著者
石川 和雄 伊藤 幸彦 中村 啓彦 仁科 文子 齋藤 友則 渡慶次 力
出版者
一般社団法人 水産海洋学会
雑誌
水産海洋研究 (ISSN:09161562)
巻号頁・発行日
vol.83, no.2, pp.93-103, 2019

<p>東シナ海由来のアカアマダイ卵・仔稚魚の宮崎県沿岸域への輸送過程を,海洋同化システムの再解析値を用いた粒子追跡実験により調べた.主産卵季・産卵場である秋季・東シナ海陸棚縁辺から輸送される粒子のうち,平均的な着底時期とされる45日目に宮崎県沿岸域に到達したのは全体の0.01–0.7%で,その約90%が大隅海峡を経由,トカラ海峡経由は約10%であった.宮崎県への到達粒子数は,大隅海峡を通過する粒子数と有意な正の相関があったが,大量に到達する事例には黒潮小蛇行に伴う大隅分枝流の減速が関係していた.宮崎県沿岸に到達しなかったものを含め,太平洋側に出た粒子は全体の10.8%,日本海側に出た粒子は1.5%であり,88%は東シナ海に留まった.これらの結果より,東シナ海のアカアマダイは域内で再生産しつつ,日本沿岸に仔稚魚を供給していること,宮崎県沿岸に対しては大隅海峡が主要な輸送経路であることが示唆された.</p>
著者
渡慶次 力 柳 哲雄
出版者
The Oceanographic Society of Japan
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.13, no.5, pp.475-491, 2004
被引用文献数
2

瀬戸内海沿岸と太平洋沿岸の潮位記録,人工衛星から得られた海面高度偏差記録,黒潮流轄の位置記録,四国沖の水温・塩分鉛直断面観測記録を用いて,2001年9月17日から20日に広島で発生した冠水被害を伴う高潮位の原因について研究した。その結果,近年広島における年平均潮位は地盤沈下により上昇(5.0mm y<SUP>-1</SUP>)しているため,潮位の季節変動が最大値をとる夏季から秋季に高潮泣か発生しやすい傾向にあることが判明した。特に,2001年9月に広島で発生した冠水被害を伴う高潮位は,これらの要因に瀬戸内海を含む太平洋沿岸の+10cm程度,約4か月周期を持つ海面上昇が重なったために発生した。高潮位に影響を与えた約4か月周期の海面上昇は,四国沖約250kmの海面高度偏差が負であり,四国沖の黒潮の接岸傾向時に発生していた。四国沖の海面高度偏差の変動は,中規模渦によるものと類推され,それが四国沖の黒潮離接岸に影響を与えて,瀬戸内海を含む四国沿岸における約4か月周期の海面昇降をもたらした可能性がある。近年の広島における年平均潮位は地盤沈下に伴い上昇傾向にあるために,夏季から秋季の大潮時に太平洋から瀬戸内海へ偏差10cm程度の海洋擾乱が加わると,通常の満潮面から約30cm 高いところに建造されている厳島神社においては,冠水被害を伴う高潮位が今後も頻繁に発生する可能性がある。
著者
渡慶次 力 柳 哲雄
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.13, no.5, pp.475-491, 2004-09-05
被引用文献数
2

瀬戸内海沿岸と太平洋沿岸の潮位記録,人工衛星から得られた海面高度偏差記録,黒潮流轄の位置記録,四国沖の水温・塩分鉛直断面観測記録を用いて,2001年9月17日から20日に広島で発生した冠水被害を伴う高潮位の原因について研究した。その結果,近年広島における年平均潮位は地盤沈下により上昇(5.0mm y^<-1>)しているため,潮位の季節変動が最大値をとる夏季から秋季に高潮泣か発生しやすい傾向にあることが判明した。特に,2001年9月に広島で発生した冠水被害を伴う高潮位は,これらの要因に瀬戸内海を含む太平洋沿岸の+10cm程度,約4か月周期を持つ海面上昇が重なったために発生した。高潮位に影響を与えた約4か月周期の海面上昇は,四国沖約250kmの海面高度偏差が負であり,四国沖の黒潮の接岸傾向時に発生していた。四国沖の海面高度偏差の変動は,中規模渦によるものと類推され,それが四国沖の黒潮離接岸に影響を与えて,瀬戸内海を含む四国沿岸における約4か月周期の海面昇降をもたらした可能性がある。近年の広島における年平均潮位は地盤沈下に伴い上昇傾向にあるために,夏季から秋季の大潮時に太平洋から瀬戸内海へ偏差10cm程度の海洋擾乱が加わると,通常の満潮面から約30cm 高いところに建造されている厳島神社においては,冠水被害を伴う高潮位が今後も頻繁に発生する可能性がある。
著者
渡慶次 力 柳 哲雄
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.395-405, 2003-07-05
被引用文献数
1

沖縄本島では夏季台風が接近するため高潮の被害が深刻な問題となっている。一方, 2001年7月20日から23日に那覇において,観測史上初めて低気圧の通過や強風のない状況でも道路冠水の被害が発生して社会問題となった。そこで沖縄本島の那覇で観測された潮位記録と衛星から得られた海面高度偏差記録を用いて,台風通過のあった1997年8月17日の高潮位と,低気圧の通過や強風を伴わない状況で発生した2001年7月22日の高潮位の原因について調べた。その結果,高潮位を発生させた潮位の長期変動において,1997年と2001年は近年における那覇の経年的な年平均潮位の上昇と,夏季に最大値となる季節変動であるSa潮の振幅が大きかったことから,冠水被害を伴う高潮泣か発生しやすい傾向にあったことがわかった。さらに那覇において高潮位を発生させた潮位の短期変動の要因に関して,1997年8月17日においては台風通過に伴う海面上昇, 2001年7月22日においては直径を200kmから500kmと変化しながら,西の方向へ約6.3 cm s^<-1>の移動速度で北緯29度,東経157度付近から沖縄本島まで到達した中規模渦(10cm以上の正偏差域で定義される)による海面上昇が,主な要因であったことが解明された。