著者
福岡 義和 田中 啓一 野口 雅志 酒井 晃 萩中 隆博 中村 武夫 田近 栄司 神田 静人 加藤 正博 長谷川 真常
出版者
Japanese Society of Chemotherapy
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.150-157, 1986

新しく開発された経口セフェム系抗生剤T-2588 (T-2525として100mg力価) を健常成人4例および種々の程度の腎機能障害者14例に経口投与し, その抗菌活性物質であるT-2525の体内動態を検討した。腎機能の指標としては24時間内因性クレアチニンクリアランス (Ccr) を用い, 薬動力学的解析は吸収に遅れがあるとしたone-compartment open modelを用いた。<BR>T-2525の最高血清中濃度は腎機能に影響されることなく投与後4時間に得られたが, Ccr20~30ml/minの腎機能障害者では正常者に比べ高値を示す傾向がみられた。血清中濃度半減期 (t<SUB>1/2</SUB>) は腎機能正常者で0.83±0.02時間と計算され, 腎機能の低下に伴い延長した。排泄速度定数KelはCcrと良く相関し (r=0.739, p<0.005), 一次回帰式Kel=-0.053+0.0113Cer (Ccr: 20~80) が得られた。<BR>腎機能正常者におけるT-2525の投与後8時間までの尿中回収率は平均22.2±1.9%で, 腎機能の低下に伴い低値を示した。<BR>Ccr40~70ml/minの軽度腎障害者では本剤100mg1日3回の連続投与によってもほとんど体内蓄積の可能性はないが, Ccr20~30ml/minの腎障害者では連続投与によりC<SUB>max∞</SUB>およびC<SUB>min∞</SUB>が上昇することが推定された。

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