著者
久光 俊昭 後明 和幸 丸山 文夫
出版者
公益社団法人 石油学会
雑誌
石油学会誌 (ISSN:05824664)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.479-484, 1993
被引用文献数
1

シェールオイルを水素化精製する際の脱ヒ素前処理反応器に適した反応条件と触媒を選定するため, 2種類のモリブデン-ニッケル-アルミナ触媒と1種類のγ-アルミナの脱ヒ素活性を評価した。その結果, 石油精製に使用されている通常のモリブデン-ニッケル-アルミナ触媒を使用し, 300°C, 2.0 LHSVの比較的温和な条件にて水素化処理することにより, 原料油中に含まれるヒ素の90%以上を除去できることが判明した。<br>さらに, 上記触媒の一つを使用してシェールオイルの水素化精製を130時間行ったが, その間での触媒活性は安定していた。使用後の反応器内部におけるヒ素の分布を調べた結果, 除去されたヒ素のほとんどが触媒上にあり, 排ガス中には検出されなかった。ヒ素の沈積量は触媒床上部で多く, 下方に行くに従って減少した。一方, 触媒床最上層から取り出した触媒ではヒ素が粒子外表面から内部に向かって減少しているが, 2層目からの触媒では粒子の外部から内部まで比較的均一に分布していた。このような分布の変化は, ヒ素化合物の反応速度と拡散速度の違いによって生じると考えられる。したがって, 前処理反応器の上部には適度な活性を有し, 細孔径および粒子の外表面積/体積比の大きな触媒が適している。また, 予想される運転終了時でのヒ素の蓄積量に比例して, 触媒上の金属担持量を増やすべきである。

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