- 著者
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阿部 和俊
- 出版者
- 公益社団法人 日本地理学会
- 雑誌
- 地理学評論 (ISSN:02896001)
- 巻号頁・発行日
- vol.57, no.1, pp.43-67, 1984
- 被引用文献数
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本稿の目的はわが国の主要都市における本社,支所機能について,歴史的経緯をふまえつつ現況を中心に述べることにある.考察した結果は,以下の通りである.<br> まず第一に,都市におけるこの機能の集積をみると, 1907年にはかつての6大都市(東京,大阪,名古屋,横浜,京都,神戸)に多くの集積がみられ,さらに地方の都市にも相当数の本社の存在が認められた.しかし,次第に地方都市の本社は減少し,かわって大都市,とくに東京の本社が増加し続ける.この傾向は基本的に現在も変わっていない.<br> 横浜,京都,神戸における集積は1935年以降,とくに戦後になってあまり伸びず,逆に1935年に成長の兆しをみせ始めていた地方の中心的な都市での集積が急激に伸長し, 1960年以後完全に逆転した.また,新潟,静岡,千葉,金沢,富山,岡山といった地方都市での増加も著しい.第1表からみてもこの傾向は今後続くであろう.しかし,東京,大阪,名古屋では1980年においては,対象企業数が増加しなかったためか,その集積は停滞気味であった。地方の中心的な都市がわずかとはいえ増加していることと対照的で,今後これがどのように推移するかを注目したい.<br> これら本社,支所の業種を検討すると,初期においては鉄鋼諸機械,化学・ゴム・窯業部門は少なかったが, 1935年を境にこの部門は増加する.とくに, 1960年以後はこの傾向が一層強まる.とりわけ鉄鋼諸機械の支所は1935年から増加し始め,第二次大戦後は最も重要な業種となった.その集積は当初,東京,大阪,名古屋の三大都市に多くみられたが,次第に地方の中心的な都市においても増加してきている.建設業の本社,支所が戦後に増加するのも注目しておきたい.もっとも,支所の延べ数においては,金融・保険がその性格上圧倒的に多い.横浜,京都,神戸と上述の新潟以下の諸都市では,これら機能の集積が多い割に鉄鋼諸機械などの支所が少ないことも重要である.<br> 戦後を対象に本社機能の動向をみると,東京の重要性がますます高くなっていることが指摘できる.とりわけ大阪系企業においては,商社にみられるように発祥の地である大阪よりも東京の機能を強化するようになってきており,この点における大阪の衰退傾向が感じられる.大阪が西日本の中心的地位を保ち続けうるか,あるいはもう一ランク下位階層の広域中心的性格の方をより強めていくのかが,今後大いに注目されるところである.