著者
木村 和義 有吉 美智代
出版者
日本農業気象学会
雑誌
農業気象 (ISSN:00218588)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.371-378, 1983-03-10 (Released:2010-02-25)
参考文献数
13

植物体が雨を受けた場合, その生理状態がどのように変化し, どのような影響を受けるかを知るため, インゲンマメの葉, 茎, 根について, その伸長, 生体重, 乾物重, 水分含量, クロロフィル含量に対する6日間の降雨処理の影響を実験的に検討した。1) 葉の伸長, 生体重は, 降雨処理によって, 1日目は増大するが, 2日以上の降雨処理では減少した。葉の厚さは無処理区では増大したが, 降雨処理区ではほとんど増大しなかった。乾物重, クロロフィル含量は, 降雨処理区においてもいくらか増大したが, 無処理区よりも低い値であった。2) 茎の伸長に対する降雨処理の影響は少なく, 無処理区とほとんど変らなかった。しかし降雨処理により茎の生体重, 水分含量は著しく増大し, 逆に乾物重は著しく減少した。3) 根の伸長, 生体重, 含水量は降雨処理区と無処理区とではほとんど変らなかった。乾物重は降雨処理1~2日目では無処理区と同じ程度増大したが, 4~6日目には無処理区よりも低い値であった。4) 生体重に関するT-R率は, 降雨処理区が無処理区よりも大きい値を示した。乾物重のT-R率は逆に降雨処理区よりも小さい値を示した。このことは地上部は地下部に比べて, 降雨処理によって乾物重の低下が著しく, 生体重の増大が大きいことを示していた。5) 上述のような植物体の降雨に対する反応は, 地下部への雨水の浸入を遮断した場合, またはイオン交換水で降雨処理した場合でも, 同様の傾向であった。このことから, 地上部(葉)が雨水でぬれることが, 植物体の状態の変化に影響を与えていると考えられた。
著者
木村 和義
出版者
養賢堂
雑誌
農業気象 (ISSN:00218588)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.271-279, 1984

降雨後, インゲンマメ葉が萎凋する現象がみられた。降雨後の萎凋現象について解明するため, 人工降雨実験装置を使って, その萎凋現象の実態と原因について実験的に検討を行った。<br>1) 雨の日, 鉢植したインゲンマメを屋外におき, 降雨を21時間受けた後に葉が萎する現象がみられた。萎凋の状態は, 葉縁が上方に曲り, 葉全体がいくらか杯状を呈し, 極端な場合は葉縁付近の裏面が表面から見える程度にまき上る状態になった。<br>2) 雨の日を想定した人工降雨装置を使って, 降雨処理後の萎凋現象の実態を詳細に検討した。降雨処理した植物の葉は, 処理終了後15分位から萎れ始め, 1時間目に最高の萎凋程度に達し, その後数時間かけて回復した。萎凋程度は処理期間が長い程強く現われ, またその回復も遅くなる傾向がみられた。またサツマイモ葉でもほぼ類似の萎凋現象がみられた。インゲンマメ葉の場合, 1~2日間の降雨処理では, 程度の弱い萎凋がみられ, 3~4時間後にはほとんど回復したが, 3日以上の処理では強い萎凋現象がみられ, 処理後24時間目でも葉縁に多少の異常が残った。また若令葉ほど, 老令葉と比して, 萎凋の程度が大きい傾向がみられた。<br>3) 降雨処理後の萎凋現象は, 地下部への雨の浸入が遮断された場合, 逆に地下部を浸水状態にして降雨処理した場合でも, あるいはイオン交換水で降雨処理した場合でも, 同じ程度に起こることから, 地下部の状態や水道水中の諸成分に関係なく, 雨水が地上部 (葉) を濡らすことによって起こると考えられた。<br>4) 降雨処理後における葉の蒸散量は急激に増大した。処理後1時間目の蒸散量は11.5mg/cm<sup>2</sup>であり, 無処理区の4mg/cm<sup>2</sup>の約3倍の値を示した。この1時間における降雨区の根による吸水量は5.2mg/cm<sup>2</sup>であり, 蒸散による水の排出は根による水の吸収の約2倍の値であった。<br>5) 降雨処理された植物から切離された葉の乾燥速度は無処理区のものよりも著しく大きい値を示した。無処理区の植物からの切葉は1日後, 切断時の生鮮重の約50%まで減少した程度であったが, 降雨処理した場合は約10%まで減少した。<br>6) 上述のような結果から, 降雨後の萎凋現象の原因は, 地上部の雨水接触によって, 葉の表面構造に障害をうけ, 水の透水性を増し, その結果, 蒸散作用が急激に増大したことによると推察された。

1 0 0 0 OA 雨と植物

著者
木村 和義
出版者
The Society of Agricultural Meteorology of Japan
雑誌
農業気象 (ISSN:00218588)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.23-30, 1978-06-15 (Released:2010-02-25)
参考文献数
25
被引用文献数
2
著者
木村 和義
出版者
岡山大学資源生物科学研究所
雑誌
岡山大学資源生物科学研究所報告 (ISSN:0916930X)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.191-200, 1994

The drying of leaves detached from 16 plants (mainly, vegetalbles) after artificial rainfall (mist)treatment was examined in a growth chamber(20℃,8 klux). Leaves detached from misted plants had a higher drying rate than those detached from non-misted plants. The promoting effect of mist on the dryint rate was increased with the increase in the duration of mist exposure. The degree of drying after mist exposure for 3 days or more was increased markedly. In almost all the plants,the weight of the leaves detached from the plants decreased to 10-20% of the initial weight 24 hours after a 5-day mist treatment, but 40-50% in cabbadge, chinese leek and welsh onion. In general, the degree of drying was greater in the young developing leaves or older leaves than in active young leaves. These findings suggested that the surface wax and cuticular of the leaf is injured by rainfall wetting, and that water discharge(transpitation) in the leaf is increased greatly.16種の植物を使って、降雨を受けた植物から切り離された葉の乾燥促進現象について、検討した。1)16種すべての植物において、雨を受けた植物から切り離した葉は、雨を受けない切葉よりも乾燥速度が大きくなった。この雨後の切葉の乾燥の速度は植物種により差がみられるが、降雨期間が長くなるとともに大きくなり、一般に3日以上の降雨で切葉の乾燥の促進が著しくなる傾向がみられた。2)夏季の実験では、キュウリ、カボチャ、トマト、スイカ、メロン、インゲンマメで雨後の切葉の乾燥速度が早く、無処理葉との差が大きいが、ナス、シソではいくらか遅く、その差が少ない傾向がみられた。冬季の実験ではシュンギク、ダイコン、ホウレンソウ、タイサイ、ヒロシマナで降雨後の切葉の乾燥速度が早いが、キャベツ、ネギ、ニラでは乾燥速度が遅く、無処理葉との差が小さい傾向がみられた。3)葉位別乾燥速度は植物種によって多少異なるが、一般に展開直後の若い葉、または葉齢の進んだ成熟葉は、活動の盛んな葉よりも雨濡れによる乾燥速度が大きくなる傾向がみられた。