著者
野波 寬 土屋 博樹 桜井 国俊
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.40-54, 2014
被引用文献数
4

正当性とは,公共政策に対する自他の決定権について,人々が何らかの理由・価値をもとに評価する承認可能性と定義される。本研究では沖縄県における在日米軍基地政策を取り上げ,これに深く関わる当事者と関与の浅い非当事者との間で,NIMBY問題における政策の決定権をめぐる多様なアクターの正当性とその規定因を検討した。正当性の規定因としては信頼性と法規性に焦点を当てた。当事者は精密な情報処理への動機づけが高いため,信頼性から正当性評価への影響は,評価対象のアクターごとに変化すると考えられる。これに対して非当事者は,各アクターの正当性を周辺的手がかりにもとづいて判断するため,一律的に信頼性と法規性が規定因になると仮定された。これらの仮説は支持されたが,その一方で非当事者ではNIMBY構造に関する情報の獲得により,自己利益の維持を目指して特定アクターの正当性を承認する戦略的思考の発生が指摘された。以上を踏まえ,公共政策をめぐるアクター間の合意形成を権利構造のフレームから検証する理論的視点について論じた。

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