著者
吉井 範行 三浦 伸一 岡崎 進
出版者
日本高圧力学会
雑誌
高圧力の科学と技術 (ISSN:0917639X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.275-282, 2000-11-20 (Released:2009-08-07)
参考文献数
64

In the recent decade, many computational studies as well as physicochemical experiments such as neutron diffraction and NMR spectroscopic measurements have actively been done in order to clarify the structure and dynamics of supercritical water and its solutions. In particular, studies on hydrogen bonding in supercritical water have been attracting much interest from physical chemists. Long-ranged structure and the relevant collective motion have also been investigated in detail. For supercritical solutions, thermodynamic properties such as solubility and the microscopic structure of ion hydration have been studied. Here, recent progress in computational studies on the structure and dynamics of the fluids is reviewed.
著者
岡崎 進
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.86, no.11, pp.988-992, 2017-11-10 (Released:2019-09-26)
参考文献数
4

分子動力学(MD)シミュレーションでは,研究対象となる現実の物質と同じ振る舞いをする原子や分子で構成された系を,計算機の中に作り出します.そして,実際に構成分子の運動方程式を解くことにより,それらをある温度,圧力などの下で時間発展させ,熱平衡状態を実現させたうえで静的,動的性質を解析し,物質の振る舞いを原子,分子レベルで研究しようとするものです.つまり,計算機による物質の観察,一種の実験に相当します.
著者
岡崎 進 小又 基彰
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1972, no.9, pp.1615-1621, 1972-09-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
11
被引用文献数
3

金属フッ化物の脱ハロゲン化水素反応に対する触媒活性を比較検討する目的で,CH3CF3の気相連続接触脱フッ化水素反応を行なった。初めに対比として無触媒反応を行なったところ,反応は750℃以上の高温で初めて進行し,一次反応となり,その速度定数はk=1.63 × 1010 exp (-53800/RT)となった。試みた十数種の金属フッ化物中,アルミニウム,鉄,マグネシウムのフッ化物が活性を示し,これらを用いると530℃程度の低温でも十分に反応が進行するようになる。これら活性金属フッ化物はいずれも固体酸性を呈し,不活性金属フッ化物が固体酸性を示さなかったことと対照的である。なお,触媒寿命を考慮する場合,塩基性フッ化アルミニウムはさらに有効な触媒であり,これによる接触反応を解析した結果,その反応は表面反応律速で,活性化エネルギーは28.3kcal/molになった。また吸着熱は12.9kcal/molと算出された。
著者
岡崎 進 住谷 秀一 工藤 和夫
出版者
公益社団法人 石油学会
雑誌
石油学会誌 (ISSN:05824664)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.159-166, 1978

前報<sup>1)</sup>において天然ゼオライトの一種であるクリノプチオライトを一定組成比のNaOHとNaClとからなる混合水溶液中に浸せきし, 沸点付近で加熱するという簡単な処理により Faujasite が得られることを見いだした。この Faujasite はいわゆるXおよびY型の合成ゼオライトの主成分であり, したがって上記の天然品の処理生成物は適当な金属イオンで交換すれば合成XまたはY型ゼオライトと同様に触媒として使用できる可能性がある。Faujasite の生成について著者らの発表後, Robson らがアメリカ特許 (U. S. 3,733,390, 出願 1971-7-1, 成立 1973-5-15)として出願した内容においても認められているが, 原料が安価で操作も簡易なことから実用的にかなり有利なことが期待される。<br>そこで, 前報<sup>1)</sup>に引き続いて, 本報ではイオン交換が実際にどの程度可能であり, またイオン交換したものがどの程度の触媒活性を示し得るかを検討した。そのため, まず前報の処理条件およびその結果の再確認をかね, 処理水溶液の組成を変え, 生成物の形態を調べ, <b>Table 1</b>の(2)ないし(4)のような条件下に Faujasite が得られることを確かめ (<b>Fig. 1</b>), 今後(2)の組成, すなわち天然ゼオライト1gに対し, NaOH, NaCl, H<sub>2</sub>O各0.53, 0.44, 2.58gで得られる生成物を標準試料ときめた。初めにこの試料を14種の金属イオンおよびアンモニウムイオンで常温でイオン交換したところ, 交換度は60~87%に達し, 本試料には残存無水ケイ酸およびそのほかの不純物を含有するのにかかわらず合成Yゼオライト<sup>4)</sup>とほぼ同程度の交換活性を持つことを認めた (<b>Table 3</b>)。このようにして得られたイオン交換後の試料の固体酸性を測定した結果 (<b>Table 4</b>) H<sub>0</sub>〓+3.3酸点の密度 (mmol/m<sup>2</sup>) はCe型を除き, 交換イオンの電気陰性度と直線的関係にある (<b>Fig. 2</b>) ことがわかった。固体酸性の大きいLa交換体を代表例としてとりあげ, ピリジン吸着後のIR吸収を調べた結果 (<b>Fig. 3</b>), 吸着水の分極によるB酸点のほか, 露出した金属イオンに基づく, いわゆる pseudo L 酸点<sup>6)</sup>が存在した。これは合成XまたY型ゼオライトのイオン交換体<sup>4)~6)</sup>においても認められた事実である。引続き, 比較的弱い酸点によっても促進される2-プロパノールの脱水反応, とかなり強い酸点を必要とするクメン分解をテスト反応として種々の金属イオン交換品の触媒活性を調べた。両反応に対する触媒活性はともに, 固体酸性と同様に, 金属イオンの電気陰性度と関連する (<b>Fig. 4</b>)。したがって, 両反応に対する触媒活性間にも直線的比例関係 (<b>Fig. 5</b>) が認められる。さらにLaイオンで交換したY型ゼオライトと, この処理により変成した Faujasite をLaイオン交換した資料の両者について触媒活性を比較した。この結果変成ゼオライトのLa交換体は合成ゼオライトのLa交換体に比べやや活性が低くなる。低くなる原因は, La交換量が合成ゼオライトに比べ少ないこと, すなわち本試料単位重量あたりのLa保持量が少ないことによると考えられる。実際にLa交換率すなわちLa保持量と固体酸量 (<b>Fig. 6</b>) および触媒活性 (<b>Fig. 7</b>) の間に直線関係が存在する。<br>以上のように前報<sup>1)</sup>の処理により天然ゼオライトから比較的簡単な処理により得られる Faujasite は合成ゼオライトに匹敵するイオン交換活性を示し, さらにこのようにして得られたイオン交換試料はかなり量の不純分を持つのにかかわらず合成ゼオライトからの相当試料に近い触媒活性を示すことがわかった。