著者
三隅 二不二 篠原 弘章
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
教育・社会心理学研究 (ISSN:0387852X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.125-133, 1967-03-31 (Released:2010-03-15)
参考文献数
10

1) 集団決定に参加後6ヵ月間に, 集団決定に参加した45名の運転手の事故率は, 約3分の1に減少した。さらに10ヵ月間においては, 5分の1に減少した。2) 集団決定参加者が, 職場からグループで参加した場合と準単独で参加した場合で, 事故減少率に明らかな差異が見いだされた。集団参加群 (34名) は, 集団決定後6ヵ月間で決定前6ヵ月間の7分の1, 10ヵ月後で決定前10ヵ月間の約9分の1の減少率を示したが, 準単独参加群 (11名) の場合は集団決定前後6ヵ月間で差異がなく, 決定後10ヵ月間で決定前10ヵ月間の約3分の2の減少率であった。3) 集団決定参加者45名全員について事故の自然減少率を考慮した場合は, 集団決定の効果として,a) 集団決定前後6ヵ月間の事故の比較において, 15件の事故のうち4件が, 自然減少率を減却した残差であり, 集団決定の効果として考察される。b) 集団決定前後10ヵ月間の比較においては, 30件のうち, 17件の事故が自然減少率を減却した残差であり, 集団決定の効果として考察される。
著者
島 久洋
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
教育・社会心理学研究 (ISSN:0387852X)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.87-103, 1968

対人認知の3つの指標, AS。, DP, そして, DNを組合わすことにより, リーダーの対人認知様式を8つに分類し, 集団の成績を上げる必要のある状況において, フォロワーのノルマをリーダーが設定する場合, これら8つのタイプのリーダーが如何に行動するかを分析した。さらに, リーダーのフォロワーへの手紙を分析することにより, これらリーダーの行動特徴を調べた。第一課題において仮空のフォロワーA, Bのアイディアと評価点をリーダーに知らせることによりA>Bの能力差をリーダーに認知させ, 第二課題でのA, Bのノルマをリーダーに設定させた。第二課題においてリーダーにA, Bへの手紙をかかせた。その結果, 次のことが明らかにされた。<BR>1. AS。得点の低いリーダーは, 得点の高いリーダーにくらべてA, B両者に対して予想得点 (リーダーが認知したフォロワーの能力) より高いノルマを設定し, 一方, AS。得点の高いリーダーは, 得点の低いリーダーにくらべてAに対しては予想得点に近いノルマを, Bに対しては予想得点より少し低いノルマを設定した。<BR>2. DP得点の高いリーダーは, DP得点の低いリーダーにくらべてAに対して予想得点より高いノルマを設定し, DP得点の低いリーダーは, DP得点の高いリーダーにくらべてAに対して予想得点に非常に近いノルマを設定した。また, DN得点の低いリーダーは, DN得点の高いリーダーにくらべて自分の能力より低い予想をしたAの言い分を受け入れやすいことがあきらかになった。<BR>3. 手紙によるリーダーの行動の分析からは, 明確な結果が得られず, 分析方法の反省がなされた。
著者
遠藤 辰雄
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
教育・社会心理学研究 (ISSN:0387852X)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.103-116, 1968 (Released:2010-03-15)
参考文献数
6

(1) 犯罪者と大学生との両群を構成因子法によって比較したところでは, 社会的要因すなわち年令に相応した社会生活の技術の身につけ方, 友人のタイプ, グループの一員あるいはリーダーとしての経験などの面, および教育・訓練の要因すなわち学校および家庭における「しつけ」の面に大きな差のあるものが多く, とくに自己洞察すなわち非行に対する自分自身の態度, 自分で自分の行為の責任をひきうける計画性と能力の面に著るしい差のあることが見出された。(2) 自己洞察は, 犯罪経歴が長いほど, すなわち非行が幼時に始められていればいるほど, 劣っている。従って, 安倍淳吉氏の指摘する非行深度と関係していると推測できる。(3) 自己洞察は, 犯罪の真の心理的動機とも平行していると考えられる。(4) 自己洞察は, 年少者では困難であるが, 洞察が可能な年令群に属し, 0以上ならば非指示的療法, 責任療法が可能であり, 年少者であり, -1以下では行動療法が可能であると考えられるが, なお今後の研究をまたねばならない。(5) また, この構成因子法は, 矯正的教育・治療のメドをつけるために, 可能な限度の資料を得るために, とくに心理学的検査が不可能な場合に, もっとも適切な方法であると考えられるが, 構成因子相互間のダイナミックスとくに自己洞察との関連における犯罪性の矯正の見通しの予測の問題についても, 多くの疑問が残されているので, 後日改めて論及することとしたい。
著者
安藤 延男
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
教育・社会心理学研究 (ISSN:0387852X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.61-73, 1965

基督教との関連で生じる外行動としての宗教的行為 (もしくは宗教生活) に関するインベントリーの作製手続きについて報告した。<BR>(1) "宗教的行為" の概念的定義については, 岸本の所論 (1961) を適用した。かつその測定の意義について述べた。<BR>(2) 24個の質問項目からなる原案を作製し, 予備調査 (対象: 福岡女学院高等学校3年生, N=184, 1962年度) の資料による上位・下位分析を行い, 22項目を有する最終形式をえた (Table 1)。<BR>(3) インベントリーの最終形式の質問項目22個の相互相関係数 (ピァソンのr) 231個の相関行列にもとずく因子分析のあと軸の直交回転を施した (Table 2, 3)。3個の因子に関する解釈は以下のとおりで, いずれも基督教徒の日常生活の重要な諸次元を指示する内容であった。すなわち, 第1因子は 「神中心的生活」 因子, 第2因子は 「宗教的修養」 因子, 第3因子は 「世俗生活への積極性・責任性」 因子である (Table 4, 5, 6)。<BR>(4) 一次因子の相互独立性について検討したところ, 3つの一次因子は総合点に対し, かなり高い相関を示し, かつ二次因子のレベルでも第1因子 (A) における負荷がきわめて高いことが見出された。したがって, 本インベントリーの一次因子相互間には, かなりの内的整合性がみられることから, 一次因子に準拠せる下位尺度の構成は見合わせることとした (Table 7)。<BR>(5) インベントリー最終形式の弁別力を吟味するため, いくつかのグループからえられた回答資料で分布を検べてみたところ, いずれの場合も, 6もしくは7標準偏差に及ぶ広範囲の分布がみとめられた。したがって, 最終形式の弁別力は満足すべきものということができる (Table 8-a, 8-b)。<BR>(6) 信頼性は再検査信頼度係数を用いて吟味した結果, r=. 752という, かなり満足すべきものであった。<BR>(7) 妥当性の吟味は多面的に行われた。妥当性の規準としては, 基督教会における洗礼の有無, 基督教関係学校学生・生徒と教会礼拝出席者の比較, 自己が主観的に帰属する宗教, 両親の宗教, 宗教的情操尺度・基督教への態度尺度・聖書の知的理解などの諸得点が採られ, それぞれについそ相関関係を検討した。その結果, 本インベントリーの妥当性は望ましいものであることが示された (Table 9~14)。<BR>(8) 本インベントリーは, 福岡女学院中学・高校, 西南学院中学・高校, カトリック系明治学園中学・高校のほか, 西南学院大学文学部神学科や基督教会の若干につき実施されたにすぎない。しかしながら, 本インベントリーの利用面を考え, 暫定的な標準化を行った (Table 15, 16)。いうまでもなく, 今後における資料の集積を侯って, 逐次改訂される必要のあることはいうまでもない。なお, この標準化に用いた素資料を付録として示しておく (Appendix 1-3)。
著者
三隅 二不二 黒川 正流
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
教育・社会心理学研究 (ISSN:0387852X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.169-181, 1971

本研究は, 「集団規模の拡大は群集化傾向と軍隊化傾向を生じる」という仮説を, リーダーシップPM論との関連において実証し, あわせて集団規模と帰属意識およびモラールとの関係を分析することを目的とした。<BR>某製鉄所一般工員4, 418名 (698集団) および某化学工場一般従業員1, 369名 (305集団) に対して, 質問紙による面接調査を実施した。<BR>結果を要約すればつぎの通りである。<BR>(1) リーダーシップM機能についていえば, 職場集団規模の拡大につれて, 一般にM機能の強いPM型もしくはM型の第1線監督者が減少し, M機能の弱いP型もしくはpm型の第1線監督者が増加する傾向が認められた。<BR>(2) リーダーシップP機能についていえば, 強いM機能が伴わないならば, 職場集団規模の拡大につれて, 一般にリーダーシップPおよびPが増加し, あるいは少なくとも減少することはないことが実証された。<BR>(3) 以上の結果から, 職場集団規模の拡大につれて, 軍隊化傾向か, あるいは群集化傾向が生じることが考察された。<BR>(4) 会社もしくは組合, およびその両方に対して高い帰属意識得点を示すものの比率は, 上司のリーダーシップ類型をPM型と認知する成員の中で最も高く, 以下M型, P型, pm型と認知する成員の順にその比率が低下し, 会社もしくは組合, およびその両方に対して低い帰属意識得点を示すものの割合は, 上司をpm型と認知する成員の中で最も高く, 以下P型, M型, PM型と認知する成員の順にその比率が低下することが見出された。<BR>(5) 上記 (4) の結果にもかかわらず, 職場集団規模の大いさは, 会社と組合, およびその両方に対する成員の帰属意識の強さに有意な影響を与えるという証拠は見出されなかった。<BR>(6) 上記 (4), (5) の結果から, 職場集団規模の拡大が会社と組合に対する帰属意識を相対的に高める傾向をもつという仮説が暗示された。<BR>(7) 職場集団規模の拡大につれて, 一般にモラール (チームワーク得点を含む) が低下する傾向が認められた。このことは, リーダーシップの変化による軍隊化傾向および群集化傾向のいずれも, いわゆる職場のモラールを犠牲にして成立することを裏付けるものと解釈された。
著者
前田 重治
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
教育・社会心理学研究 (ISSN:0387852X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.149-172, 1967-03-31 (Released:2010-03-15)
参考文献数
5
著者
成瀬 悟策
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
教育・社会心理学研究 (ISSN:0387852X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.135-148, 1967-03-31 (Released:2010-03-15)
参考文献数
11

脳性麻痺に基本的な行動特徴としてみられる過度緊張を解消, 軽減させるものとして, 弛緩行動というものを考え, それをもたらすための有効な方法としての催眠による弛緩効果を, 筋電図その他の指標によって確かめるとともに, 充分な弛緩は, 催眠に限らず, 覚醒のままでも, 体系的に弛緩を進めれば, それが可能であることを明らかにした。しかも, 一時的な弛緩だけでなく, それを持続させ, あるいは, 任意に弛緩できるようにするためには, 弛緩行動の学習がなされねばならず, それには弛緩感覚の獲得と, 自己弛緩の学習が必要なこと, および, そのための手続きの幾つかを資料とともに述べた。また, こうした弛緩に伴なって明らかになった問題として, 脳性麻痺と呼ばれる運動的disabilityに二種類が区別され, ことにprimary disabilityの判定が機能訓練には大切なこと, およびsecondary disabilityの最も特徴的なものとして定型化成が挙げられ, この定型のblockingが弛緩行動のためにも, その後の機能訓練にも重要なことが述べられた。
著者
藤沢 〓 浜田 哲郎
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
教育・社会心理学研究 (ISSN:0387852X)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.35-46, 1960 (Released:2010-03-15)
参考文献数
21

Fスケールによって測定される人格構造を明らかにするために認知的, 情動要因あるいは社会的-文化的要因および個人的経験的要因等の背景的要因を追究し, 併せてFスケールのresearch vari-ableとしての価値をも検討した。結果を要約すると次の通りである。A. 日本語版Fスケールの作成1. 項目得点平均は原著のスケールと殆んど差異がなかった。しかし, SD, DP平均は原著の方が大きかった。即ち, 原著のスケール構造は異質性が大で. 筆者のは等質性が大であると考えられた。2. 原著と比較して得点差の大きい項目が見出された。これによって, 彼我の文化-社会構造の差異が人格構造に影響を与えていることが示唆された。3. 原著と比較して一段階信頼度が低く, 筆者のスケールにはまだ改訂の余地が残されている。B. ロールシャツハ・テストとTAT4. ロールシャツハ図版IとVに多く出現した “威嚇” 反応はFスケール高得点者の人格特徴を示すコンテントであった。5. TAT図版13の “殺” と “性” 反応は高得点者にドミナントに見られるパターンであると考えられた。6. 従って, 高得点者の人格には“威嚇” , “殺” , “性” に対する態度指向性あるいは潜在的不安があることか示唆された。7. 高得点者の反応は多義的な刺激図形に対して不寛容であった。C. 連想時のGSR8. 高得点者は性的, 情緒的刺激語に対する連想反応が中性語に対するそれよりも優勢な者がいずれの測度においても多かった。9. 低得点者の中には中性語に対す反応の小さい者もおり, 反応の仕方が多義的であることを示した。10. 連想に伴うGSRの潜時は高低両得点者を弁別するに最も有効な測度であった。11. 刺激語の種類にかかわらず, 反応時間, 潜時, 反射量, 反射持続時間のいずれの測度でも高得点者の数値の方が大であった。12. これらの高得点者の友応特徴は潜在的な情緒不安あるいは性に対する過度の態度指向性を投影しているものと考えられた。D. 知覚のかたさ13. 反転図形の観察において「構え」が反転回数に及ぼす効果は低得点者の方が大きかっに。しかし, 両群間に有意差はなかったが, 分散差は有意であった。14. 両群の反転比の差異は傾向としては認められるが, 2つのクラスターをのぞぐと有意差はなかった。しかし, 全得点および5つのクラスター得点では有意な分散差が認められた。15. 反転比とF得点との間には多/自とは正の相関, 自/少とは負の相関が見られたが, 相関性が有意であったのはクラスターfの自/少とgの多/自の2つであった。16. 全体得点と自/少, クラスターeと多/自との間には有意な曲線相関が見出された。即ち, 反転比がF得点へ回帰することが示された。17. この事実は低得点者にsubgroupとしてのrigid lowsの存在が明らかになった。18. 従って, Fスケールによる人格の硬さと知覚の硬さとの関係が, 図形反転における多義性不寛容の形で現われることが検証された。19. この関係は全得点とだけでなく, クラスターd以外の全てのクラスターとの間に認められ, 特にクラスターe, f, gは図形反転と密接な関係にあると思われた。
著者
狩野 素朗
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
教育・社会心理学研究 (ISSN:0387852X)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.73-82, 1967

構造内地位に関する4種類のグラフ論的指数を課題解決集団内のコミュニケーション構造に適用することによって各指数の妥当性を吟味した。ここで検討した各指数は, 有向グラフ (digraph) によって対応させられる集団構造内における成員の地位をあらわすもので, 強化-弱化性指数, 成員強化値指数, 等価多段階地位指数, それに荷重多段階地位指数である。<BR>本研究では実験的に設定した課題解決集団において, 各指数による成員の地位順位 (仮説順位) と, 実験によって成員が解決に達する速さとの順位に相関があることを仮定し, 各指数による仮説順位と結果順位との相関の度合の比較を試みた。<BR>課題として4名あるいは5名からなる集団による「犯人さがし」というゲームを用い, 課題解決に必要な情報伝達のために, 実験者による行動制限法を用いて5種類のコミュニケーション構造が導入された。<BR>各構造内成員の全体的課題解決順位と, 4種類の指数による成員地位順位との間の順位相関を求めた結果, 相関係数の値は強化-弱化性指数, 成員強化値指数, 等価多段階地位指数, 荷重多段階地位指数の順に大きな値を示すことが見出され, 荷重多段階地位指数は実験に用いた5種類の構造のすべての結果と有意 (p<. 01) な相関を示した。このことから課題解決集団におけるコミュニケーション構造内の地位指数の内では, 荷重多段階地位指数が成員の課題解決能率と最も高い相関を示すことが明らかとなった。<BR>多段階地位指数との相関が大であることからして, 成員の課題解決能率に影響した要因は, 本実験の条件においては, その位置の情報入手可能性の度合であろうと考察される。また間接的関係は直接的関係よりもその効果性が減少していったことについては, 本実験のコミュニケーションが, 問題解決の手段となる情報の伝達という, いわゆる道具的コミュニケーションである一方, 実際にはその伝達には何等かの自己目的的要因 (あるいは感情的効果) が介入ないし付加し, 段階数の増加にともなってその効果が大となったことのためであろうと考えられる。
著者
三隅 二不二 中野 繁喜
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
教育・社会心理学研究 (ISSN:0387852X)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.10-22, 1960

本研究は, アメリカにおけるレヴィーン, リピット, ホワイトによる, いわゆる "専制的" , "民主的" , "放任" 指導法に関する諸研究の成果を, 社会-歴史的背景を異にする日本において, 更に検証しようとしたものである。<BR>被験者として福岡市高宮小学校5年生の男子30名 (年令10-11才) を用いて等質集団6組を編成し, 課題として福岡県の模型地図作成をえらんだ。本報告の結果を要約すれば, 次の如くである。A. 仕事に対する熱心さ<BR>(1) 指導法の変更前においては, 専制的指導者の下で最高であったが, 変更後においては (特に変更後の最終日においては) 民主的指導者の下の方が最高となった。平均値としては専制的集団が最も熱心であった。<BR>(2) 自由放任的指導者の下では, 他の二集団に比較して仕事に対する熱心度は最低であった。<BR>(3) 民主的指導タイプの集団では, 仕事に対する熱心度は上昇傾向が著しく, 最終日には最高となった。<BR>(4) 指導タイプ変更後, 最も著しい下降を示したのは, 専制的指導から自由放任的指導へ変更されたときであった。<BR>B. 攻撃的反応の頻度に関しては, 専制型に移行した場合は, いづれの場合も減少した。民主型に移行した場合は, いづれの場合も著しく増大した。自由放任型に移行した場合は, 民主型からの移行の場合は減少し, 専制型からの場合は増大した。<BR>C. 友好的発言の頻数に関しては, 専制型に移行した場合は, 民主型からの場合は減少し, 自由放任型からの場合は増大した。民主型に移行した場合は, いづれの場合も著しく増大した。自由放任型に移行した場合は, 専制型から移行した場合は著しく増大し, 民主型からの移行の場合は変更前と差異がなかった。<BR>D. 課題解決を遂行途中, 指導者が不在になった時の, 各集団成員が示した反応塚数の変化について<BR>(1) 攻撃的専制集団の場合は, リーダー不在時に, 不平不満や注目をひく発言が増大し, 集団中心的発言や知識を求めたり与えたりする発言, 仕事中心の発言が減少し, 一方仕事外の発言が増大している。<BR>(2) 服従的専制集団の場合は, 友好的な快活的な発言が増大した。<BR>(3) 民主的集団の場合は, リーダー不在によって, 同僚依存や攻撃性が著しく増大し, また, 注目をひく発言, 集団中心的発言, 知識を求める, 与える発言が増大した。一方, 仕事外会話が減少した。<BR>(4) 自由放任的集団の場合は, 不平不満が著しく増大したが, その他では著しい変化はあらわれなかった。
著者
刀根 辰夫
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
教育・社会心理学研究 (ISSN:0387852X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.171-174, 1970 (Released:2010-03-15)
参考文献数
2

Y-G性格検査の結果による性格類型と, その各尺度に対応する項目による自己評定の結果とを, 尺度上での位置の一致度に着目して分析すると, 過大評価, 過小評価において関連が認められ, 特に不安定-不適応群に過大評価が多い傾向が認められた。
著者
梁井 迪子
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
教育・社会心理学研究 (ISSN:0387852X)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.25-34, 1960 (Released:2010-03-15)
参考文献数
12

時代を異にすることによって, 社会的文化的条件, 身体的発達条件の異る青年の精神発達の相違を知るために, 中学, 高校生を対象に, 質問紙による調査を行った。昭和初期の結果と比較すると, 自我意識の確立が現在のものに顕著で, 他者や権威に頼る割合が減っている。一方友人関係への信頼感は強くなって, 孤独感がへっている。青年の悩みでは, 勉強や将来の生活に関するものが増えている。死については報恩といった感情は少くなり, 面白い目にあってからと云うものが増え, 神仏についても, その存在を信じないものが多くなって, いわゆるドライな傾向が出ている。人生に対しては, 夢や希望が少くなり, 生活態度も積極的なものが少くなっている。そして個人的消極的態度が多くなり, 平凡な安定した生活を理想とする。その結果, 職業志望にあたっても, 会社員をあげるものがもっとも多い。終戦後の昭和24, 5年の結果との差は, 昭和初期とくらべたほどには, はっきりしておらず, むしろ現在の傾向は, この終戦直後の時代に既に始っていると考えられる。これによって, 戦争という事実を通して, 大きく変化した社会と, 加速的傾向にある身体発達の影響は, 明らかに青年の精神発達, 態度形成にかなりの変化を与えていると云えよう。
著者
河津 雄介 池田 勝昭 大野 博之 峰松 修
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
教育・社会心理学研究 (ISSN:0387852X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.77-85, 1966 (Released:2010-03-15)
参考文献数
12

修学旅行をひかえた117名のかなり乗り物酔いの程度のおもい中学3年生を対象にして, 乗り物酔いのhypnotherapyの効果をおさえるための実験的研究が試みられた。ここではとくに次のような点に考慮がはらわれた。事前におこなわれた実態調査により, 対象者群における乗り物酔いの程度, 状態, 条件等に関する資料をもとにして, 暗示が構成された。また, 催眠深度を成瀬の催眠尺度をもちいることにより客観的に測定し, 治療効果との関係が分析された。さらに, 効果の持続性を明確にとらえるために, 5ヵ月後にfollow up調査をおこない, 効果の持続性, 深度と効果の持続性との関係等について分析された。
著者
高橋 超
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
教育・社会心理学研究 (ISSN:0387852X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.61-69, 1970 (Released:2010-03-15)
参考文献数
15

本研究は, 印象形成過程における情報統合モデルとしての加算 (summation) -平均 (averaging) モデルの比較検討を行なったものである。被験者は, 市内の女子短期大学生68名で, 各Ssは, つぎの8 setの刺激情報を, 好意度の面から2つの20点評定尺度で判断した。(1) HH (2) LL (3) M+M+ (4) M-M- (5) HHM+M+ (6) LLM-M- (7) HHHH (8) LLLL得られた主な結果は, つぎのごとくである。1) HH-HHM+M+, LL-LLM-M-の各評定値の差を検討した結果, それぞれの差は有意でなかった。すなわち, 極性化した特性に, 中位に極性化した特性を加えても, 反応は増加せず, 平均モデルと一致した結果である。2) HH-HHHH, LL-LLLLの各評定値の差は, 後者についてのみ有意であった。すなわち, 刺激が増加すると, 反応も大となるset-size効果がみられる。3) 平均モデルの公式〔4〕に基づいて, HHHH, LLLLの予測値を求めて, 実測値と比較したが, ともに有意なずれはみられない。以上の結果は, いずれも平均モデルを支持するものであるが, 本研究では, 情報の質の差による統合化の差も伺がわれ, 今後, さらに綿密な分析が必要とされる。
著者
白樫 三四郎
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
教育・社会心理学研究 (ISSN:0387852X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.49-58, 1966 (Released:2010-03-15)
参考文献数
12

本研究はリーダーと成員の心理的距離の指標としてFiedler, F.E. が考案したLPC得点 (リーダーからみて共働者としてもっとも好ましくない人を彼が心理的にどのていど受容するかを示す。least preferred co-workerに対する好意度) の妥当性をOhio大学研究グループが抽出した, リーダー行動の二つの因子 (considerationとinitiating structure) との関連で検討しようとするものである。被験者は炭鉱採炭作業集団の監督者18名と部下473名。監督者のLPC得点はSD法式のテストに彼らが記入した結果から測定された。この得点に基づいてLPC得点が高い監督者 (8名) とLPC得点が低い監督者 (10名) とが決定された。両群の得点の平均値の差は統計的に有意であった。部下は5段階選択肢をもった質問項目に回答することによって, 自己の属する集団の監督者の行動を記述した。LPC得点の高い監督者の下の部下 (202名) と, LPC得点の低い監督者の下の部下 (271名) のそれぞれの監督者の行動に関する記述を比較して, 次のような結果がえられた。1) LPC得点が高い監督者はLPC得点が低い監督者と比較して, 集団内の人間関係により深い配慮を示すと部下から認知されている。つまりLPC得点が高い監督者は, より人間関係志向的であるといえる。2) LPC得点が低い監督者はLPC得点が高い監督者と比較して, 集団の目標達成, リーダーとしての役割遂行により大きなウェイトをかけていると部下から認知されている。つまりLPC得点が低い監督者は, より役割志向的であるといえる。3) これらのことから, LPC得点に関するFiedler, F.E. の解釈の妥当性はいちおう検証されたと考えられる。
著者
三隅 二不二 関 文恭 篠原 弘章
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
教育・社会心理学研究 (ISSN:0387852X)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.173-191, 1969-03-15 (Released:2010-03-15)
参考文献数
23

本研究は, 討議集団におけるPM機能を, 集団成員による, 他者評定にもとづいて, 評定尺度の項目作成を試みた。第1研究から第4研究までの一連の因子分析による尺度項目の検討を行なった。その結果, 本研究で用いた評定尺度項目は, 討議におする2つの次元, すなわち討議の目標達成次元 (P次元) と討議の過程維持次元 (M次元) を測定していることが明確にされた。本研究で用いた討議集団のPM評定尺度にBurk (1967) の研究結果を加えると, P次元の項目には17項目, M次元の項目には14項目が含まるものとして考察された。