著者
小疇 尚
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.179-199, 1965
被引用文献数
3 5

大雪火山は,洪積世初期から沖積世にかけて形成された。そのため,各山峰の噴出時代の違い,さらに地形や積雪量の違いによって植物の垂直分布は,場所による差が大きい.一般的にいって森林限界は1,200~1,800mの間にあり,ハイマツ限界は1,650~2,100mで,尾根すじや風上側山腹斜面では低く,積雪の多い谷間や風下側の山腹斜面では高くなる傾向がある.しかし特殊な場合を除けば1,850mである.構造土はハイマツ限界より下方め斜面ではみられないから,ハイマツ限界をもって構造土限界とすることができる. 123カ所の構造土を調査して次の結果を得た. (1) 構造土の約8割はハイマツ限界以上の風上側頂部斜面に発達し,他は凸地,平坦地等にみられる. (2) 構造土は,それが発達する場所の自然条件の違いによって,大きさ,形態が異なり,土壌水分の多いところほど大きく,形も整っている. (3) 植被構造土は,凍結による地表面の収縮の結果生ずる凍結われ目がきっかけとなり,その後は植生部分の拡張と,不可逆的に進行する地表の収縮および不等凍上によっ'て,次の順に変化する.土質多角形土(凍結われ目)→凍結はげを持つ植被多角形土(凍結溝)→凍結坊主. (4) 礫質構造土は,上記の凍結われ目に礫が落ち込んで原形ができ,その後は不可逆的に幅を拡げて行くわれ目の中に,不等凍上と不等沈下のため不安定になった地表の礫が徐々に集積して,形を整える.礫は凍結破砕によって基盤から生成され,反復凍結によって地表にもたらされる. (5) 階状土は融凍流土が植生または礫によって阻止されたために生じたものである.前者の揚合が植被階状土,後者の場合が礫質階状土である. (6) 外輪山上には,過去の氷期に形成されたと考えられる化石構造土があるが,現在は崩壊しつつある.

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