著者
渡辺 幹彦
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.258-265, 2000

投球障害肩の病態を明らかにすることを目的として, 投球障害肩の関節鏡所見による病変の把握と投球障害を有する者と有さない者との投球動作の比較検討を行った.関節鏡所見では上方関節唇損傷を10名中9名, 棘上筋腱の関節面不全断裂を10名中7名に認めた.関節窩上方から前上方にかけての関節唇剥離に伴う関節唇複合体損傷が投球障害肩の特徴的関節鏡所見と考えられた.動作解析のstick-figureの比較ではコントロール群は加速期からボールリリースまで体幹の回旋によってボールを加速していたが, 障害肩群では加速期の途中で体幹の回旋が止まり, 上肢の動きでボールを加速していた.各関節の最大速度の達するまでの時間の比較検討では, 障害肩群では投球相の加速期において肩関節, 肘関節ともにコントロール群に比較して早く最大速度に達し, 逆に肘関節-手関節間の最大速度到達時間間隔は有意に延長していた.これは加速期において肩関節, 肘関節は減速しながら, ボールを加速する時間が長いことを意味し, 肩関節へのストレスとして働いていると考えられた.<BR>動作解析の結果と関節鏡所見の病変部位から投球障害肩の病態は, 投球動作の加速期における体幹と上肢の協調運動の破綻によって発生するストレスによる関節窩前上方の関節安定化機構の破綻であり, 結果的に上方関節唇損傷や腱板関節面不全断裂を導くと考えられた.

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投球障害肩の病態:―関節鏡所見および動作解析による検討― ✅コントロール群は加速期からボールリリースまで体幹の回旋によってボールを加速していたが, 障害肩群では加速期の途中で体幹の回旋が止まり, 上肢の動きでボールを加速していた. https://t.co/aroKVITmwq #CiNii https://t.co/cOrBs76VTq

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