- 著者
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木村 和義
- 出版者
- 養賢堂
- 雑誌
- 農業気象 (ISSN:00218588)
- 巻号頁・発行日
- vol.39, no.4, pp.271-279, 1984
降雨後, インゲンマメ葉が萎凋する現象がみられた。降雨後の萎凋現象について解明するため, 人工降雨実験装置を使って, その萎凋現象の実態と原因について実験的に検討を行った。<br>1) 雨の日, 鉢植したインゲンマメを屋外におき, 降雨を21時間受けた後に葉が萎する現象がみられた。萎凋の状態は, 葉縁が上方に曲り, 葉全体がいくらか杯状を呈し, 極端な場合は葉縁付近の裏面が表面から見える程度にまき上る状態になった。<br>2) 雨の日を想定した人工降雨装置を使って, 降雨処理後の萎凋現象の実態を詳細に検討した。降雨処理した植物の葉は, 処理終了後15分位から萎れ始め, 1時間目に最高の萎凋程度に達し, その後数時間かけて回復した。萎凋程度は処理期間が長い程強く現われ, またその回復も遅くなる傾向がみられた。またサツマイモ葉でもほぼ類似の萎凋現象がみられた。インゲンマメ葉の場合, 1~2日間の降雨処理では, 程度の弱い萎凋がみられ, 3~4時間後にはほとんど回復したが, 3日以上の処理では強い萎凋現象がみられ, 処理後24時間目でも葉縁に多少の異常が残った。また若令葉ほど, 老令葉と比して, 萎凋の程度が大きい傾向がみられた。<br>3) 降雨処理後の萎凋現象は, 地下部への雨の浸入が遮断された場合, 逆に地下部を浸水状態にして降雨処理した場合でも, あるいはイオン交換水で降雨処理した場合でも, 同じ程度に起こることから, 地下部の状態や水道水中の諸成分に関係なく, 雨水が地上部 (葉) を濡らすことによって起こると考えられた。<br>4) 降雨処理後における葉の蒸散量は急激に増大した。処理後1時間目の蒸散量は11.5mg/cm<sup>2</sup>であり, 無処理区の4mg/cm<sup>2</sup>の約3倍の値を示した。この1時間における降雨区の根による吸水量は5.2mg/cm<sup>2</sup>であり, 蒸散による水の排出は根による水の吸収の約2倍の値であった。<br>5) 降雨処理された植物から切離された葉の乾燥速度は無処理区のものよりも著しく大きい値を示した。無処理区の植物からの切葉は1日後, 切断時の生鮮重の約50%まで減少した程度であったが, 降雨処理した場合は約10%まで減少した。<br>6) 上述のような結果から, 降雨後の萎凋現象の原因は, 地上部の雨水接触によって, 葉の表面構造に障害をうけ, 水の透水性を増し, その結果, 蒸散作用が急激に増大したことによると推察された。