。(4)罰の教師認知は, 制裁的いじめ加害傾向と異質性排除・享楽的いじめ加害傾向に正の影響を与えていた。本研究によって, 教師の受容・親近・自信・客観といった態度が, 学級のいじめに否定的な集団規範といじめに対する罪悪感の予期を媒介して, 児童・生徒の加害傾向を抑制する効果があることが示唆され, いじめを防止する上で教師の果たす役割の重要性が明らかになった。
著者
浅野 良輔 吉田 俊和
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.82, no.2, pp.175-182, 2011 (Released:2011-12-06)
参考文献数
41
被引用文献数
6 1

This study investigated how relational efficacy affects functions of safe haven and secure base in romantic relationships and same-sex friendships. Relational efficacy, which is a shared or intersubjective efficacy of relationship partners, refers to a pair's belief that they can mutually coordinate and integrate their resources to prevent and resolve any problems. Participants were 97 dating heterosexual couples and 119 same-sex friendships. Multilevel structural equation modeling suggested that relational efficacy promotes the safe haven function and the secure base function in romantic relationships and same-sex friendships, controlled for sex, relationship longevity, irreplaceability, attachment anxiety, and attachment avoidance. Additionally, the effects of relational efficacy on the safe haven function and the secure base function in romantic relationships are stronger than in same-sex friendships. These results are discussed in terms of the association between intersubjective processes in close relationships and individuals' hedonic/eudaimonic well-being.
著者
油尾 聡子 吉田 俊和
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.1-11, 2013 (Released:2013-09-03)
参考文献数
26

社会的迷惑行為の抑止方法には,禁止や制裁といった方法が取られることが多い。しかし,これらの方法は迷惑行為者の反発心を喚起させるため,長期的にみて抑止効果が弱い。本研究は,これらの方法の問題点を解決すると考えられる報酬による社会的迷惑行為の抑止効果を実証したものである。具体的には,社会的迷惑行為の行為者に対して認知者が好意の提供(親切な行動)を行うことによって,そうした行為が抑止されるのかどうかを検討した。好意を提供された迷惑行為者は,“好意を与えてくれた他者に対して,同様のお返しをしなければならない”という互恵性規範が喚起され,社会的迷惑行為を抑制すると予測された。大学生153名を対象とした実験室実験の結果,飲み物を振る舞ってもらうことを通して好意を提供された迷惑行為者の中で,特に,互恵性規範が喚起されやすかった人々は,社会的迷惑行為を抑制するよう動機づけられることが示された。最後に,好意の提供による社会的迷惑行為の抑止方法は,迷惑行為者と迷惑認知者の感情的反応と関係性の良好さをも配慮した長期的に有効可能性の高い方法であることが考察された。
著者
黒川 雅幸 吉田 俊和
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.1-13, 2016 (Released:2016-10-06)
参考文献数
29
被引用文献数
1

本研究の主な目的は,大学新入生を対象に,アプリケーションソフト「LINE」によるネットワークと,友人満足感および精神的健康との関連を明らかにすることであった。調査対象者は,同じ専攻の大学1年生62名(男性23名,女性39名)であり,5月中旬と7月中旬の2回にわたって質問紙調査を実施した。5月と7月のいずれの時期においてもFTFネットワークとLINEネットワークには正の相関がみられた。また,5月と7月のLINEネットワークの類似性は,5月と7月のFTFネットワークの類似性と比べても小さかった。5月から7月にかけてのFTFコミュニケーションの人数は有意な変化がなかったのに対し,クラスメンバーを含むLINEグループの数は増加し,最も頻繁にアクセスするクラスメンバーを含むLINEグループの人数は減少した。クラスメンバーを含むLINEグループの数は精神的健康の各下位尺度と無相関であったが,LINEネットワークの中心性は5月において友人満足感と有意傾向の正の相関がみられ,うつ傾向とは7月において負の相関がみられた。また,LINEへのアクセス回数は,5月において友人満足感と正の相関が示された。
著者
中島 誠 吉田 俊和
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.98-107, 2008

This research investigated the motives behind helping and exploitive behaviors from the perspective of the Equity with the World (EwW) hypothesis, which claims that people will maintain equity in trans-relational relationships. It was hypothesized that (a) people redress inequity even from third parties, and (b) in comparison with monetary issues, when the exchange resource involves helping out, over-rewarded people offer more resources to others, while the under-rewarded are less likely to exploit others. In addition, (c) people redress inequity more strongly with interested parties. A total of 343 college students completed a questionnaire that contained two hypothetical situations. In each of these situations, respondents were initially either given resources, or had resources exploited from them, and were then asked about subsequent situations. The evaluation of the first interaction and their intent toward offering resources to third parties were assessed. The results generally supported the hypotheses. However, the second hypothesis was not supported. They were less exploitive when they were under-rewarded regarding money allocation. Differences in the method of restoring inequity regarding the resources were discussed in terms of generalized exchange.
著者
多川 則子 吉田 俊和
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.126-138, 2006

The present study examined the effects of daily communication on favorability in the perception of romantic relationships, with reference to Matsui's (1990) Developmental Stage Model of Romantic Love. The 484 participants were divided into three categories according to their current relational status: romantic relationships (154 undergraduates), one-sided non-mutual relationships (205 undergraduates), and regular heterosexual friendships (125 undergraduates). The latter two groups were included for comparison. Sternberg's (1997) Triangular Love Scale was used in order to measure favorability in participants' relationships. A separate scale was used to record information relating to daily communication. Participants were asked various questions regarding their relationships. Some examples included, 'Exchanging talk about daily events','Having a relationship-specific verbal style', and 'Perceiving the partner's reaction'. For the purposes of this study,'Exchanging talk about daily events' was discussed in terms of messages regarding content and relational meaning (Watzlawick, Bavelas, & Jackson, 1967). And 'Having a relationship-specific verbal style' was discussed in terms of relational culture (Wood, 1982). The results indicated that the all daily communicational behavior mentioned above influenced the level of favorability of romantic relationships.
著者
大西 彩子 吉田 俊和
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.111-121, 2010 (Released:2010-02-20)
参考文献数
48
被引用文献数
4 2

本研究の目的は,自己愛傾向,認知的共感性,情動的共感性,いじめに否定的な集団規範が生徒のいじめ加害傾向に与える影響を明らかにすることで,いじめの個人内生起メカニズムについて検討することである。188人(男子103人,女子85人)の中学生を対象に,自己愛傾向,認知的共感性,情動的共感性,関係性いじめ否定規範意識,直接的いじめ否定規範意識,関係性いじめ加害傾向,直接的いじめ加害傾向を質問紙調査で測定し,共分散構造分析による仮説モデルの検討を行った。主な結果は以下の通りであった。(1)各いじめ否定規範意識は,各いじめ加害傾向に負の影響を与えていた。(2)誇大的自己愛傾向は,各いじめ否定規範意識に負の影響を与えることで間接的に各いじめ加害傾向に影響を与えていた。(3)認知的共感性は,直接的いじめ加害傾向へ負の影響を与える直接効果と,関係性いじめ否定規範意識に正の影響を与えることで,関係性いじめ加害傾向に負の影響を与える間接効果がみられた。(4)情動的共感性は,各いじめ否定規範意識に正の影響を与えることで,間接的に各加害傾向に影響を与えていた。本研究によって,集団規範がいじめ加害傾向に影響を与える主な要因であることが示唆され,集団規範を考慮したいじめ対策を行うことの重要性が明らかになった。
著者
油尾 聡子 吉田 俊和
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.1-11, 2013

社会的迷惑行為の抑止方法には,禁止や制裁といった方法が取られることが多い。しかし,これらの方法は迷惑行為者の反発心を喚起させるため,長期的にみて抑止効果が弱い。本研究は,これらの方法の問題点を解決すると考えられる報酬による社会的迷惑行為の抑止効果を実証したものである。具体的には,社会的迷惑行為の行為者に対して認知者が好意の提供(親切な行動)を行うことによって,そうした行為が抑止されるのかどうかを検討した。好意を提供された迷惑行為者は,"好意を与えてくれた他者に対して,同様のお返しをしなければならない"という互恵性規範が喚起され,社会的迷惑行為を抑制すると予測された。大学生153名を対象とした実験室実験の結果,飲み物を振る舞ってもらうことを通して好意を提供された迷惑行為者の中で,特に,互恵性規範が喚起されやすかった人々は,社会的迷惑行為を抑制するよう動機づけられることが示された。最後に,好意の提供による社会的迷惑行為の抑止方法は,迷惑行為者と迷惑認知者の感情的反応と関係性の良好さをも配慮した長期的に有効可能性の高い方法であることが考察された。<br>
著者
尾関 美喜 吉田 俊和
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.32-44, 2009 (Released:2009-08-25)
参考文献数
38
被引用文献数
2 1

本研究では,社会的アイデンティティ形成の相互作用モデルに基づいて,集団アイデンティティを個人レベルと集団レベルに分けてとらえるとともに,集団アイデンティティを成員性と誇りの二側面でとらえた。そして,成員性,誇り,成員性の集団内平均が集団内における迷惑行為の迷惑度認知に及ぼす影響を検討した。HLMによる分析の結果は以下に示すとおりであった。1)規範などによって抑制可能である集団活動に影響を及ぼす迷惑行為については,成員性の強い成員ほど迷惑度を高く認知した。2)集団内の人間関係に影響を及ぼす迷惑行為については,成員性の集団内平均が高い集団では,誇りの個人差に起因する迷惑度認知の差はみられなかった。3)成員性の集団内平均が低い集団では,誇りの高い成員ほど迷惑度を高く認知していた。
著者
尾関 美喜 吉田 俊和
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.26-38, 2007 (Released:2008-01-10)
参考文献数
35
被引用文献数
4 3

本研究では大学生の部活動・サークル集団における迷惑行為の生起及び認知に組織風土と集団アイデンティティが及ぼす影響を検討した。組織風土を集団が管理されている程度である管理性と,集団内で自由に意見や態度を表明しやすい程度である開放性の2側面で構成した。組織風土と迷惑行為の生起頻度との関連を検討したところ,管理性が集団活動に影響を及ぼす迷惑行為の生起を,開放性が集団内の人間関係に影響を及ぼす迷惑行為の生起を抑制することが示された。また,組織風土と集団アイデンティティが迷惑の認知に及ぼす影響を検討した。この結果,集団活動に影響を及ぼす迷惑行為については,管理性と開放性の両方が高い集団(HH型)の成員は管理性が高く開放性が低い集団(HL型)・管理性が低く開放性が高い集団(LH型)の成員よりも迷惑度を高く認知した。さらに集団アイデンティティの強い成員は集団アイデンティティの弱い成員よりも迷惑度を高く認知した。集団内の人間関係に影響を及ぼす迷惑行為については,組織風土,集団アイデンティティともに迷惑度認知に影響を及ぼさなかった。
著者
原田 知佳 吉澤 寛之 吉田 俊和
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.122-136, 2009 (Released:2009-03-26)
参考文献数
42
被引用文献数
10 4

本研究は,社会的迷惑行為および逸脱行為といった反社会的行動に及ぼす自己制御の影響過程について,脳科学的基盤が仮定されている気質レベルの自己制御と,成長の過程で獲得された能力レベルの自己制御の2側面に着目し,気質と能力の因果関係を含めた包括的モデルの検討を行った。対象者は高校生・大学生の計641名であり,自己制御の気質レベルはBIS/BAS・EC尺度を,能力レベルは社会的自己制御(SSR)尺度を用いた。分析の結果,次の知見が得られた。(1)SSRの自己主張的側面はBIS/BAS,ECからの直接効果が示されたのに対し,自己抑制的側面はECからの直接効果のみが示された。(2)気質レベルよりも能力レベルの自己制御の方が,反社会的行動により強く影響を及ぼすことが示された。(3)社会的迷惑行為と逸脱行為とでは気質レベルの自己制御からの直接効果に差異が示され,前者はEC,BASからの直接効果,後者はBIS/BASからの直接効果が示された。(4)能力レベルの自己制御と逸脱行為との関連については,自己抑制と自己主張の交互作用的影響が認められ,自己抑制能力を身につけずに自己主張能力のみを身につけると,他者を配慮せずに自己中心的な行動を行う自己主張能力として歪んだ形で現われるために,逸脱行為に結びつきやすい傾向が示された。以上の結果に基づき,反社会的行動に及ぼす自己制御の影響過程,社会的迷惑行為と逸脱行為との相違点および共通点について議論した。
著者
油尾 聡子 吉田 俊和
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.32-40, 2012

This study examined whether the norm of reciprocity, which implies that people feel compelled to return favors, plays a role in deterring inconsiderate behavior. We predicted that both gratitude messages, such as "Thank you for parking your bike in a straight line," and knowledge of the sender's identity facilitate reciprocation and thus deter inconsiderate behavior. Participants (N=191) were randomly assigned to read one of four descriptions. These descriptions reflected a 2 (messages: gratitude vs. prohibition)×2 (sender identity: clear vs. ambiguous) between-participants design. The participants subsequently rated the extent to which they were likely to engage in inconsiderate behavior in a given situation. As predicted, when the sender's identity was clear, the participants exposed to a gratitude message tended to refrain from inconsiderate behavior by invoking the norm of reciprocity. We also discuss the effectiveness and implications of the norm of reciprocity as a deterrent of inconsiderate behavior.
著者
原田 知佳 土屋 耕治 吉田 俊和
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.32-39, 2013

This study investigated the effect of high-level/low-level construals and deliberative/implemental mindsets on self-regulation within social settings. High- vs. low-level construals (Study 1, n=97) or deliberative vs. implemental mindsets(Study 2, n=95) were induced in participants, using previously validated priming procedures. They were then asked to complete measures about the "value" and "cost" of the behavior, "negative evaluation of temptations," and "behavioral intention" in each conflict scenario in which social self-regulation ability was required (self-assertiveness, patience, and emotion/desire inhibition scenes in social settings). The results of Study 1 showed that participants in whom high-level construals were activated had higher primary behavioral value ratings, lower evaluation of behavioral cost, and stronger intentions than their counterparts with low-level construals. No difference in negative evaluations of temptation was found. In Study 2, mindsets had no effect on the evaluation of behavior. These results indicated that the activation of high-level construals contributes to self-regulation in the context of social conflict, while deliberative/implemental mindsets had no effect on conflict behaviors within social settings.
著者
平島 太郎 土屋 耕治 元吉 忠寛 吉田 俊和
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.1-10, 2014 (Released:2014-08-29)
参考文献数
32

本研究の目的は,子宮頸がん検診の受診を題材とし,態度の両価性が行動意図の形成に及ぼす影響を検討することであった。先行研究では,態度の両価性が,SD法で測定されるような全般的な態度と行動意図との一貫性を低下させることが報告された。従来の研究では,両価的な態度は時間的に不安定であるため,態度と行動意図が一貫しなくなるという説明がなされてきた(不安定仮説)。しかし,先行研究における理論的・方法論的な問題により,不安定仮説の妥当性は明確ではなかった。そこで本研究では,計画的行動理論の諸要因を加えた縦断調査を行い,不安定仮説を検証した。女子大学生を対象とし,子宮頸がん検診の受診に関する調査を実施した。その結果,子宮頸がん検診の受診に対する態度の両価性が低い群では,態度が受診意図を予測したが,態度の両価性が高い群では,態度が受診意図を予測していなかった。しかし,2時点間の全般的な態度の不安定性を検討した結果,態度の両価性が高い方が態度が不安定になるという,不安定仮説を支持する結果は得られなかった。また,態度の両価性が高い群では,主観的規範と行動統制感が受診意図を予測した。これらの結果から,態度の両価性が態度と行動意図との一貫性を低下させる現象について,不安定仮説の限界が示唆された。最後に,不安定仮説以外のメカニズムの可能性と,子宮頸がん検診の受診促進について考察した。
著者
黒川 雅幸 吉田 俊和
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.111-121, 2006 (Released:2006-12-28)
参考文献数
47
被引用文献数
1

本研究の主な目的は,小学校高学年(5,6年生)を対象に,学級内の仲間集団に焦点を当て,仲間集団内における個人と集団の他成員との双方向による役割期待遂行度が,関係満足度に与える影響を検討することであった。予備調査では,10項目からなる仲間集団関係満足度尺度の作成を行った。本調査では,予備調査で作成した尺度を用いて,個人が他の集団成員にもつ役割期待に対する他成員による遂行度と,集団の他成員が個人にもつ役割期待に対する個人の遂行度,仲間集団内地位が仲間集団関係満足度に及ぼす影響について性差,集団サイズを考慮して検討した。その際,役割期待項目の個人および,仲間集団の他成員が捉える重要性の重みづけを行った。階層的重回帰分析の結果,性差や集団のサイズにより違いが見られ,男子および小集団では,個人と集団の他成員が一致して重要と捉える役割期待が多いこと,女子および大集団では一致した役割期待における集団の他成員がもつ役割期待に対する個人の遂行度の高さ,さらに大集団においては,個人が重要と捉える役割期待における個人がもつ役割期待に対する集団の他成員の遂行度の高さおよび仲間集団内地位の高さも加えて関係満足度を高く予測していることが示された。
著者
中山 真 橋本 剛 吉田 俊和
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.61-75, 2017

<p>本研究の目的は,恋愛関係崩壊後のストレス関連成長に影響を及ぼす個人差・状況要因として,愛着スタイルと崩壊形態の影響を検討することであった。参加者である大学生・短大生184名(男性86名,女性98名)は,過去5年以内の恋愛関係崩壊経験について想起し,成長感尺度,愛着スタイルの各尺度へ回答した。まず,崩壊形態については,片思いよりも交際していた関係の破局(離愛)で,拒絶者の立場については,拒絶者があいまいな場合よりも,相手に拒絶された場合に,それぞれ高い成長が見られた。愛着スタイルについては,関係性不安が低いほど高い成長が見られた。</p>
著者
多川 則子 吉田 俊和
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.126-138, 2006-11-30 (Released:2017-02-08)
被引用文献数
2

The present study examined the effects of daily communication on favorability in the perception of romantic relationships, with reference to Matsui's (1990) Developmental Stage Model of Romantic Love. The 484 participants were divided into three categories according to their current relational status: romantic relationships (154 undergraduates), one-sided non-mutual relationships (205 undergraduates), and regular heterosexual friendships (125 undergraduates). The latter two groups were included for comparison. Sternberg's (1997) Triangular Love Scale was used in order to measure favorability in participants' relationships. A separate scale was used to record information relating to daily communication. Participants were asked various questions regarding their relationships. Some examples included, 'Exchanging talk about daily events','Having a relationship-specific verbal style', and 'Perceiving the partner's reaction'. For the purposes of this study,'Exchanging talk about daily events' was discussed in terms of messages regarding content and relational meaning (Watzlawick, Bavelas, & Jackson, 1967). And 'Having a relationship-specific verbal style' was discussed in terms of relational culture (Wood, 1982). The results indicated that the all daily communicational behavior mentioned above influenced the level of favorability of romantic relationships.
著者
出口 拓彦 吉田 俊和
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.160-169, 2005-11-30 (Released:2017-02-07)
被引用文献数
8

The purpose of the present research was to investigate the relationships among normative consciousness, individual traits, and the frequency of private conversations, in the form of whispering, amongst students during a college lecture. In the first study, the relationships among normative consciousness against whispering, perspective taking, social skills, and the frequency of whispering were examined through a questionnaire survey consisting of 251 respondents. The results showed that students who whispered frequently indicated high perspective taking or social skills. In the second study, the relationships among the goals of college life, normative consciousness, and the frequency of whispering were focused upon. The relationships between whispering and feelings of adjustment were also investigated. A questionnaire survey was conducted, and 369 responses were obtained. The results showed the following. (1) Despite having a high normative consciousness, students who valued the development of interpersonal relationships during college life were more likely to have conversations irrelevant to the lecture. (2) There were positive relationships between whispering and feelings of interpersonal adjustment.
著者
山中 咲耶 吉田 俊和
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.21-31, 2011 (Released:2011-08-30)
参考文献数
33

他者の面前や重要な場面において,思ったように能力を発揮できないことは,しばしば“あがり”と表現される。本研究では,“あがり”を緩和する状況要因として,面前の他者からのフィードバックと,個人差を示すパーソナリティ要因として特性的共感性に着目し,これらの要因が主観的感情体験と課題遂行に与える影響について検討した。その結果,課題遂行時に面前の他者からポジティブなフィードバックを知覚した遂行者は,ネガティブなフィードバックを知覚した遂行者よりも,主観的な“あがり”意識が低くなった。さらに,特性的共感性が高い人の方が低い人と比較して,ネガティブなフィードバックを知覚した際,主観的“あがり”意識がより高くなった。また,主観的な“あがり”意識の高低とパフォーマンス中の失敗数には,中程度の相関が示された。以上より,他者からのポジティブなフィードバックは,“あがり”の緩和効果を持つ可能性があることが示された。また,“あがり”が他者からの評価への意識と関連すること,さらに他者への意識だけでなく,他者からどれだけ影響をうけるかという個人特性,すなわち特性的共感性と深く関連した現象であることが示唆された。
著者
中山 真 橋本 剛 吉田 俊和
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.61-75, 2017-07-01 (Released:2017-04-15)
参考文献数
57

本研究の目的は,恋愛関係崩壊後のストレス関連成長に影響を及ぼす個人差・状況要因として,愛着スタイルと崩壊形態の影響を検討することであった。参加者である大学生・短大生184名(男性86名,女性98名)は,過去5年以内の恋愛関係崩壊経験について想起し,成長感尺度,愛着スタイルの各尺度へ回答した。まず,崩壊形態については,片思いよりも交際していた関係の破局(離愛)で,拒絶者の立場については,拒絶者があいまいな場合よりも,相手に拒絶された場合に,それぞれ高い成長が見られた。愛着スタイルについては,関係性不安が低いほど高い成長が見られた。