著者
川原 和也 後藤 俊弘 川原 元司 島田 剛 大井 好忠 花房 明憲 竹 三郎 永田 進一 益田 正隆
出版者
Japanese Society of Chemotherapy
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.36, no.9, pp.1184-1198, 1988

新しいキノロン系化学療法薬剤であるT-3262に対し, 基礎的・臨床的に検討した結果, 以下の結論を得た。<BR>尿路感染症患者の尿から分離された臨床株について本剤の抗菌力を測定し, Ciprofloxacin (CPFX), ofloxacin (OFLX) と比較検討した。<I>Citrobacter freundii</I> (<I>C.freundii</I>) は21株, 他の菌種は30株を対象とした。<I>Staphylococcus</I> spp., <I>Enterococcus faecalis</I>, <I>Klebsiella pneumoniae</I>に対してはT-3262が最も優れた抗菌力を示し, <I>Escherichia coli</I>, <I>Enterobacter cloacae</I>, <I>Pseudomonas aeruginosa</I>に対してはCPFXとほぼ同等の抗菌力を示し, <I>Serratia marcescens</I>に対してはCPFXとOFLXの中間の抗菌力であり, <I>C.freundii</I>, <I>Proteus mirabilis</I>, <I>Proteus vulgaris</I>に対してはCPFXが最も優れた抗菌力を持ち, T-3262とOFLXは同等であった。<BR>14例の急性単純性膀胱炎, 1例の淋菌性尿道炎の患者にT-3262を1回75~150mg, 1日2~3回, 3~7日間投与し, 24例の慢性複雑性尿路感染症の患者には1回150m9, 1日2~3回, 5~15日間投与した。UTI薬効評価基準に合致した急性単純性膀胱炎9例では著効5例, 有効4例で有効率100%であり, 慢性複雑性尿路感染症19例では著効10例, 有効6例, 無効3例で有効率は84.2%であった。淋菌性尿道炎の1例は, 主治医判定で有効であった。<BR>臨床検査値の異常はGOT, GPTの上昇, 好酸球の上昇が各1例認められたがいずれも軽度であり, 投与終了後速やかに正常に復した。また自他覚的な副作用は認めなかった。

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