- 著者
-
古口 真澄
- 出版者
- Hokkaido Sociological Association
- 雑誌
- 現代社会学研究 (ISSN:09151214)
- 巻号頁・発行日
- vol.25, pp.1-20, 2012
孫の養育責任を担う祖父母の事例を通し,「家」制度の持続・変容面がどのように表れているかについて,先駆的に考察を試みた。家族の段階的推移として家族縮小期,家族再構築期,家族再縮小期を設定しているが,分析の中核は,祖父母が主に孫の養育にかかわる家族再構築期である。<br> 家族縮小期では,(1)子世代(長男)の結婚年齢が早いと,親世代(祖父母)の方に,夫婦家族規範意識が強くみられていた。<br> 家族再構築期には,(2)明治民法の「家」制度的要素が,親権問題では払拭されている。(3)「直系家族」的であるという「縦」の系譜・「父子継承ライン」は,祖父母の中に現在でも根強く維持されている。その内実を精査すると,祖父(父)―息子―孫息子という継承ラインではなく,祖母(母)―息子,祖母―孫息子というように,祖母が認知する「子の可愛さ」と「継承意識」が二重になり直系家族の「連続性」が強化されていた。(4)「家」制度の持続面と変容面から,孫息子と孫娘の養育責任を担う父方祖母には,父系血統の存続へのこだわりが表出しやすいと捉えることができる。<br> 家族再縮小期では,(5)「1960年代生まれには,結婚時の核家族化,中途同居の傾向がみられ,なおかつ同居にもっとも強く働いているのは,夫の続柄(長男)と持家の相続という伝統的な要因である」ということが確認された。本稿からは,長男の転職による近居が,祖父母の「継承意識」を強めていたと考えられる。