- 著者
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佐藤 史子
吉尾 雅春
- 出版者
- JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
- 雑誌
- 日本理学療法学術大会
- 巻号頁・発行日
- vol.2002, pp.528-528, 2003
【目的】身長は様々な指標において基礎となる変量である。一般に身長の計測には身長計が用いられる。しかし、拘縮を伴う者や直立不能な者の身長の計測方法についての報告は、海外では様々な研究が行われているものの日本では少ない。今回、拘縮を伴う成人の身長の計測方法について検討したので報告する。【方法】対象は、20歳代の健常男性40名、女性40名の計80名、内訳は立位身長が150cm代、160cm代の女性が各20名、立位身長が160cm代、170cm代の男性が各20名であった。計測項目は、立位身長、水平身長、指極、頭頂大転子間距離、頭頂外果間距離、大腿長、下腿長、上腕長、前腕長、外果足底間距離とし、メジャーを用いて行った。身長の日内変動による誤差を最小限にするため、計測時間は10:00から14:00とし、被験者一人につき所用時間は10分程度とした。これらの計測値を用いて、立位身長との関係について回帰式を導き出した。統計学的検討は、有意水準5%として、一標本t検定、2変量の関係について回帰分析、ピアソンの相関係数を使用した。 【結果および考察】指極と立位身長との間に有意な相関を認め、上肢に拘縮のない場合には有効な方法であると確認できた。各計測値から求めた回帰式と立位身長との関係では、Haboubi N.Y.による計算式でも使用されている上肢長(上腕長+前腕長)と膝足底間距離(下腿長+外果足底間距離)で他計測部位に比べ、相関係数0.736、0.777とやや高い関係を示した。Haboubi N.Y.による計算式を利用して算出した身長と計測した身長との間には有意な誤差が認められたため、修正を加え、上肢長を用いた式1)身長=1.56×上肢長+sex、(sex:男性83.07、女性78.52)、膝足底間距離を用いた式2)身長=2.08×膝足底間距離+sex、(sex:男性75.18、女性71.70)を導き出した。各計算値と立位身長との相関は、式1)0.8342、式2)0.8364であった。特に上肢長から求める式1)は、上肢長が関与する指極と立位身長との間に有意な相関が認められたこと、立位・臥位の両者で身長に対する上肢長の割合に変化がなかったこと、日本人の100年前と現在との体格差の比較において下肢の割合は1.2%増加しているのに対し、上肢は0.2%であることから、年齢を問わず比較的正確に身長の算出が可能であり、拘縮を伴う場合の身長計測の一手段として有効であることが示唆された。