- 著者
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真部 真里子
- 出版者
- 一般社団法人 日本調理科学会
- 雑誌
- 日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
- 巻号頁・発行日
- vol.38, no.2, pp.148-154, 2005
調理効率のよいカルシウム摂取のためには,日々の食事を有効に活用することが重要である。そのために,食材中のカルシウム(Ca)含量だけでなく,調理によるカルシウム吸収効率の変化を明らかにする必要である。本報では,未調理ならびに調理済みの牛乳の人工消化処理液をCaco-2細胞単一層に添加し,調理によるCa吸収への影響を検討した。未調理の牛乳中のCaは,他のCa源よりも吸収量が多かった。しかし,きなこや抹茶粉末を添加すると,無添加の牛乳と比較して有意にCa吸収量が低下した。また,65℃ の加熱したホットミルクやベシャメルソースに調理しても,Ca吸収は低下した。また,これらのCa吸収量の変化は,抹茶粉末添加の場合は細胞間経路の阻害により,他の試料の場合は,Caの溶解度変化など細胞間経路に対する間接的な影響によることが示唆された。このように,食事からの効率的なCa吸収のためには,調理によるCa吸収の変化について考慮する必要がある。