著者
岡崎 進 住谷 秀一 工藤 和夫
出版者
公益社団法人 石油学会
雑誌
石油学会誌 (ISSN:05824664)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.159-166, 1978

前報<sup>1)</sup>において天然ゼオライトの一種であるクリノプチオライトを一定組成比のNaOHとNaClとからなる混合水溶液中に浸せきし, 沸点付近で加熱するという簡単な処理により Faujasite が得られることを見いだした。この Faujasite はいわゆるXおよびY型の合成ゼオライトの主成分であり, したがって上記の天然品の処理生成物は適当な金属イオンで交換すれば合成XまたはY型ゼオライトと同様に触媒として使用できる可能性がある。Faujasite の生成について著者らの発表後, Robson らがアメリカ特許 (U. S. 3,733,390, 出願 1971-7-1, 成立 1973-5-15)として出願した内容においても認められているが, 原料が安価で操作も簡易なことから実用的にかなり有利なことが期待される。<br>そこで, 前報<sup>1)</sup>に引き続いて, 本報ではイオン交換が実際にどの程度可能であり, またイオン交換したものがどの程度の触媒活性を示し得るかを検討した。そのため, まず前報の処理条件およびその結果の再確認をかね, 処理水溶液の組成を変え, 生成物の形態を調べ, <b>Table 1</b>の(2)ないし(4)のような条件下に Faujasite が得られることを確かめ (<b>Fig. 1</b>), 今後(2)の組成, すなわち天然ゼオライト1gに対し, NaOH, NaCl, H<sub>2</sub>O各0.53, 0.44, 2.58gで得られる生成物を標準試料ときめた。初めにこの試料を14種の金属イオンおよびアンモニウムイオンで常温でイオン交換したところ, 交換度は60~87%に達し, 本試料には残存無水ケイ酸およびそのほかの不純物を含有するのにかかわらず合成Yゼオライト<sup>4)</sup>とほぼ同程度の交換活性を持つことを認めた (<b>Table 3</b>)。このようにして得られたイオン交換後の試料の固体酸性を測定した結果 (<b>Table 4</b>) H<sub>0</sub>〓+3.3酸点の密度 (mmol/m<sup>2</sup>) はCe型を除き, 交換イオンの電気陰性度と直線的関係にある (<b>Fig. 2</b>) ことがわかった。固体酸性の大きいLa交換体を代表例としてとりあげ, ピリジン吸着後のIR吸収を調べた結果 (<b>Fig. 3</b>), 吸着水の分極によるB酸点のほか, 露出した金属イオンに基づく, いわゆる pseudo L 酸点<sup>6)</sup>が存在した。これは合成XまたY型ゼオライトのイオン交換体<sup>4)~6)</sup>においても認められた事実である。引続き, 比較的弱い酸点によっても促進される2-プロパノールの脱水反応, とかなり強い酸点を必要とするクメン分解をテスト反応として種々の金属イオン交換品の触媒活性を調べた。両反応に対する触媒活性はともに, 固体酸性と同様に, 金属イオンの電気陰性度と関連する (<b>Fig. 4</b>)。したがって, 両反応に対する触媒活性間にも直線的比例関係 (<b>Fig. 5</b>) が認められる。さらにLaイオンで交換したY型ゼオライトと, この処理により変成した Faujasite をLaイオン交換した資料の両者について触媒活性を比較した。この結果変成ゼオライトのLa交換体は合成ゼオライトのLa交換体に比べやや活性が低くなる。低くなる原因は, La交換量が合成ゼオライトに比べ少ないこと, すなわち本試料単位重量あたりのLa保持量が少ないことによると考えられる。実際にLa交換率すなわちLa保持量と固体酸量 (<b>Fig. 6</b>) および触媒活性 (<b>Fig. 7</b>) の間に直線関係が存在する。<br>以上のように前報<sup>1)</sup>の処理により天然ゼオライトから比較的簡単な処理により得られる Faujasite は合成ゼオライトに匹敵するイオン交換活性を示し, さらにこのようにして得られたイオン交換試料はかなり量の不純分を持つのにかかわらず合成ゼオライトからの相当試料に近い触媒活性を示すことがわかった。

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