- 著者
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稲垣 剛志
木村 昭夫
萩原 章嘉
佐々木 亮
新保 卓郎
- 出版者
- Japanese Association for Acute Medicine
- 雑誌
- 日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
- 巻号頁・発行日
- vol.24, no.4, pp.192-199, 2013
- 被引用文献数
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【目的】鈍的頭頸部外傷患者において,頸椎CT撮影の新たなclinical decision rule(CDR)を作成することを目的とした。【方法】Derivation研究の対象は2008年4月1日~2010年8月14日に当院へ救急搬送された頭頸部外傷患者のうち頸椎CTを施行した1,076症例,Validation研究の対象は2010年8月15日~12月31日に当院へ救急搬送された頭頸部外傷患者887例とし,診療録および救急患者データベースから後ろ向きに情報を得た。頸椎損傷の定義は骨折もしくは脱臼とした。頸椎損傷の有無と相関する因子を解析した後に,感度100%となるような新たなCDRを導けるか検討した。【結果】単変量解析では,年齢,後頸部痛の有無,神経学的異常所見の有無,来院時のGlasgow coma scaleスコアにおいてCT上の頸椎損傷所見の有無で有意差が認められた。また年齢が高い群で受傷機転における階段等からの転落の有無も有意差が認められた。二進再帰分割法を行った結果,意識障害や後頸部症状に加え,年齢や具体的な受傷機転を含めた新たな頸椎CT施行基準が導出され,感度100%を保ち,損傷の見逃しを回避することができた。以下に新基準により頸椎CTの適応となるものを示す。(1)GCSスコア13以下の患者。(2)GCSスコア14-15の患者で後頸部圧痛か神経学的異常所見を有する患者。(1) (2)以外の患者のうち,(3)60歳以上:受傷機転が階段等からの転落であった患者。(4)60歳未満:受傷機転がバイクの事故か墜落であった患者。【結語】従来より提唱されているGCSスコア,頸部症状,神経所見に加え,年齢や具体的な受傷機転を評価項目に含めた新しい基準は感度が高く,頸椎損傷の見逃しを回避しうるCDRである。