著者
上出 健二 今中 明子
出版者
The Society of Polymer Science, Japan
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.32, no.9, pp.537-544, 1975
被引用文献数
2

ナイロン6分別区分 (数平均分子量<I>M<SUB>n</SUB></I>=830~43200) の融液からの等温結晶化現象を示差走査熱量法によって解析した. Avrami式θ=exp (-<I>kt<SUP>n</SUP></I>) (θ=未結晶化分率, <I>k</I>=速度定数, <I>t</I>=結晶化時間) のベキ係数<I>n</I>は結晶化の進行につれて6から1へ急激に減少する. これは分別結晶化によるのではなく, 結晶化機構の変化に原因する. <I>n</I>は結晶化温度<I>T</I><SUB>c</SUB>が高いほど, <I>M<SUB>n</SUB></I>が大きいほど大きくなる傾向がある. <I>M<SUB>n</SUB></I>が大きくなると結晶化速度は小さくなる. これは分子鎖の拡散の活性化エネルギーが過冷却度よりもより支配的であるとして説明される. 等温結晶化過程で生成した結晶の融解曲線は一次結晶化終了時には場合により3山ピーク (低温より, <I>T</I><SUB>m</SUB><SUB>2 (1) </SUB>, <I>T</I><SUB>m</SUB><SUB>2 (2) </SUB>, <I>T</I><SUB>m</SUB><SUB>2 (3) </SUB>と名付ける) を示す. 高温側の<I>T</I><SUB>m</SUB><SUB>2 (3) </SUB> ピークは<I>T</I><SUB>m</SUB><SUB>2 (2) </SUB> ピークが昇温過程において再配置したものの融解に対応する. <I>T</I><SUB>m</SUB><SUB>2 (2) </SUB> ピークは主ピークでラメラ結晶の融解に対応する. 低温側の<I>T</I><SUB>m</SUB><SUB>2 (1) </SUB> ピークは結晶化後期に発生し, <I>T</I><SUB>c</SUB>よりも常に数℃高い. <I>T</I><SUB>m</SUB><SUB>2 (2) </SUB> ピーク→<I>T</I><SUB>m</SUB><SUB>2 (3) </SUB> ピークへの転移は分子量が小さく, <I>T</I><SUB>c</SUB>が低いほど起こりやすい.

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