著者
埴原 和郎 岡村 道雄
出版者
日本人類学会
雑誌
人類學雜誌 (ISSN:00035505)
巻号頁・発行日
vol.89, no.2, pp.137-143, 1981

この研究は,墓壙内とそれ以外の場所で発見された石鏃の特徴を統計学的に分析し,副葬された石鏃が特別に製作されたものかどうかを検討したものである。<br>分析のために使用した石鏃は,北海道上磯郡木古内町&bull;縄文時代晩期札苅(さつかり)遺跡より出土したもので,1つの墓壙より出土したもの57例,墓壙外より出土したもの62例である。<br>各石鏃について6種の計測を行ない,それらの平均値の差を検定したところ,全長および先端長以外では有意の差は認められなかった。このことから,墓壙内外の石鏃が同一母集団に属すること,ならびに墓壙外のものには,使用によって先端が破損したものや再加工されたものが含まれるために,全長ならびに先端長が短くなったことを示すものと考えられる。<br>次に各計測値の分散の差を検定したところ,墓壙内の分散は墓壙外の分散より有意に小さいことが明らかとなった。この結果は,墓壙に副葬された石壙が,何らかの基準に基づいて人為的に選択されたことを反映していると考えられる。<br>以上のことから,副葬された石壙は1)日常使用品のなかから未使用品,又は比較的新しいもので,しかも大きさならびに形態が比較的よく揃うように選択されたものか,2)副葬用として特別に製作あるいは形状がととのえられたものか,あるいは,3)その混合物から構成されていることが推測された。

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