著者
中村 善紀 宮澤 健 井口 欽之蒸 北原 昇 松尾 俊彦
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.445-452, 1979
被引用文献数
1

日本において高山病は通常3,000m以上の高度で登山者におこるが, 低地へ移送することによつて迅速に症状は改善され治癒するので, 本邦での剖検例は全く報告されていない. 当病院は海抜600mの地にあり, 日本アルプス最寄りの松本市にあるため, 毎年数名の本症患者が入院して数日間で軽快退院している. 最近2例の死亡者があり, 剖検の機会があつたので報告する.<br>症例1 23才 女 槍ケ岳(3,179m)に登頂し高山病にかかり, 低酸素血症, 錐体路徴候, 昏睡に陥り, 発病11日後に死亡した. 剖検では回復期の肺浮腫, 多数の出血巣, 肺胞内の硝子化した滲出物を認め, 脳で神経膠細胞増殖を伴う脳白質の血管周囲病巣を認め, 点状出血が多数認められた.<br>症例2 16才 男 唐松岳(3,100m)に登り高山病となる. 低酸素血症, 錐体路徴候, 昏睡を示し, 発病後5日で死亡した. 剖検では心疾患によらない著明な肺浮腫, 脳白質に限局した血管周囲性脱髄と出血が特異的であつた.<br>2例とも同じような臨床経過と, 肺浮腫と出血並びに脳白質の浮腫と点状出血を示した.

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編集者: Alpsdake
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