- 著者
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田中 ひかる
- 出版者
- 横浜国立大学技術マネジメント研究会
- 雑誌
- 技術マネジメント研究 (ISSN:13473042)
- 巻号頁・発行日
- vol.2, no.1, pp.42-55, 2003
現在、日本の生理用品の種類と性能は、世界一と言われている。しかしつい40 年前まで、日本女性は「蒸れる」「かぶれる」「ただれる」の三拍子揃ったゴム製の月経帯と脱脂綿を組み合せた不便な月経処置法を行っており、欧米に比べかなり遅れていた。このように月経処置法が日本で進歩しなかった背景には、社会学的視点から、月経不浄視など様々な理由が考えられる。このような慣習を破り、現在のような使い捨てナプキンを開発・販売、女性たちを物理的のみならず先駆的なコマーシャルによって精神的にも解放したのが、1961 年に坂井泰子が設立したアンネ社である。本稿の目的は、アンネ社について記録し、アンネ社が月経観に与えた影響を検証することである。<br> まず第1章第1節では、月経処置法の進歩を妨げていた月経に対する不浄視や偏見について触れ、それらがいかに女性たちを拘束してきたかを明らかにしている。第2節では、アンネナプキンが販売される以前、日本女性たちが行っていた月経処置法についてまとめた。第2章では、坂井泰子がアンネ社を設立してからライオンに吸収合併されるまでの過程をまとめ、アンネ社がアンネナプキンを普及させるために月経観の改革が必要だったこと、普及した結果月経観さらには女性の身体観までもが大きく変わったことを検証している。