著者
菊地 一郎
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.31, no.9, pp.555-565, 1958

(1) 工業の地域構造とはその地区工業間の動的な相互関係を包括する概念であると定義し,江東工業の地域構造の解明を試みた.研究方法として2段の分析方法をとつた.第1段は地域分類であり,第2段は工業の地域的発展過程の分析である.<br> (2) 地域分類の手段としてポテンシャル概念の導入による工業集積ポテンシャルの式を用い,生産力集積圏を業種別に求めることによつて江東地域を類型地区に分けた.それらは城東地区,本所深川地区および向島地区で,それぞれ重化学工,軽工業および雑工業部門によつて特色づけられている.<br> (3) 明治維新までの江東地域の土地利用は本所深川地区が町屋として,城東地区が農業地としてはつきり2分されていた.<br> (4) 本所深川地区では維新以後,かつて地積の地部分を占めていた寺社や武家屋敷が商工業地として利用される様になつた.そしてそれぞれ江東3大橋に通ずる道路に沿つて繁栄していた両国深川森下および門前仲町の商業地を中心として家内工業がさかんに行われてきた.またその頃になると問屋資本によるマニュファクチァーも恵まれた立地条件のもとに発達し,屈折を経ながら資本主義的生産による軽工業への道を歩み現代におよんでいる.<br> (5) 城東地区では,本所深川地区で生成された労働力が新たな産業資本による近代工業とくに重化学工業導入の基礎となり,この地区に存在した広大で安価な農地が工業用地としてその立地に重要な役割を果した.<br> (6) 向島地区も農業地から次第に工二業地に変質していつたが,その理由の1つは関東大震災を契機に一層工業化した本所深川地区および城東地区への下級労働者や下請零細工場が集まつてきたことによる.こうして今日の江東工業地域の地域構造の基盤がここに形成されるにいたつた.

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