著者
松下 秀介 高橋 克也 小野 洋
出版者
農業情報学会
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.195-206, 2005

本研究の課題は,果樹経営安定対策を対象に,温州みかん産地行動の視点からみた対策参加の経済性について数量的に検討することである.具体的には,対策下の産地行動を寡占市場における戦略的情報利用を前提とした非協力ゲームの枠組みにより表現し,限界収入・限界費用推定モデルの分析結果から産地行動の経済性を数量的に検討する.<br>分析の結果,明らかになった点は,以下の3点に要約できる.<br>1) 表年については,すべての産地にとって対策への参加が最適反応戦略となる.また,この場合,政策当局が「適正出荷量」をさらに縮小する必要があることが示された.<br>2) 裏年については,果樹経営安定対策への不参加が最適反応戦略となる産地が存在する.しかし,この産地行動の経済性ついては,対策不参加に起因する機会費用等を考慮する必要があることが示された.<br>3) 以上の結果,本対策が,生産段階において不可避の課題となっている豊作年(表年)の市場価格低迷(いわゆる豊作貧乏)への対応を目的とした2年を単位とした対策であることを考慮すると,温州みかん産地が本対策へ参加するという行動は合理的であると考えられる.<br>他方,果樹経営安定対策に参加しない場合には本対策以外の施策の対象とならないことなどの機会費用,すなわち対策不参加の社会的・政治的・制度的な外部性についても,産地の意思決定行動を分析するための重要な視点であることが指摘された.

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