- 著者
-
久武 綾子
- 出版者
- 一般社団法人 日本家政学会
- 雑誌
- 家政学雑誌 (ISSN:04499069)
- 巻号頁・発行日
- vol.12, no.3, pp.281-286, 1961
1) 婚姻届出日より第一子出生日のへだたりの統計結果から、妻の妊娠又は出産を契機として入籍するという、事実婚より法律婚への転機の一原因が実証された。<BR>2) 1) の件数は戦前戦中は特に多く、戦後も25年位までは相当多い。<BR>3) 婚姻の届出が第一子出生後2週間以内でなされる件数は戦前戦中は特に多く14%位をしめ、戦後25年位までは13%であるがそれ以後は次第に減少する傾向がみられる。<BR>4) 2) の2週間以内というのは出生の届出の期限と一致し、これは内縁期間に出生した場合に非嫡出子として一旦、母の戸籍に入るのを未然に防ぐためと推察される。<BR>5) 婚姻成立後即ち、婚姻届出後9~10ヵ月で第一子の出生をみる傾向は最近になってようやくあらわれた。6) 古い時代には特に法制的には内縁期間中の懐胎が相当多い。これは挙式後婚姻の届出をすぐに行なわなかったためである。<BR>7) 挙式日と出生日のへだたりは時代の推移にかかわらず10ヵ月にピークがある。<BR>8) 子の出生日から逆算すると式以前の同棲期間中の懐胎件数は法制上の内縁期間中の懐胎にくらべると少ないことがわかった。<BR>9) 社会生活上、挙式そのものは重大な規範でありながら、その反面、制度としての婚姻の届出はおくれがちであることが判明した。<BR>10) 婚姻届出に関する社会的経済的背景としての職業は、俸給生活者はその届出が早く、その中、教員、公務員は届出は特に早い傾向がみられる。