著者
荒井 耕 尻無濱 芳崇
出版者
The Health Care Science Institute
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.283-293, 2011

医療法人経営の複雑化と法人規模の拡大により,現場管理者へのある程度の権限移譲が進みつつある。そのため,各現場の業績を把握・評価したり,現場管理者に経営の自律性を働きかけたり,現場に期待する方向性を明確にしたりする必要性が増し,事業計画制度の重要性が増々高まっている。本研究では,多くの法人が事業計画制度を導入しており,財務関連事項を中心に目標管理され重視されているが,質に関連する事項も同時管理している法人も多くなっていることを明らかにした。また計画事項間の大半の因果関係をかなり考慮している法人も多く見られた。つまり,因果関係の考慮度や管理対象業績側面の多様性の高いBSC的性格を有する事業計画制度が見られるようになった。ただし因果関係考慮と視点包括度の両面からBSCとしての性格を持つ事業計画制度は,まだ十分には普及していない。また,現状の事業計画制度は,まだ分析的利用が中心ではあるが,権限移譲の進展とともに,働きかけ的利用の必要性が増々高まると考えられる。特に働きかけ的利用については,視点包括度と因果関係考慮度の両観点においてBSCとしての性格の強い事業計画制度を持つ法人の方が,利用度が高いことが判明している。働きかけ的利用の促進という点に加えて,医療界における多面的業績の統合管理や無形資産管理の重要性からも,BSCと親和性の高い事業計画制度の展開が重要である。

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