- 著者
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室野 重之
吉崎 智一
- 出版者
- 耳鼻と臨床会
- 雑誌
- 耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
- 巻号頁・発行日
- vol.56, no.1, pp.S39-S43, 2010
上咽頭癌組織中に EB ウイルス DNA や EB ウイルスに由来する蛋白、RNA が検出され、EB ウイルスと上咽頭癌の密接な関連が示唆されるとともに、上咽頭癌組織中の EB ウイルスは単クローン性であることが示され、上咽頭癌は EB ウイルスにより発癌することが確定的となった。この密接な関連は上咽頭癌の診断に応用され、EB ウイルス抗体価および EBERs に対する in situ hybridization が普及している。血清中の EB ウイルス DNA の定量は、一般レベルまでには普及していないが、治療後の病勢も反映することから利用価値は高いと思われる。一方、EB ウイルスに着目した上咽頭癌治療は、臨床への応用は散見される程度であるが、EB ウイルスの感染状態の複製サイクルへの誘導や抗ウイルス薬の利用などが期待される。