- 著者
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片野 修
- 出版者
- The Ichthyological Society of Japan
- 雑誌
- 魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
- 巻号頁・発行日
- vol.37, no.3, pp.246-255, 1990
カワムツ<I>Zacco temmincki</I>の体長・体重・生殖腺重量および二次性徴の変異と相互関係について解析した.個体の肥満度とGSI値は前繁殖期に著しく増加した.体長とGSI値は雌では後繁殖期を除けば正の相関関係にあったが, 雄では負の相関関係を示すか, 有意な相関を示さなかった.肥満度とGSI値の個体変異は前繁殖期および繁殖期に増大した.婚姻色と頭部の追星は雌雄ともに一年中みられたが, 繁殖期の雄でもっとも顕著であった.臀鰭上の追星は繁殖期の雄に限って発達した.これらの二次性徴の発達は必ずしも個体の成熟や高い繁殖能力を示すものではなく, 体の大きさと連関していた.婚姻色は追星の発達と体の大きさを知らせる個体間の信号として, 頭部追星は個体間の闘争のための武器として, 臀鰭上の追星は産卵時に産卵床を掘りおこす道具として発達すると推定される.