著者
中村 善紀 宮沢 健 井口 欽之蒸 北原 昇 松尾 俊彦
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.351-359, 1979-04-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
25

高山病は適切な処置をとれば, まことに治りやすい急性疾患であるが, 処置を誤れば死に至る疾病である. 昭和46年から昭和53年8月まで当院へ入院した19例の高山病患者について臨床的観察を行つた.対象患者は男17例, 女2例で, 年令は29才以下18例, 52才1例であつた. うち死亡2例であつた. 登山歴のあるもの11例で, そのうち5例は高山病を経験していた. 高山病をおこした山岳は槍ヶ岳(3,179m)が最も多く7例, 次いで穂高連峰(3,000m)5例であつた. 高山病19例の入院した季節は夏山シーズン14名, 冬山シーズン4例で, 死亡者2例は夏山にみられた.高山病発症時の症状と入院時の症状はかなり異なつておる. 一般に本症は低地に移送すれば症状は軽減するからである. その症状を大別すると脳症状, 呼吸器症状, 眼症状である. 低地に移すと脳症状は急速に改善するが呼吸器症状と眼症状は残るので, 高地性肺水腫や網膜出血として観察される.高所反応が現れたら可及的速やかに低地に転送すべきであつて, 脳症状が固定すると死の危険がある.
著者
中村 善紀 宮澤 健 井口 欽之蒸 北原 昇 松尾 俊彦
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.445-452, 1979
被引用文献数
1

日本において高山病は通常3,000m以上の高度で登山者におこるが, 低地へ移送することによつて迅速に症状は改善され治癒するので, 本邦での剖検例は全く報告されていない. 当病院は海抜600mの地にあり, 日本アルプス最寄りの松本市にあるため, 毎年数名の本症患者が入院して数日間で軽快退院している. 最近2例の死亡者があり, 剖検の機会があつたので報告する.<br>症例1 23才 女 槍ケ岳(3,179m)に登頂し高山病にかかり, 低酸素血症, 錐体路徴候, 昏睡に陥り, 発病11日後に死亡した. 剖検では回復期の肺浮腫, 多数の出血巣, 肺胞内の硝子化した滲出物を認め, 脳で神経膠細胞増殖を伴う脳白質の血管周囲病巣を認め, 点状出血が多数認められた.<br>症例2 16才 男 唐松岳(3,100m)に登り高山病となる. 低酸素血症, 錐体路徴候, 昏睡を示し, 発病後5日で死亡した. 剖検では心疾患によらない著明な肺浮腫, 脳白質に限局した血管周囲性脱髄と出血が特異的であつた.<br>2例とも同じような臨床経過と, 肺浮腫と出血並びに脳白質の浮腫と点状出血を示した.

1 0 0 0 OA 高山病の研究

著者
中村 善紀 宮澤 健 井口 欽之蒸 北原 昇 松尾 俊彦
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.445-452, 1979-05-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
28

日本において高山病は通常3,000m以上の高度で登山者におこるが, 低地へ移送することによつて迅速に症状は改善され治癒するので, 本邦での剖検例は全く報告されていない. 当病院は海抜600mの地にあり, 日本アルプス最寄りの松本市にあるため, 毎年数名の本症患者が入院して数日間で軽快退院している. 最近2例の死亡者があり, 剖検の機会があつたので報告する.症例1 23才 女 槍ケ岳(3,179m)に登頂し高山病にかかり, 低酸素血症, 錐体路徴候, 昏睡に陥り, 発病11日後に死亡した. 剖検では回復期の肺浮腫, 多数の出血巣, 肺胞内の硝子化した滲出物を認め, 脳で神経膠細胞増殖を伴う脳白質の血管周囲病巣を認め, 点状出血が多数認められた.症例2 16才 男 唐松岳(3,100m)に登り高山病となる. 低酸素血症, 錐体路徴候, 昏睡を示し, 発病後5日で死亡した. 剖検では心疾患によらない著明な肺浮腫, 脳白質に限局した血管周囲性脱髄と出血が特異的であつた.2例とも同じような臨床経過と, 肺浮腫と出血並びに脳白質の浮腫と点状出血を示した.
著者
中村 善紀 宮沢 健 井口 欽之蒸 北原 昇 松尾 俊彦
出版者
Japanese Society of National Medical Services
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.351-359, 1979

高山病は適切な処置をとれば, まことに治りやすい急性疾患であるが, 処置を誤れば死に至る疾病である. 昭和46年から昭和53年8月まで当院へ入院した19例の高山病患者について臨床的観察を行つた.<br>対象患者は男17例, 女2例で, 年令は29才以下18例, 52才1例であつた. うち死亡2例であつた. 登山歴のあるもの11例で, そのうち5例は高山病を経験していた. 高山病をおこした山岳は槍ヶ岳(3,179m)が最も多く7例, 次いで穂高連峰(3,000m)5例であつた. 高山病19例の入院した季節は夏山シーズン14名, 冬山シーズン4例で, 死亡者2例は夏山にみられた.<br>高山病発症時の症状と入院時の症状はかなり異なつておる. 一般に本症は低地に移送すれば症状は軽減するからである. その症状を大別すると脳症状, 呼吸器症状, 眼症状である. 低地に移すと脳症状は急速に改善するが呼吸器症状と眼症状は残るので, 高地性肺水腫や網膜出血として観察される.<br>高所反応が現れたら可及的速やかに低地に転送すべきであつて, 脳症状が固定すると死の危険がある.