著者
吉村 季織 高柳 正夫
出版者
日本コンピュータ化学会
雑誌
Journal of Computer Chemistry, Japan (ISSN:13471767)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.149-158, 2012
被引用文献数
10

近年,化学データを数学的・統計的手法により解析する「ケモメトリクス」が頻繁に用いられるようになってきた.しかし,日本の大学の化学教育の場ではほとんど取り上げられていない.ケモメトリクスや数値計算の専用ソフトウェアを使うことなく,現在最も普及しているソフトウェアのひとつであるMicrosoft Excel(Excel)の基本機能を用いてケモメトリクス計算を行うことができれば,多くの教育・研究機関で役立つものと思われる.シリーズ5回目は,スペクトルなどの観測データの前処理として用いられる平滑化と数値微分を取り扱う.平滑化や数値微分の代表的手法として最小二乗法を基にしたSavitzky Golay法(SG法)が広く知られている.我々はSG法と同原理の平滑化・数値微分法をExcel上で実行する方法を開発したので報告する.まず,SG法の畳み込み係数に相当する係数を求めるワークシートを作成した.さらにGauss関数を例に平滑化・数値微分を実行するワークシートを作成した.平滑化および数値微分値が,Gauss関数及びその導関数とよく一致していることを確認した.本法の平滑化・数値微分係数と,SG法の畳み込み係数を比較し,両者が等しいことを示した.また,畳み込み係数表の誤りも見出すことができた.これらの結果によって,本方法が平滑化・数値微分法として有用であると示された.

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