- 著者
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石川 岳
- 出版者
- The Showa University Society
- 雑誌
- 昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
- 巻号頁・発行日
- vol.60, no.1, pp.104-119, 2000
3次元コンピユータ動作解折装置を用いてゴルフスイングを動作解析した.対象はプロゴルファー8名, アマチュアゴルファー10名である.方法はゴルフスイングを2方向からのビデオカメラ撮影を行い, それをもとに3次元コンピュータ動作解折を施行した.ゴルフスイングにおいては, 正確にかつ遠くヘボールを飛ばすといった, 2つの相反する目的を達成させなければならない.今回のプロとアマのゴルフスイングを動作解折し, 比較検討した結果は, アドレス地点とインパクト地点との重心の飛球線方向への移動距離が, プロ群平均9.5±4.5cm・初心者群平均3.2±6.0cmとプロの方が大きく体重移動をたくさん行っていた.また, 両肩甲帯と骨盤帯のバックスイング時の捻転もプロ群平均75±13.9°・アマ群平均61.4±10.2°とプロの方が有意に大きかった.これはパワーの蓄積と考えられる.また, 蓄積されたパワーを体重移動と共に下半身から肩甲帯へ, 肩甲帯から肘関節へ, 肘関節から手関節へと体幹から末梢へ運動連鎖を正しく行い, そのパワーをクラブヘッドに伝える事が重要である.そして, アドレス地点とインパクト地点の左膝角度は, プロではその差の平均は4.1±3.8°でアマは11.5±7.2°であった.インパクトの正確性を高める為には左膝の角度をアドレスと同等にする必要がある.また, インパクト時の肩甲帯の向きは, プロにおいて飛球線と平行に近いが, アマにおいてはその向きが一定せずボールに正対してインパクトを行っていなかった.これもインパクトの正確性を低くする原因であると考えられた.これらを実現させるには, 骨盤帯をしっかり固定する下肢筋力と, 肩甲帯を捻り上げる傍脊柱筋及び肩甲帯周囲筋の筋力増強が必要であり, 正しい運動連鎖と効率良く筋力を発揮できるタイミング作りが重要であると考えられた.