著者
渡慶次 力 柳 哲雄
出版者
The Oceanographic Society of Japan
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.13, no.5, pp.475-491, 2004
被引用文献数
2

瀬戸内海沿岸と太平洋沿岸の潮位記録,人工衛星から得られた海面高度偏差記録,黒潮流轄の位置記録,四国沖の水温・塩分鉛直断面観測記録を用いて,2001年9月17日から20日に広島で発生した冠水被害を伴う高潮位の原因について研究した。その結果,近年広島における年平均潮位は地盤沈下により上昇(5.0mm y<SUP>-1</SUP>)しているため,潮位の季節変動が最大値をとる夏季から秋季に高潮泣か発生しやすい傾向にあることが判明した。特に,2001年9月に広島で発生した冠水被害を伴う高潮位は,これらの要因に瀬戸内海を含む太平洋沿岸の+10cm程度,約4か月周期を持つ海面上昇が重なったために発生した。高潮位に影響を与えた約4か月周期の海面上昇は,四国沖約250kmの海面高度偏差が負であり,四国沖の黒潮の接岸傾向時に発生していた。四国沖の海面高度偏差の変動は,中規模渦によるものと類推され,それが四国沖の黒潮離接岸に影響を与えて,瀬戸内海を含む四国沿岸における約4か月周期の海面昇降をもたらした可能性がある。近年の広島における年平均潮位は地盤沈下に伴い上昇傾向にあるために,夏季から秋季の大潮時に太平洋から瀬戸内海へ偏差10cm程度の海洋擾乱が加わると,通常の満潮面から約30cm 高いところに建造されている厳島神社においては,冠水被害を伴う高潮位が今後も頻繁に発生する可能性がある。

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