- 著者
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久武 綾子
- 出版者
- 日本法社会学会/有斐閣
- 雑誌
- 法社会学 (ISSN:04376161)
- 巻号頁・発行日
- vol.1964, no.16, pp.81-106,147, 1964-04-10 (Released:2009-06-16)
- 参考文献数
- 7
以上の調査結果は、(1) 調査区は、いずれも職業別人口構成を異にするが、総括的にみると、推計学的に検定した結果も統計上の有為差は、一部の統計結果を除き、殆んど認められなかったので、本調査の地域差は期待に反し、顕著な差ではないことがわかった。(2) 婚姻届出日と第一子出生日との隔たりについての統計結果から、妊娠または出産を契機として入籍するという一慣行、すなわち、事実婚より法律婚への転機の一原因が実証された。このことは、戦前は勿論、戦後も意外に多いことがわかった。(3) 婚姻の届出が第一子の出生後、出生届の期間内の一四日までになされる率は、いずれの時代でも相当数を占め、最近でもこのような例は稀でないことがわかった。(4) 婚姻成立後、九~一〇月で子の出生をみる傾向は、最近になってようやくあらわれた。(5) 古い時代はとくに、現在でも内縁期間中の懐胎が相当多く、これは挙式後婚姻の届出がすぐに行なわれなかったためである。(6) 挙式日と出生日との隔たりについての統計結果は、時代の推移にかかわらず一〇月にピークがみられる。(7) 社会生活上、挙式は重大な規範であり、厳守されているが、その反面、制度としての婚姻の届出は、おくれがちであることが実証された。(8) 婚姻の届出は、挙式後一ケ月までになされる率が、調査区および調査期間とは関係なく一番多かった。(9) 以上、これらの調査結果から、婚姻にみられる慣習規範と、二、三の慣行が統計的に裏づけられた。(10) 本調査により、大都市における婚姻と届出に対する一般市民の実態が明らかになったが、今後は、調査地を農村に求めてこれと比較するとともに、進んでは、届出制度そのものに対する法社会学的背景を探究するための若干の調査と考察を試みたいと思う。