著者
上田 耕造 松井 久次 MALHOTORA Ripudaman 野村 正勝
出版者
公益社団法人 石油学会
雑誌
石油学会誌 (ISSN:05824664)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.62-70, 1991
被引用文献数
3

石油精製の過程で副生する減圧残さ等の重質油を熱分解や水素化分解により使いやすい燃料に変換する接術開発において, 反応物の化学組成に関する情報は重要である。減圧残さは分子量の大きい複雑な炭化水素の集合体であり, 原産地が違えばその化学組成が大幅に違い, 熱分解や水素化分解に対する反応特性も異なったものとなる。減圧残さをキャラクタライズする方法としては組成分析法やNMRによる平均構造解析法があるが, プロセスの過程における化学組成の変動や得られる生成物の性状を理解するためには原料油の複雑なマトリックスの中から反応により大きく影響をうける化合物群を抽出し, その割合や同族体の炭素数分布といった化学組成について詳細で定量的な情報が必要である。石炭液化油についてはHPLC/FI-MSを組み合せた方法を用いてこれまで相当詳しく調べられているが, 石油系重質油については非常に複雑な化学組成をもつため研究例が少ない。HPLC/FI-MSによる分析で最も詳細な研究は Bodusznski1) が vacuum gas oil (650~1,000°F) を蒸留によりせまい範囲の留分にカットし, その各留分を更にHPLCで分離した後, FI-MSの測定により化合物群を同定したものがある。また減圧残さ (>1,000°F) については, 飽和成分2)やペンタン可溶分1)で試みた例があるが全成分についての詳細な分析例は見当たらない。<br>我々は既報3)で述べたHPLC/FI-MSによるコールタールの化学組成のルーチン分析システムをより複雑な化学組成をもつ減圧残さに適用できるようにHPLCの分離スキームの改良を行い, アラビア原油の減圧残さを対象に全成分の分析を行った。HPLCの分離では試料油をシリカゲルカラムにより予備的に4フラクションに極性分離した後, 飽和成分と芳香族成分はさらにシアノカラムで, 極性成分はイオン交換樹脂により22のサブフラクションに分離した。これらサブフラクションのFI-MSデータはMW (分子量)=14<i>n+U</i> (<i>n, U</i>: 整数, -11≦<i>U</i>≦2) として14カラムをもつパターンテーブルに整理した。同族化合物群がグルーピングされているパターンテーブルをもとに試料油の含有成分を帰属可能な75の化合物群に分類した。化合物群への帰属にはFT-IR, NMRおよびUVを補助的に使用した。本方法の有用性を確認するため, パターンテーブルに示されている各化合物群の分子量分布データから試料油中の各元素の存在割合 (wt%), %C<sub>ar</sub>, %H<sub>ar</sub>, 数平均分子量を計算し, 元素分析値や<sup>13</sup>C-NMRより求めたそれらの実測値を比較した。硫黄を除く各元素の含有割合および数平均分子量の計算値と実測値が比較的よく一致することがわかった。硫黄の量が少なかったのは試料油中に含まれている硫黄化合物をチオヘンタイプのみに注目したためであり, また%C<sub>ar</sub>値が計算値と比較して低いのは, 試料中にFI-MSによる分析が不可能な不揮発性の多環芳香族クラスターが含まれることによると推察される。
著者
安保 正一 山下 弘巳 河崎 真一 市橋 祐一
出版者
The Japan Petroleum Institute
雑誌
石油学会誌 (ISSN:05824664)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.300-310, 1995-09-01 (Released:2008-10-15)
参考文献数
32
被引用文献数
3 3

高活性な酸化チタン系触媒を二酸化炭素と水の存在下で光照射すると, 二酸化炭素の還元固定化反応が進行する。粉末酸化チタンやゾル-ゲル法調製Ti/Si複合酸化物を光触媒とした場合には主にメタンが, イオン交換やCVD法調製固定化酸化チタン (担体: 多孔性ガラス, ゼオライト) ではメタン, メタノールおよび一酸化炭素が生成する。反応収率は, 触媒や担体の種類, (水/二酸化炭素) 比, 反応温度などにより著しく変化する。UV, XAFS, ESR, FT-IR, XPSおよびホトルミネッセンスなどの手法で, 触媒の構造と励起状態のキャラクタリゼーションを行ったところ, 高活性な高分散酸化チタン触媒の活性種は孤立状態で存在する四配位酸化チタン種の電荷移動型励起種 (Ti3+-O-)*であることが分かった。また, 反応中間体の検討などから, 酸化チタン系触媒を光触媒とする二酸化炭素の水による固定化は, 二酸化炭素から一酸化炭素さらには炭素ラジカルの生成を経由する反応であると考えられる。
著者
藤原 康雄 吉田 栄一 野崎 信義 長沢 隆夫
出版者
The Japan Petroleum Institute
雑誌
石油学会誌 (ISSN:05824664)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.47-53, 1985-01-01 (Released:2008-10-15)
参考文献数
8

MTBEを高オクタン価基材としてガソリンに調合する場合, MTBE混合の影響が二, 三の実用性能にどのように現れるかを検討した。ターボチャージャ塔載および非塔載の自動車において走行オクタン価と実験室オクタン価(RON, MONおよびDON) との関係, ならびにエンジンの暖機性評価の尺度であるウォームアップ時間およびスタンブル消失時間とガソリンの70°C留出量との関係はいずれもMTBE混合の有無にかかわらず同一の関係式で整理できる。またガソリン中に存在するMTBEは酸化触媒である第二銅イオンに対して金属不活性剤として作用し, ガソリンの酸化安定性 (誘導期間) を延長させる効果がある。
著者
持田 勲 光来 要三 坂西 欣也 藤堂 義夫 大山 隆
出版者
公益社団法人 石油学会
雑誌
石油学会誌 (ISSN:05824664)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.101-106, 1991

比較的パラフィニックなFCCデカント油 (FCC-DO) との共炭化において, 低硫黄減圧残油 (LSVR) を熱処理することによってボトムモザイクコークスの消去を試みた。その結果420°C(1~5h) という非常に限られた条件でLSVRを熱処理するとモザイクコークスが消去できた。熱処理によってLSVR中のアスファルテン分が分解され, ベンゼン不溶分やメソフェーズをわずかに生成するのみで, 芳香族性を向上させることができた。こうした熱改質は, アスファルテン成分の炭化時の熱安定性とFCC-DOへの溶解性を向上し, 炭化初期におけるメソフェーズの相分離が抑制できるため底部モザイクが生成しないのであろう。
著者
小沢 泉太郎 鳥谷 淳 荻野 義定
出版者
The Japan Petroleum Institute
雑誌
石油学会誌 (ISSN:05824664)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.328-334, 1988-07-01 (Released:2008-10-15)
参考文献数
22

重質油反応の経時変化測定を容易にするため, 簡易ミクロボンブ反応器を考案し, 450°C, 水素初圧7.9MPa, 反応時間9-180minの条件で, エイコサンの水素化分解反応の検討に供した。生成物は, 主に炭素数1-19のパラフィンと炭素数2-19のオレフィンであった。これら生成物の初期分布には規則性があり, 反応がC20→Cj+C20-j(j=1-10) で始まり, j=1がもっとも生じにくく, j=2がこれに次ぎ, j≧3になると, ほぼ等率で分解することがわかった。パラフィンとオレフィンの初期生成率の相互関係も, 上記分解パターンに矛盾しないものであった。液体スズ触媒は, 初期分解パターンにほとんど変化を与えないが, 分解速度を抑制する弱い負触媒作用をすることがわかった。
著者
加藤 覚 川崎 順二郎
出版者
The Japan Petroleum Institute
雑誌
石油学会誌 (ISSN:05824664)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.1-6, 1987-01-01 (Released:2008-10-15)
参考文献数
5
被引用文献数
5 5

モデル改質ガソリンおよび灯油を炭化水素原料, イソオクタンを溶媒として, 乳化型液膜による炭化水素の回分抽出実験をかくはん槽を用いて行った。その結果, 改質ガソリン中の芳香族成分に対する最大収率として85%, n-ヘキサンを基準成分とする選択度として14という高い値が得られた。また接触操作開始時の選択度と平面水膜を想定して得られる理論選択度との間に良い相関関係が得られ, 改質ガソリンに対するその関係とナフサに対するその関係は良く一致した。一方, 灯油中の芳香族炭化水素の透過速度はナフサあるいはガソリン中のそれに比べて遅いが, 接触後20分における収率として70%という高い値が得られた。
著者
佐藤 時幸
出版者
The Japan Petroleum Institute
雑誌
石油学会誌 (ISSN:05824664)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.173-181, 2000-05-01 (Released:2008-10-15)
参考文献数
23
被引用文献数
1 1

近年, 時代対比精度が飛躍的に向上した石灰質ナンノ化石と, その生態学的特徴から古環境解析に重要な有孔虫化石に基づいて, 石油鉱床が形成されるまでの構造発達史を検討した。日本海の成立は, 門前階最上部の砂れき層より発見された石灰質ナンノ化石群集から前期中新世末のNN4帯であり, 最も古く見積もって1820万年前までさかのぼる。近年, 積極的に探鉱が行われている新潟地域のグリーンタフ火山岩貯留岩は, この日本海形成前後に形成されたが, 同様に油ガス田の貯留岩となっている秋田地域の玄武岩類は, 含まれる石灰質ナンノ化石に基づくと新潟地域の火山岩貯留岩より若く, 日本列島の中国大陸からの分離と関連した火山活動と結論される。秋田地域の油田構造の完成は海岸線沿いに位置する北由利衝上断層の形成によるもので, その時期は石灰質ナンノ化石から172万年前頃で, それと同時に石油根源岩が熟成レベルへ到達, 油田構造へ石油が移動した。一方, 石油根源岩は一般に女川階, または寺泊階でその能力が高いことが知られていたが, 有孔虫化石から当時の古海洋を復元した結果, 当時の新潟たい積盆地は強い還元環境を示すことが明らかになったほか, 復元された古海洋からすると, 石油根源岩となりうる有機物のたい積は長岡市西方の南北に位置する地域にたい積したと推定される。
著者
中村 宗和 赤沼 耕一 大塚 啓一 鈴木 羚至
出版者
The Japan Petroleum Institute
雑誌
石油学会誌 (ISSN:05824664)
巻号頁・発行日
vol.16, no.7, pp.572-577, 1973-07-01 (Released:2009-01-30)
参考文献数
15

The dehydrogenation of 2, 3-dimethylbutane, 3-methylpentane and methylcyclopentane over Pt-C catalyst was studied at low conversion levels and temperatures ranging from 400 to 480°C, under the hydrogen atmospheric pressure.The dehydrogenated products included all possible alkenes and cycloalkenes possessing the same skeletal structures as raw materials and were approximately in thermodynamic equilibrium at conversions as low as 8%. The compositions of these product mixtures observed at 460°C were: 43% 2, 3-dimethyl-1-butene and 57% 2, 3-dimethyl-2-butene; 9% 3-methyl-1-pentene, 11% 2-ethyl-1-butene, 31% 3-methyl-cis-2-pentene and 49% 3-methyl-trans-2-pentene; 68% 1-methylcyclopentene, 20% 3-methylcyclopentene, 10% 4-methylcyclopentene and 2% methylenecyclopentane in each skeletal hydrocarbons, respectively.At the initial step of the reaction, however, it was shown that 2, 3-dimethyl-1-butene, 3-methyl-1-pentene and 3-methylcyclopentene were formed beyond their thermodynamic equilibrium compositions, respectively.It was found that the rate of the dehydrogenation was influenced by the ratio of hydrogen to hydrocarbon and that in the absence of hydrogen the reaction did not proceed at all. The reaction rate increased with the molar ratios, being constant at the molar ratio of one and above.These results suggested that the hydrogen played an important role on the dehydrogenation mechanism over Pt catalyst used in the present study.
著者
永瀬 紀生
出版者
The Japan Petroleum Institute
雑誌
石油学会誌 (ISSN:05824664)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.101-105, 1971-02-25 (Released:2009-01-30)
参考文献数
6
被引用文献数
1 1

Relationship between the adsorption characteristics of synthetic zeolites and a number of water adsorption-desorption cycles was investigated with a specially designed test apparatus illustrated in the text.The Na-A, (Na, K)-A and faujasite type synthetic zeolites were stable in their crystal structure at a temperature of 700°C for more than several days under the atmospheric condition. However, water adsorption rate of (Na, K)-A type zeolite after repeated several tens of water adsorption (at the room temperature)-thermal desorption cycles (below 300°C) in the apparatus was considerably decreased with increasing the number of cycles, scarcely adsorbing methanol. In the case of Na-A type zeolite after the same treatment, the propylene adsorption rate was decreased, but the decrease of water adsorption rate was not observed. The crystal structures of both resultant zeolites were preserved, as confirmed by X-ray diffraction.From these results, it is believed that the pore size of zeolite shrinked, these phenomena being attributable to the influence of high temperature water vapor that was generated from the zeolite during the thermal desorption process.Faujasite type synthetic zeolite, treated in the same apparatus under the same conditions, was investigated for adsorption of 1, 3, 5-trimethylbenzen, but no such phenomenon as in the case with the A-type zeolite was observed.
著者
加藤 昌弘 村松 輝昭 田中 裕之 森谷 信次 柳沼 福夫 一色 尚次
出版者
The Japan Petroleum Institute
雑誌
石油学会誌 (ISSN:05824664)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.186-190, 1991-03-01 (Released:2008-10-15)
参考文献数
3
被引用文献数
1 2

私達は, 先にアルコール-軽油混合液の沸点挙動について報告した1)。今回, アルコール-軽油混合溶液の液密度について検討した。使用した6種類のアルコールは, メタノール, エタノール, 1-プロパノール, 2-プロパノール, 1-ブタノール, 2-メチル-1-プロパノールである。さらに, 軽油の代表成分としてセタンを選び, メタノール-セタン, エタノール-セタン系についても検討した。密度測定には Anton-Paar 社製のデジタル密度計を用いた。Table 1に使用したアルコール, セタン, 軽油の物性値を示す。Figs. 1~3とTables 2~6に今回298.15Kで得られた密度データを示す。298.15Kにおいてメタノール-軽油, メタノール-セタン, エタノール-軽油, エタノール-セタン系で不均一領域が得られた。Tables 3~6に不均一となった4種の系について得られた密度データを示す。2液相領域では上相, 下相をそれぞれ取り出し密度を測定した。密度データの交点から相互溶解度を求めた。精度は軽油系で約±0.01, セタン系で約±0.001重量分率である。Table 7に今回求めた相互溶解度をそれぞれ示す。次に, メタノールあるいはエタノール10gと軽油10gからなる不均一混合溶液に第三成分として水を加え, 密度挙動を測定した。Tables 8, 9とFigs. 4, 5に測定結果を示す。Figs. 4, 5における実線の交点でアルコール相と軽油相が等密度となる。等密度エマルション混合溶液は相分離に時間がかかり, 自動車用エンジンにほぼ均一な供給が可能になる。
著者
深瀬 聡 丸山 文夫
出版者
The Japan Petroleum Institute
雑誌
石油学会誌 (ISSN:05824664)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.611-619, 1994-11-01 (Released:2008-10-15)
参考文献数
19
被引用文献数
7 7

ベンチスケールの水素化精製装置を用いて, フレッシュおよび実機使用済みのNi-Mo/Al2O3触媒を使用し, 種々の条件下でFCC原料油であるVGOの前処理を行った後, 得られた生成油中のVGO留分についてMATを用いた接触分解試験を実施した。水素化精製の過酷度は, FCC原料油の組成とその接触分解特性に大きく影響を及ぼした。圧力3.9MPa, 温度400°C以上では熱分解の寄与が大きく, 水素化脱窒素がより起こりやすい条件である7.8MPaで水素化精製した時に比べ, VGO留分にはより多くの窒素と多環芳香族が含まれた。このため水素化分解率が高い3.9MPaでの水素化精製の場合には, 生成したVGOの接触分解率は大きく低下した。そして窒素, 多環芳香族, レジン等の原料油の性状とMAT分解率とを関連付ける式を提案した。
著者
本田 亨 巻幡 敏秋 与口 正敏 伊藤 拓仙 谷中 厳
出版者
公益社団法人 石油学会
雑誌
石油学会誌 (ISSN:05824664)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.248-251, 1971
被引用文献数
1

The burning characteristics of flame, radiated heat intensity on the ground surface, and the temperature of the structure are measured, and the radiation characteristics of flame of a large size flare stack is investigated in this paper.<br>The flame length and diameter are increased with Mach number of waste gas flow, especially, the flame length <i>L</i> is related with <i>L</i>=0.72&times;10<sup>3</sup>(<i>U/U<sub>c</sub></i>)<i>D</i> (<i>U/U<sub>c</sub></i>=Mach number, <i>D</i>=Diameter of flare burner), but the flame diameter is not expressed by a linear relation to Mach number. The measured value of flame length is 1/2&sim;1/3 times the value obtained by G.R. Kent.<br>The radiated heat intensity on the ground surface may be calculated by the equation of point heat source concentrated at the center of a flame and the fraction of radiated heat at <i>X</i>&le;100m (<i>X</i>=Distance from flare stack) is smaller than that of <i>X</i>&ge;100m. In case of <i>X</i>&ge;100m, the fraction of radiated heat &epsilon; is expressed by &epsilon;=0.048&radic;<i>M</i> (<i>M</i>=Molecular weight of waste gas).<br>The temperature of structures, in the burning conditions, is nearly equal to the normal temperature, from the ground level to a height of EL. 110m, due to a shelter of platform installed at EL. 110m. When the fraction of radiated heat is constant, the temperature of platform may be estimated by the equation of heat radiation from the surface of an idealized ellipsoid flame.
著者
菊地 英一 小泉 明正 荒西 康彦 森田 義郎
出版者
公益社団法人 石油学会
雑誌
石油学会誌 (ISSN:05824664)
巻号頁・発行日
vol.25, no.6, pp.360-363, 1982
被引用文献数
2

鉄を触媒活性成分として含む, 一連のグラファイト層間化合物 (LCG) を用いて, 一酸化炭素の接触水素化反応を研究した。反応は固定床流通反応装置を用いて400&deg;C, 20atmの条件で行った。鉄LCG触媒は低級炭化水素の合成に活性があり, 二酸化炭素の生成が少なく, 一酸化炭素を有効に炭化水素に転化する2)。この反応における触媒活性中心は層間内の鉄であると考えられるが2), グラファイト表面に析出した鉄であるとの反論3)もある。著者ら4)は炭化水素合成に活性を示した鉄LCG触媒の磁化率測定を行って, 強磁性を示す鉄粒子が存在しないことを示し, 活性点はグラファイト層間にあることを主張した。<br>本報ではまず塩化第二鉄 (FeCl<sub>3</sub>)LCG触媒を水素還元して得た触媒の活性と選択性を比較して, 還元条件の影響を調べた (<b>Table 1</b>)。塩化第二鉄を還元すると主に塩化第一鉄 (FeCl<sub>2</sub>) に還元され, 一部は金属鉄まで還元される。還元温度の上昇,還元時間を長くすることにより層間内の塩化第一鉄の量が減少し, それにともなって活性が低下し, 生成物分布が低分子量側に移行することがわかった。塩化第一鉄はグラファイトの層間を広げ, 反応物や生成物の拡散を容易にするスペーサーとして作用することが示された。この結果は活性中心がグラファイトの層間に存在するとする著者らの結論を支持する。<br>グラファイトの層間に鉄以外の, もう一成分の金属塩化物を挿入したLCG触媒を調製して, その活性と選択性を調べた (<b>Table 2</b>)。調製方法は Croft5) の方法に準じた。まず第二成分の塩化物を400&deg;Cで挿入し, ついで塩化第二鉄を300&deg;Cで挿入した。塩化マンガンは生成物分布を高分子量側に移行するとともに, オレフィン生成を促進することが示された。他の添加物ではむしろメタンの占める割合が増加した。塩化マンガンのLCG自体は活性が低く, 硝酸マンガンを鉄LCGに担持しても効果がないことから, 塩化マンガンが効果を示すにはグラファイト層間に鉄と共存させることが必要であると結論された (<b>Table 3</b>)。鉄と塩化マンガンが共存したLCG触媒を高温還元すると, 活性は低下したが高分子量炭化水素の生成が抑制された。その結果生成物分布の幅が狭くなり, C<sub>2</sub>~C<sub>4</sub>炭化水素の合計は Schulz-Flory 分子量分布から予測される最大値 (55%) よりわずかではあるが大きくなった。
著者
菊地 英一 小泉 明正 荒西 康彦 森田 義郎
出版者
The Japan Petroleum Institute
雑誌
石油学会誌 (ISSN:05824664)
巻号頁・発行日
vol.25, no.6, pp.360-363, 1982-11-01 (Released:2008-10-15)
参考文献数
9
被引用文献数
1 2

鉄を触媒活性成分として含む, 一連のグラファイト層間化合物 (LCG) を用いて, 一酸化炭素の接触水素化反応を研究した。反応は固定床流通反応装置を用いて400°C, 20atmの条件で行った。鉄LCG触媒は低級炭化水素の合成に活性があり, 二酸化炭素の生成が少なく, 一酸化炭素を有効に炭化水素に転化する2)。この反応における触媒活性中心は層間内の鉄であると考えられるが2), グラファイト表面に析出した鉄であるとの反論3)もある。著者ら4)は炭化水素合成に活性を示した鉄LCG触媒の磁化率測定を行って, 強磁性を示す鉄粒子が存在しないことを示し, 活性点はグラファイト層間にあることを主張した。本報ではまず塩化第二鉄 (FeCl3)LCG触媒を水素還元して得た触媒の活性と選択性を比較して, 還元条件の影響を調べた (Table 1)。塩化第二鉄を還元すると主に塩化第一鉄 (FeCl2) に還元され, 一部は金属鉄まで還元される。還元温度の上昇,還元時間を長くすることにより層間内の塩化第一鉄の量が減少し, それにともなって活性が低下し, 生成物分布が低分子量側に移行することがわかった。塩化第一鉄はグラファイトの層間を広げ, 反応物や生成物の拡散を容易にするスペーサーとして作用することが示された。この結果は活性中心がグラファイトの層間に存在するとする著者らの結論を支持する。グラファイトの層間に鉄以外の, もう一成分の金属塩化物を挿入したLCG触媒を調製して, その活性と選択性を調べた (Table 2)。調製方法は Croft5) の方法に準じた。まず第二成分の塩化物を400°Cで挿入し, ついで塩化第二鉄を300°Cで挿入した。塩化マンガンは生成物分布を高分子量側に移行するとともに, オレフィン生成を促進することが示された。他の添加物ではむしろメタンの占める割合が増加した。塩化マンガンのLCG自体は活性が低く, 硝酸マンガンを鉄LCGに担持しても効果がないことから, 塩化マンガンが効果を示すにはグラファイト層間に鉄と共存させることが必要であると結論された (Table 3)。鉄と塩化マンガンが共存したLCG触媒を高温還元すると, 活性は低下したが高分子量炭化水素の生成が抑制された。その結果生成物分布の幅が狭くなり, C2~C4炭化水素の合計は Schulz-Flory 分子量分布から予測される最大値 (55%) よりわずかではあるが大きくなった。
著者
谷口 泉 横山 拓己 浅野 康一
出版者
The Japan Petroleum Institute
雑誌
石油学会誌 (ISSN:05824664)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.227-231, 1998-05-01 (Released:2008-10-15)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

小型スプレー塔を用いたガス吸収に関する実験的研究が, 二酸化炭素-空気-水酸化カルシウム水溶液系で噴霧液流量L=3~8×10-3kg/s, ガス流量G=0.5~2.0×10-3kg/sおよび供給ガス濃度y=0.1~1.0の範囲で行われた。二酸化炭素の無次元吸収速度の実測値は, 供給ガス濃度がy≦0.2の場合, 不可逆二次反応を伴う固体球浸透モデルによる理論値と良好に一致した。しかしながら, 供給ガス濃度およびフーリエ数が増加するに伴い理論値からのずれが大きくなった。これは, 液滴の気液界面近傍における炭酸カルシウムの沈殿の形成によるものと思われる。
著者
加藤 恒一 深瀬 聡 石橋 泰 山本 学
出版者
The Japan Petroleum Institute
雑誌
石油学会誌 (ISSN:05824664)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.529-533, 1997-11-01 (Released:2008-10-15)
参考文献数
8
被引用文献数
2 2

固定床による新しいライトナフサ芳香族化 (LNA) プロセスを開発するため, 2250 BPD規模のデモンストレーションプラントによる実証化研究を行った。ペンタンを主成分とするライトナフサの芳香族化反応は, 従前は触媒の劣化が激しいため連続再生型か, またはスウィング再生型の反応器を用いるものであった。新規に開発されたゼオライト触媒を充てんした固定床反応器を中心とする実証化プラントにより転化率95wt%以上, 芳香族収率50wt%以上を与える1000h以上の長期連続運転が達成された。実証化プラントは, 通常タイプの重質ナフサ改質用の固定床プロセスの反応セクションを転用して建設され三個の断熱反応器および生成物の分離セクションを備えている。触媒再生は反応を中断して行う半再生式である。再生後の触媒を抜き出して, 物性, 活性を測定し, 本触媒の安定性を確認した。
著者
土田 詔一 佐々木 務 小川 雅弥
出版者
The Japan Petroleum Institute
雑誌
石油学会誌 (ISSN:05824664)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.294-298, 1972-04-01 (Released:2009-01-30)
参考文献数
6
被引用文献数
4 4

Diels-Alder reaction of cyclopentadiene with 4-vinyl-cyclohexene (1), 5-vinyl-2-norbornene (2), 3a, 4, 7, 7a-tetrahydroindene (3) or dicyclopentadiene (4) prepared by the dimerization reaction between butadiene and cyclopentadiene, was investigated.In the reaction at high temperatures, the isomerization of vinylnorbornene to tetrahydroindene first took place, and the trimers obtained from the reaction of vinylnorbornene were similar to those obtained from tetrahydroindene.Meanwhile, owing to the isomerization of endo-dicyclopentadiene to exo-form, the cyclopentadiene trimer was derived from the latter isomer. The relative reactivity of the double bonds on dimers shown in the following figure was affected by the whole structure of dimer, and the values obtained for double bonds of the same type varied depending upon each compound.
著者
矢野 法生 増田 定司 寺岡 正夫
出版者
公益社団法人 石油学会
雑誌
石油学会誌 (ISSN:05824664)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.45-51, 1994
被引用文献数
1

ビスカスカップリングの普及に必要不可欠である安定性に優れたオイルの開発を目的に検討した。高粘度のジメチルシリコーンオイルの安定性をビスカスカップリングを用いた台上試験で調べた結果, 比較的低温においても粘度増加さらにはゲル化を起こすことがわかった。このジメチルシリコーンオイルのゲル化は, プレートの摩擦や摩耗粉(窒化鉄) が関係するビスカスカップリング特有の挙動であり, ゲル化防止には従来の耐熱向上剤では効果がほとんどなく, 特定の極圧剤が有効であることを見い出した。これらの知見に基づいて, 実用上, 極めて安定性に優れるビスカスカップリングオイルを開発した。
著者
工藤 清 島 昌秀 久米 康仁 生駒 太志 森 貞之 杉田 信之
出版者
The Japan Petroleum Institute
雑誌
石油学会誌 (ISSN:05824664)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.40-47, 1995-01-01 (Released:2008-10-15)
参考文献数
13
被引用文献数
4 15

高圧二酸化炭素下, ギ酸-炭酸アルカリ金属溶融塩中における2-ナフトエ酸塩のカルボキシル化反応を検討した。アルカリ金属種による反応性を調べた結果, セシウム塩系が最も高く, セシウム>ルビジウム>カリウムの順に低くなり, ナトリウムおよびリチウム塩系ではほとんど反応しなかった。ギ酸セシウム-炭酸セシウム溶融塩中, 400気圧, 380°C, セシウム2-ナフトエ酸塩のカルボキシル化反応ではナフタレンジカルボン酸塩およびトリカルボン酸塩が容易に得られ, ジカルボン酸塩中では2,6-ジカルボン酸が主生成物であった。この反応での生成物中の全カルボキシル基収率は不均化反応の値よりも大きく, しかもナフタレンの生成がほとんど見られず, 従来のヘンケル法と違った結果が得られた。そこで, この反応の生成物収率に及ぼす二酸化炭素圧力, 温度, および炭酸塩の添加量の効果を調べた。13Cで標識した二酸化炭素を用いた反応結果, 加圧二酸化炭素による直接カルボキシル化反応が進行していることが明らかとなり, その反応機構について考察を行った。
著者
今村 敏英 中山 達雄 池田 克巳 嶋田 公
出版者
公益社団法人 石油学会
雑誌
石油学会誌 (ISSN:05824664)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.187-193, 1978

アスファルト舗装体の耐久性向上のためにアスファルト中に種々のポリマーを添加して, その粘弾特性を改質することが一般に行われている。SBRラテックスを原油や製造方法の異なった各種のアスファルトに添加したものを試料として, 伸度型わくを用いて一定伸長速度で引張りテストを行い, 試料の伸びとそれに伴う引張り応力の関係から, CGS単位による絶対粘度, 瞬間, 遅延各弾性おのおのが簡単に測定できることがわかった。さらに, ポリマー添加による粘度, 瞬間, 遅延各弾性おのおのの増加率は試料中のマルテンの粘度が低いものほど大きいことがわかった。また, ベンソン法による引張り試験の代りに伸度型わくによる方法が応用できることがわかった。