著者
堀江 秀樹 玉木 有子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.378-382, 2008-12-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
5

新しく切ったキュウリ果実の表面は渋い。果皮のすぐ内側の維管束から滲出する液にはギ酸が含まれることが明らかにされた。ギ酸水溶液は渋味があるので,維管束に局在するギ酸がキュウリにおける渋味物質であると考察した。キュウリの切断片を残った果実とこすりあわせると,果実中の不快な味が抑制されるという伝承がある。中央部で果実を切断した後切り口から滲出する液量について,こすりあわせ処理をした果実と処理していない果実の間で比較した。こすりあわせ処理の結果,滲出液量は減少した。キュウリの渋味がこすりあわせ処理によって抑制されることも官能評価によって確認した。こすりあわせ処理は維管束中のギ酸を含む液を廃棄するのに有効であり,その結果果実の渋味を抑制するものと結論した。
著者
鈴野 弘子 石田 裕
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.161-169, 2013 (Released:2013-08-20)
参考文献数
24

牛肉,鶏肉,じゃがいもを硬度の異なる水で水煮して,煮汁のミネラル成分含有量,破断強度測定,組織構造の観察,官能評価を行い,水の硬度が煮込み料理に及ぼす影響を調べた。硬水で牛肉,鶏肉,じゃがいもを水煮したところ,水中のCa,Mgがこれらに吸着した。KとNaは,軟水より硬水で多く溶出した。破断強度値は,牛肉ではエビアンを用いて120分水煮したものが有意に小さく,じゃがいもは硬水ほど大きくなった。エビアンで水煮した牛肉は,筋内膜および筋周膜と,筋線維束の分離が顕著であった。じゃがいもは,硬水で水煮するとでん粉の糊化が抑制され,細胞同士が凝集した組織構造になった。エビアンで水煮すると,肉はやわらかくなり,じゃがいもは軟水より硬くなったことから煮崩れが防げると推測でき,肉や野菜も食する煮込み料理には,ある程度(硬度300程度)の硬度の水が適することが示された。
著者
今野 暁子 及川 桂子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.39-44, 2003-02-20
参考文献数
12
被引用文献数
2

The extent to which iron is eluted by different cooking methods from an iron pot during cooking was investigated. The addition of seasonings and the use of oil, as well as the effect of heating time,・were evaluated. The amount of iron eluted tended to be less with the use of oil, and was also affected by the seasoning added during cooking. In particular, the amount of iron eluted was markedly increased when vinegar was added. The amount of iron eluted also increased with increasing heating time. 78-98% of the iron that was eluted from the iron pot was in the form of easily absorbed ferrous compounds. Added vinegar resulted in 98% of the eluted iron consisting of ferrous compounds which exhibited outstanding stability. The results of this study demonstrate that the amount of iron supplied depended on the cooking method employed.
著者
今野 暁子 及川 桂子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.39-44, 2003-02-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
12
被引用文献数
1

一般の調理に鉄鍋を使用することによりどの程度の鉄が溶出するかについて検討し,以下の結果を得た.1.鉄の溶出量は添加調味料に影響され,食酢,トマトケチャップ,食塩の順に多く,特に食酢添加における鉄溶出量は顕著に増加した.さらに加熱時間が長いほど,鉄溶出量が増加した.2.鉄の溶出量は油の使用により減少する傾向がみられた.3.鉄鍋で調理した食物中の鉄含量はステンレス鍋で調理したものに比べて多かった.4.鉄鍋,鉄びんから溶出した鉄の78~98%が吸収されやすい2価鉄であり,中でも食酢添加では98%とほとんど2価鉄で,しかも安定性に優れていた.以上の結果は,調理における鉄鍋の使用は生体利用性の高い鉄摂取量を増加させ,貧血改善に有効であることを示唆するものである.
著者
柴田(石渡) 奈緒美 廣瀬 純子 宇田川 瑛里 中澤 暁輝 松田 寛子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.264-271, 2017 (Released:2017-12-21)
参考文献数
23
被引用文献数
1

調理における時間の短縮・簡略化の代表例として,米飯を冷凍保存し,電子レンジを用いて解凍する冷凍米飯が挙げられるが,アンケート調査により冷凍米飯の品質に不満を有している割合が高いことが報告されている。そこで本研究は炊飯後に米飯を冷ます工程に着目し,冷まし工程終了時と電子レンジ解凍後の含水率,物性値さらには食後の血糖値上昇度の指標となるeGI値を測定した。炊き立ての米飯の測定値を最も良い品質と仮定すると,冷まし工程を施さず,直ちに冷凍することで解凍後の含水率,かたさの全てにおいて炊き立ての数値と有意差がないことが分かった。また,冷まし工程を施す場合は冷まし工程時にラップで包装することで,炊き立ての品質に近い冷凍米飯を調製できることが示唆された。また,4種類の試料のeGI値は全て炊き立てと有意差がなかった。したがって,冷まし工程の有無に伴う米飯を摂取した際,食後の血糖値の上昇に影響を与えないことが示唆された。
著者
沢村 信一
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.231-237, 2011-06-05
参考文献数
18

現代の抹茶は,微細に粉砕され,滑らかな食感である。このように微細になったのは,茶の栽培技術や粉砕道具の発達を考慮すると近世になってからと考えられる。粉砕の面から抹茶を4期に分けて再現し,その粒度を測定し味の評価を行った。薬研で粉砕した2種類の抹茶は,粒度が粗く,ざらつきを感じた。味は,強い苦味を感じた。2種類の茶臼で粉砕した抹茶は,微細に粉砕され,滑らかな食感であった。味は,まろやかでうま味を感じた。
著者
中町 敦子 中村 恵子 四宮 陽子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.151-158, 2004-05-20
参考文献数
12
被引用文献数
3

デュラム小麦のセモリナ粉100%使用,標準ゆで時間11分のスパゲティを用いて,ゆで時間を5~20分まで変えて試料を調製し,アルデンテについての官能評価,水分音量・ゆで歩留測定,拡大写真撮影,糊化度測定,破断試験を行い,以下の結果を得た。1)官能検査の結果,9,10,11分ゆでが「アルデンテである」と評価され,10,11分ゆでが「少し芯がある」,「好ましい」と評価されたので,好ましいアルデンテは10,11分ゆでであった。2)日本人のアルデンテの10,11分ゆでは,ゆで歩留2.3~2.4,水分含量63~64%に相当し,これらは中心の白い芯がなくなった状態で,糊化度は90%以上であった。イタリア人のアルデンテはゆで歩留2.1~2.2とすると,ゆで時間8~9分,水分含量約60%に相当し,中心にまだら状に白い芯が残り,糊化度は約80%であった。3)破断曲線を微分すると,ゆで時間の違いによってダブルピーク,肩,シングルピークの3つに分類された。日本人が好む10,11分ゆではシングルピークの形で,イタリア人が好む8,9分ゆでは肩がある形であった。破断曲線の微分はスパゲティの芯のゆで状態の指標になった。4)20分放置により,拡大写真撮影では中心部への水分移動が見られたが,糊化度はゆで直後と差が認められなかった。また破断曲線の肩はシングルピークになり,破断特性値は全体的に低下した。
著者
田中 智子 坂本 須美子 岩月 聡史 茶山 健二
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.375-380, 2011 (Released:2014-04-25)
参考文献数
29

セレンは必須微量元素の1つで健康増進作用や疾病予防作用,とりわけガンの発生や転移を抑制することで,注目を集めている元素である。食品中のセレン含有量を水素化物発生原子吸光法を用い測定した。測定条件は,NIST SRM-1568 aの米粉を用い認証値 380±40 ppbに対し,382±17 ppbで妥当性を確認した。41種類の豆腐中セレン含有量を測定した結果,国産と中国産大豆を用いた豆腐中セレン含有量は低く,カナダ・アメリカ産大豆を用いた豆腐は高かった。きな粉を測定した結果も,大豆の原産国がアメリカのセレン含有量は高く,国産大豆のきな粉は低くかった。
著者
辰口 直子 大 雅世
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.345-351, 2019-10-05 (Released:2019-10-11)
参考文献数
12

一定条件下で鶏卵のゆで加熱を行い,卵の中心温度と保持時間が凝固状態に与える影響を明らかにして,好みの凝固状態の温泉卵を作るための指標を提示する事を目的とした。 水温65℃,68℃,70℃一定で加熱した場合,卵中心温度は,65℃で30 分,68℃で28 分,70℃で27 分で水温近くに達した。その時,いずれの温度でも卵白の流動性があるが,到達温度によって異なり,卵黄の高さもそれぞれ異なった。温泉卵の形状は65℃では,卵白の流動性があり,210 分経過した後も広がり方は減るものの流動性が認められた。68℃では保持時間が長くなると流動性は減少し,70℃では30 分経過すると流動性がみられなくなった。卵黄は65℃,68℃では保持時間が長くなると高さが増す傾向にあったが,70℃では大きな差はみられなかった。中心温度と保持時間での卵白と卵黄の凝固状態が明らかになったので,これらの結果を利用して好みの成績を得る為の指標を作成した。
著者
畑江 敬子 奥本 牧子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.133-140, 2012 (Released:2014-03-14)
参考文献数
10

煮物の味は冷めるときにしみ込むという言い伝えを検証するために,ジャガイモ,ダイコン,コンニャクを2 cm角の立方体に成形し,1%食塩水中で食べられる軟らかさまで加熱後,0,30,50,80,95°Cで90分まで保温し,30分後と90分後に外層部と内層部の食塩濃度を測定した。温度降下条件を各設定温度に試料を加熱した鍋のまま移す緩慢条件と,氷水に鍋をつけて設定温度まで下げた後保温する急速条件の2種とした。いずれの条件でも,保温温度が高いほど,食塩の内部への拡散は大きく,このことは官能評価でも確認された。これらの結果から冷めるときに味がしみ込むということは見いだせなかった。ソレ効果についても検討したが,ソレ効果で煮物の調味料の拡散を説明することはできないことがわかった。冷めるときに味がしみ込むというのは,冷める時間に調味料が内部へ拡散することを言っているのではないかと考えられる。
著者
荒木 葉子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.308-312, 2001-08-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
10

We determined the residual surfactants, major components of kitchen detergents, on washed tableware by a simple and rapid method to demonstrate the suitability of this experiment as instructional material for home economics in high-school education.The residual surfactants were determined by the Ethyl Violet method with a simple, portable spectrophotometer.Among the six pieces of tableware analyzed, which were respectively made of porcelain, clay, polypropylene, lacquer, wood and plastic, the largest amount of detergents residue remained on the wooden cutting board.The detergent concentration varied with the washing condition in respect of the dilution of the detergent, temperature of water for rinsing, and flow of water.
著者
山本 誠子 奥村 麻里 大場 智美 為積 沙奈絵 松岡 博厚
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.309-314, 2009 (Released:2015-01-23)
参考文献数
14
被引用文献数
1

生姜搾汁の牛乳凝固性について塩化カルシウム添加脱脂乳を基質に用い検討した。生姜搾汁の乳凝固活性は調製後不安定であった。生姜搾汁に1mML-システインと1mML-アスコルビン酸の添加により-18℃~-20℃で9~11週間貯蔵後も約80%の乳凝固活性が保持された。乳凝固活性は脱脂乳5mlに対する添加量が生姜搾汁0~0.4mlの範囲内で直線的に上昇し,0.5mlにて飽和に達した。乳凝固活性は脱脂乳へ塩化カルシウム0~15mM添加の範囲内で直線的に上昇した。乳凝固活性はカルシウム濃度に依存していた。乳凝固活性は温度とともに上昇した。最高乳凝固活性は70℃であった。生姜搾汁を60℃,10分間加熱処理後の乳凝固活性は約50%減少し,70℃で完全に失活した。しかし,70℃,1分間の加熱処理後には乳凝固活性の83%が保持された。
著者
下藤 悟 大谷 貴美子 松井 元子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.335-342, 2013 (Released:2013-12-13)
参考文献数
20

銅ボウルで調製した泡立て卵白の特性について,銅イオンとオボアルブミンの反応性の観点から検討した。銅イオンは,泡立て卵白の起泡性には関与していなかったが,安定性に関与していた。動的粘弾性測定より,銅ボウルで調製した泡立て卵白は,ガラスボウルで調製したものと比べて,粘弾性が大きく,より安定な構造であることが示された。オボアルブミンの役割を明らかにするために,銅イオンとの反応性を検討した。銅イオンが存在することで,オボアルブミン溶液の遊離SH基量と疎水性の減少および,粘弾性向上が示された。さらにSDS-PAGEより分子量の大きなタンパク質が検出されたことから,銅イオンはオボアルブミンの分子間における架橋形成を促進していることが示唆された。銅ボウルで泡立て卵白を調製すると,銅イオンにより形成されたS-Cu-S架橋によって泡立て卵白の膜の粘弾性が向上する。このことによって不均化や薄膜化による破泡を抑え,泡沫安定性を向上させたと考えられる。
著者
三橋 富子 田島 真理子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.216-222, 2016 (Released:2016-07-01)
参考文献数
26
被引用文献数
1

水の硬度が緑茶浸出液の嗜好性に与える影響について,溶出成分の分析と官能評価を行って検討した。浸出液中の白色沈殿は硬度の上昇に伴って増加した。浸出液の水色は硬度の上昇に伴って黄色味が強くなり,明度が低くなったため,濃色化した。浸出液中のエピガロカテキンとエピガロカテキンガレートの濃度は硬度の上昇に伴って小さくなった。ビタミンCも同様に硬度の上昇に伴い顕著に低下した。浸出液中の遊離アミノ酸,カフェインおよび遊離糖は浸出液の種類による有意差はなかった。 官能評価で,Filetteで淹れた緑茶浸出液は蒸留水で淹れたものに比べて有意ににごりと甘味が強く,有意に好まれた。
著者
坂本 薫 森井 沙衣子 上田 眞理子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.193-199, 2015 (Released:2015-07-06)
参考文献数
34
被引用文献数
3

温水浸漬と低温浸漬が米の吸水率に与える影響について,浸漬水中の固形分を考慮して経時的に検討した。5~50°Cの温度で5~240分間米を浸漬し,米の吸水率を測定したところ,温水浸漬と低温浸漬では,吸水曲線が交差する現象が観察され,平衡状態まで吸水させた場合では,温水浸漬よりも低温浸漬の米の吸水率が高かった。浸漬水中の固形分の量を経時的に測定したところ,40°C,50°Cの温水浸漬では固形分は多く浸漬液中に懸濁していた。そこで固形分を加えた補正吸水率を算出したが,吸水曲線が交差する現象が同様に観察され,平衡状態では温水浸漬よりも低温浸漬の米の吸水率が高かった。
著者
畦 五月
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.308-319, 2015 (Released:2015-09-05)
参考文献数
43
被引用文献数
3

本研究では近現代に焦点をあてて,サメの食習慣を食用地域とその調理方法の観点から,あるいは特性の類似するエイとの対比において明らかにした。 現代においてサメは東北地方で,エイは中四国を中心に利用されている地域性のみられる魚である。サメの調理法は時代の変遷とともに若干多様性を示しながら変化したものの,刺身・湯引きや煮物を主な調理法とし現代まで受け継がれている。一方,エイは煮物を主な調理法として食べられている特徴が見られ,サメとエイでは若干調理法に違いが見られた。 含有される尿素によって鮮度低下が遅れるため長期間保存ができる共通した特徴を両魚は持つ。そのため山間部でも刺身を食べることができること,また様々な調理法で食べられること,地理的要因などが関係し,類似した地域性を維持しながら,今日まで両魚がハレの日の食材となりその食習俗を継承してきたと考えられる。