- 著者
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佐藤 邦雄
- 出版者
- The Kitakanto Medical Society
- 雑誌
- 北関東医学 (ISSN:00231908)
- 巻号頁・発行日
- vol.43, no.2, pp.123-131, 1993
本研究は, 慢性腎不全において透析により血漿エンドセリンが変化するか否か, また, これが血圧維持に関与しているか否かを検討したものである.週3回血液透析を受けている慢性腎不全例14例における血漿エンドセリンをラジオイムノアッセイ法により測定したところ, 透析開始時には34.6±4.4fmol/mlであり, これは健常者の10.8±0.9fmol/ml, 腎機能正常の高血圧例の12.9±4.4fmol/mlに比べて有意に高値であった.また, 高速液体クロマトグラフィーで分析すると, 透析例ではエンドセリン-1, ビッグエンドセリン-1以外に二つのピークが認められた.透析後, 血漿エンドセリン値は28.4±1.6fmol/mlと有意に低下した.エンドセリン-1とビッグエンドセリン-1とは透析によりともに有意に減少し, 両者の比は透析前後で変化しなかった.透析外液中にエンドセリン-1は検出されたが, ビッグエンドセリン-1は検出されず, 循環中にビッグエンドセリン-1からエンドセリン-1への変換が生じるものと推定した.<BR>なお, 腎不全例において, 血液透析による血圧変化と血漿エンドセリンおよびエンドセリン-1の変化との間には有意な関連は認められず, 血中エンドセリン-1が循環ホルモンとして透析中の血圧調節に直接関与していないと結論した.