著者
島田 清司 H.Loyce NELDON Thomas I. KOIKE
出版者
Japan Poultry Science Association
雑誌
日本家禽学会誌 (ISSN:00290254)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.214-219, 1991-07-25 (Released:2008-11-12)
参考文献数
14
被引用文献数
2 2

ニワトリにおける下垂体後葉ホルモンの浸透圧調節作用を検討する一環として,本研究では産卵鶏を使用し,低張および高張食塩水を投与して血中アルギニンバソトシン(AVT)およびメソトシン(MT)濃度を経時的に測定した。単冠白色レグホーン種(1年鶏体重1.35~1.65kg)を個別ケージに入れ飼料•飲水は自由摂取で飼育した。クラッチ数は約5卵を示し,クラッチ内放卵後0~5時間のものを実験に使用した。ニワトリを上向けにして保定板に固定し局所麻酔条件下で上腕の動脈および静脈にカテーテルを装着し,それぞれ血液採取,血圧測定および食塩水投与のために使用した。投与前の血液サンプルを採取してから0.1MNaCl溶液を0.5ml/min/kgの速度で30分間静脈に注入した。続いて同じ速度で1.0MNaCl溶液を30分間注入した。血液サンプルを食塩水投与開始20分後から10分毎に採取し,血中AVTとMT濃度,浸透圧,ヘマトクリット値,血中NaおよびK濃度,血圧,心拍数を測定した。0.1MNaCl溶液注入に対しどの指標値にも著しい変化はみられなかったが1.0MNaCl溶液注入に対しては血中AVT濃度およびNa濃度と浸透圧に著しい増加がみられた。これとは逆に,血中MT濃度は注入終了時に,ヘマトクリット値は注入開始後から著しく減少した。この結果から,産卵鶏において高張食塩水投与による浸透圧増加は著しいAVT分泌を促進させ,反対にMT分泌を抑制する作用があると思われた。AVTは浸透圧低下作用に,MTは浸透圧上昇作用に関係することが示唆された。
著者
アビナワント 島田 清司 齋藤 昇
出版者
日本家禽学会
雑誌
日本家禽学会誌
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.158-168, 1997
被引用文献数
19

非ステロイド性アロマターゼインヒビター(AI, Fadrozole)の鶏性腺分化に及ぼす影響を検討した。孵卵5日目に単冠白色レグホーン種受精卵にAI(0.1mg)を投与し,孵化した雛を10ヶ月齢まで育成した後,(1)性転換しなかった雌,(2)遺伝型は雌で表現型が雄に性転換した雌,(3)AI効果のなかった雄,の三群に分類した。(1)は正常卵巣&bull;卵管の発育が左側にのみ観察され,(3)は正常精巣の発育が左右両側に観察された。(2)は遺伝的には雌(W特異的DNAプローブによるDNA性鑑別)であるが,表現型が雄性で性腺は正常精巣より小さいが両側に発育していた。この精巣には正常と同じように精細胞,セルトリ細胞,間質細胞などの存在が観察されたが精細管の内腔はほとんどないものが多く,精子数も極めて少なかった。また,卵管も発育しているが,正常と同様交尾行動を示した。性転換雌の血中テストステロン及びエストラジオール濃度は遺伝型及び表現型とも雄,あるいは雌の血中濃度の中間値であった。性腺P450<sub>C17ヒドロキシラーゼ</sub>mRNA量は,遺伝型雄の方が遺伝型&bull;表現型共に雌や性転換雌に比べて高かった。一方,性腺P450<sub>アロマターゼ</sub>mRNA量は,遺伝型&bull;表現型共に雌の方が性転換雌や遺伝型雄よりも高かった。この結果から,用いたAIによって,性転換鶏のP450<sub>アロマターゼ</sub>mRNAの発現低下,エストラジオール濃度の低下が起こったが,P450<sub>C17ヒドロキシラーゼ</sub>の遺伝子発現と血中テストステロン濃度が正常雄に比べて低いため,性腺が正常雄の性腺サイズまでには十分に発育しなかったと考えられる。
著者
斉藤 昇 島田 清司 塚田 光
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

鳥類の水分代謝機構の基礎的な解明と軟便などの家禽産業での問題点に対する解決策への応用として本研究を始めた。初めに、鳥類の抗利尿ホルモンであるアルギニンバソトシン(AVT)の遺伝子発現の機構を明らかにするために、急速な塩水投与を行い転写因子等の遺伝子発現等を解析した。その結果、AVT mRNAレベルは塩水投与後3時間に意な増加を示した。他に、c-fos mRNAレベルなども3時間後に増加した。それに対し、転写因子TonEBP mRNAレベルは、塩水投与後1時間に有意な増加を示した。この結果をもとに、TonEBPのアンチセンスを作成し、塩水投与前に前処理として脳室内に投与したところ、視床下部AVTの遺伝子発現は増加しなかった。しかし、c-fosの遺伝子発現には影響しなかった。この結果から、TonEBPがAVTの遺伝子発現調節に重要な転写調節因子であることが明らかになった。また、このようなAVT等の遺伝子発現機構が、塩水投与によりブロイラーでは影響が見られなかった。しがたって、ブロイラーで軟便が生じ易い理由が、AVTの遺伝子発現と関係がある可能性が示唆された。次に、腎臓における水の再吸収機構を解明するために、アクアポリンの遺伝子発現を調べた。AQP1、AQP2、AQP3、AQP4、AQP7、AQP9の6つのタイプで腎臓における発現が観察された。さらに、塩水投与により血中浸透圧が上昇した時における遺伝子発現の変化を調べたところ、AQP1、AQP2、AQP3のタイプのみが上昇し、他のタイプは、変化が見られないか減少した。したがって、ニワトリの腎臓における水の再吸収には、AQP1、AQP2、AQP3が主に関与していることが明らかになった。