著者
安藤 延男
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
教育・社会心理学研究 (ISSN:0387852X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.61-73, 1965

基督教との関連で生じる外行動としての宗教的行為 (もしくは宗教生活) に関するインベントリーの作製手続きについて報告した。<BR>(1) "宗教的行為" の概念的定義については, 岸本の所論 (1961) を適用した。かつその測定の意義について述べた。<BR>(2) 24個の質問項目からなる原案を作製し, 予備調査 (対象: 福岡女学院高等学校3年生, N=184, 1962年度) の資料による上位・下位分析を行い, 22項目を有する最終形式をえた (Table 1)。<BR>(3) インベントリーの最終形式の質問項目22個の相互相関係数 (ピァソンのr) 231個の相関行列にもとずく因子分析のあと軸の直交回転を施した (Table 2, 3)。3個の因子に関する解釈は以下のとおりで, いずれも基督教徒の日常生活の重要な諸次元を指示する内容であった。すなわち, 第1因子は 「神中心的生活」 因子, 第2因子は 「宗教的修養」 因子, 第3因子は 「世俗生活への積極性・責任性」 因子である (Table 4, 5, 6)。<BR>(4) 一次因子の相互独立性について検討したところ, 3つの一次因子は総合点に対し, かなり高い相関を示し, かつ二次因子のレベルでも第1因子 (A) における負荷がきわめて高いことが見出された。したがって, 本インベントリーの一次因子相互間には, かなりの内的整合性がみられることから, 一次因子に準拠せる下位尺度の構成は見合わせることとした (Table 7)。<BR>(5) インベントリー最終形式の弁別力を吟味するため, いくつかのグループからえられた回答資料で分布を検べてみたところ, いずれの場合も, 6もしくは7標準偏差に及ぶ広範囲の分布がみとめられた。したがって, 最終形式の弁別力は満足すべきものということができる (Table 8-a, 8-b)。<BR>(6) 信頼性は再検査信頼度係数を用いて吟味した結果, r=. 752という, かなり満足すべきものであった。<BR>(7) 妥当性の吟味は多面的に行われた。妥当性の規準としては, 基督教会における洗礼の有無, 基督教関係学校学生・生徒と教会礼拝出席者の比較, 自己が主観的に帰属する宗教, 両親の宗教, 宗教的情操尺度・基督教への態度尺度・聖書の知的理解などの諸得点が採られ, それぞれについそ相関関係を検討した。その結果, 本インベントリーの妥当性は望ましいものであることが示された (Table 9~14)。<BR>(8) 本インベントリーは, 福岡女学院中学・高校, 西南学院中学・高校, カトリック系明治学園中学・高校のほか, 西南学院大学文学部神学科や基督教会の若干につき実施されたにすぎない。しかしながら, 本インベントリーの利用面を考え, 暫定的な標準化を行った (Table 15, 16)。いうまでもなく, 今後における資料の集積を侯って, 逐次改訂される必要のあることはいうまでもない。なお, この標準化に用いた素資料を付録として示しておく (Appendix 1-3)。

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