- 著者
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アビナワント
島田 清司
齋藤 昇
- 出版者
- 日本家禽学会
- 雑誌
- 日本家禽学会誌
- 巻号頁・発行日
- vol.34, no.3, pp.158-168, 1997
- 被引用文献数
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19
非ステロイド性アロマターゼインヒビター(AI, Fadrozole)の鶏性腺分化に及ぼす影響を検討した。孵卵5日目に単冠白色レグホーン種受精卵にAI(0.1mg)を投与し,孵化した雛を10ヶ月齢まで育成した後,(1)性転換しなかった雌,(2)遺伝型は雌で表現型が雄に性転換した雌,(3)AI効果のなかった雄,の三群に分類した。(1)は正常卵巣•卵管の発育が左側にのみ観察され,(3)は正常精巣の発育が左右両側に観察された。(2)は遺伝的には雌(W特異的DNAプローブによるDNA性鑑別)であるが,表現型が雄性で性腺は正常精巣より小さいが両側に発育していた。この精巣には正常と同じように精細胞,セルトリ細胞,間質細胞などの存在が観察されたが精細管の内腔はほとんどないものが多く,精子数も極めて少なかった。また,卵管も発育しているが,正常と同様交尾行動を示した。性転換雌の血中テストステロン及びエストラジオール濃度は遺伝型及び表現型とも雄,あるいは雌の血中濃度の中間値であった。性腺P450<sub>C17ヒドロキシラーゼ</sub>mRNA量は,遺伝型雄の方が遺伝型•表現型共に雌や性転換雌に比べて高かった。一方,性腺P450<sub>アロマターゼ</sub>mRNA量は,遺伝型•表現型共に雌の方が性転換雌や遺伝型雄よりも高かった。この結果から,用いたAIによって,性転換鶏のP450<sub>アロマターゼ</sub>mRNAの発現低下,エストラジオール濃度の低下が起こったが,P450<sub>C17ヒドロキシラーゼ</sub>の遺伝子発現と血中テストステロン濃度が正常雄に比べて低いため,性腺が正常雄の性腺サイズまでには十分に発育しなかったと考えられる。